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踊り子号(2)

踊り子号の車中で故障なく進む同窓生らしい一行の会話を遮って、7Aが切り出します。「俺を評価してくれる会社からヘッドハンティングの話があってさ。

俺は、そこに移ろうかと思ったんだけど、今の会社に慰留されちゃって、あと1年だけ、残ることになったんだ」。そこまで一息にいって、7Aが沈黙します。

あまりに唐突な7Aの近況報告の意図と真偽を図りかねてボックス席の会話は一時的に渋滞し、でもすぐにまた8Bと8Cの主導で元の脈略を取り戻しました。

7Aも元のはみ出し役に戻り、オジサン・オバサンたちの小旅行は、故障なく進んでいきます。私は、再びしぼんだ7Aの肩越しに窓外の海を眺めていました。


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