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【日向坂46】AKB48と坂道グループから見るアイドル観の変化(競争から協調の時代へ)

ついに紅白歌合戦でAKB48が落選。

「ああ一つの時代が終わったなあ」と思った上で、平成から令和に変わる中で時代が求めるアイドル観も大きく変わったのかなと感じました。

筆者はAKBは門外漢な日向坂46(けやき坂46)からのアイドルファンです。ひらがなけやき(けやき坂46)でどっぷりハマり、それまではアイドルに全然興味を持っていませんでした。

知っている人からすると改めてですが、やっぱり日向坂46の魅力は「メンバー同士の仲の良さ」です。苦難の歴史の中で培われてきた「チームワーク」が印象的で、メンバー同士で切磋琢磨しながら成長していく姿が見ていてすごく心地いいグループです。

特に冠番組の「日向坂で会いましょう」では、メンバー全員が笑いにどん欲で、全力でバラエティに取り組む姿は本当に好感が持てます。キャラやポジションに関係なくみんなでやる、という部分も大きなポイントです。

さて余談が長くなってしまいましたが、筆者はこの日向坂の「チームワーク」や「仲の良さ」こそ、令和を象徴するアイドル観だと考えています。その反面、今回落選したAKBは非常に「競争」の色が強いグループだった印象があります。今回はその部分にもフォーカスを当て、平成から令和に移る中でのアイドル観の変化について考えていきたいと思います。

■AKB48で生まれた「競争」の価値観

筆者は日向坂にハマるまでアイドルに全く関心がありませんでした。なのでAKB48のことはあんまり詳しくありません。そんな外から見ていた筆者の意見ですが、AKBグループは非常に「競争」が激しかった印象でした。

毎年行われる総選挙がその代表格。100位以内のメンバーは順位で格付けされて、そこに入れないメンバーはランク圏外という一言で片付けられてしまう。そこから自分の推しを「もっと上位に!」「ランクインさせたい!」というファンの意識が激化して一つの大きなムーブメントが起こったのだと思います。

筆者個人の感想ですが、こうした競争の中でメンバーみんなが仲良くやるにはかなり厳しい環境だと思います。メンバーにとって周りは仲間である前にライバルなわけで、毎年「あの子を抜いた(抜かれた)」「あの子には勝てない」なんて意識が否応なしに飛び交うはずです。それによって大きく成長できる子もいたと思いますが、きっとそれに耐えられなくて脱落していった子も多かったのだと思います。

もちろん投票を行うファンがいる以上、ファンも納得の上でこの構図を生み出していると考えます。総選挙という一大イベントの前に熱狂し、仕掛ける側・仕掛けられる側ともにメンバー同士の競争を加速させていったのだと思います。まさに「競争」を基準としたアイドル観だと筆者は思います。

これは後に公式ライバルとして発足した乃木坂46でも継承された部分がありました。(乃木どこを見返した上での感想ですが)初期の頃の選抜発表の重苦しい雰囲気や、意外なメンバーがセンターに選ばれた時の不穏なムードはこの「競争」の賜物だったかと思います。一方で乃木坂46の姉妹グループとして後に誕生する欅坂46は、この競争とはかけ離れた体制のもとで大きな成功を収めました。

■コンセプトの鬼「欅坂46」が誕生

実は筆者もサイレントマジョリティーが衝撃的で、そこからアイドルに興味を持った背景があります。やっぱり1stシングルであれだけの衝撃を与えた平手友梨奈の表現力とMVの世界観のインパクトは絶大でした。

そしてこの欅坂46は(結果的にではありますが)センター・平手友梨奈を中心としたグループとして活動を行っていくこととなり、乃木坂46に存在した「選抜制」は廃止されました。(いわゆる全員選抜です。)

詳しい方はこの全員選抜が結果的にグループの終焉を招く一因になってしまったことをご存じかと思いますが、兎にも角にも2015年にこのグループが誕生してから、アイドルグループにあった競争の価値観は徐々に薄れていきます。

負の側面を先に書いてしまいましたが、選抜制を取らず平手を中心にグループのコンセプトを築き上げるという方針は功を奏し、欅坂46は思春期世代を中心に圧倒的な支持を集めました。握手会文化やポジション争い的な文化は残っていたものの、欅坂46の成功によって「競争」がなくてもアイドルは強い支持を集められることが世間に証明されました。

そして「お前が知らないだけだろ」と言われてしまうとおしまいなのですが、皮肉なことに筆者は欅坂が誕生した2015年以降のAKBの楽曲を全く知りません。多分なのですが、この頃からAKBって音楽番組に出ても昔のヒット曲ばかりやっていたイメージなんですよね。一方で欅坂46は良くも悪くもアイドル離れしたパフォーマンスが世間の注目を集め、結果的に楽曲の印象が強く残りました。

ですが、この欅坂46の栄華も長くは続きません。平手友梨奈という個人を中心に据えた体制はグループ内部に多くの綻びを生み、ついに限界を迎えます。

■「一人が中心」から「みんなが中心」の時代へ

既に多くの方が「欅坂46の改名」はご存知かと思います。グループの要を担っていたセンター・平手友梨奈の脱退や、相次ぐネガティブな報道が原因で改名したのではと言われています。

欅坂46は競争の価値観から脱却したグループでしたが、その一方で平手の存在ありきでコンセプトを形成してきた結果「一人に依存しすぎる」という構図が生まれてしまいました。2018年1月には「平手友梨奈の怪我」を理由に、武道館3daysの全公演を当時欅坂46のアンダーグループだった「けやき坂46(ひらがなけやき)」に譲っています。これは公式が平手友梨奈無しではどうにもならないと宣言してしまっているようなものです。筆者としても、ファンにもメンバーにも決して良い影響があるアナウンスだとは思えず、やはり欅坂46はここからさらに混迷が深まっていきます。

その反面、武道館公演を任されたアンダーグループの「けやき坂46」は、欅坂46とは異なる独自のコンセプトを活かして右肩上がりに人気を獲得していきます。

そもそもこの「けやき坂46」は、欅坂46の最終選考をすっぽかしたのに特別枠として加入した「長濱ねる」というメンバーのために作られたグループです。(いきなり正規メンバーに加えてしまうとちゃんと最終選考を受けたメンバーから反感を買い、ファンからも批判されてしまうのでは、という運営側の配慮から生まれたグループでした。)

そして1人で活動はできないため「けやき坂46」の追加メンバー募集が決定。現在1期生と呼ばれる子がこの時に入ったメンバーで、しばらくは長濱ねると一緒に活動を続けていきます。ですがしばらくと書いた通り、1期生が加入して1年ちょっとで長濱ねるは「けやき坂46」を離れて「欅坂46」の専任メンバーとなります。

よく知らない方からすると「ふーん」という感じだと思いますが、当時長濱ねるは平手友梨奈と並んで認知度・人気が高かったメンバーです。そんな彼女が抜け、加入したてのアンダーメンバーだけで活動するというのは茨の道でした。

ですがそんな中でも1期生は「自分たちで自分たちのグループのコンセプトを考え、どうしたらお客さんに楽しんでもらえるかを精一杯考えてやってみる」ことに全力を注ぎました。結果欅坂46のアンダーグループであるにも関わらず全く異なる独自のコンセプトが生まれ、次第にその魅力に惹かれたファンが次々と生まれていきます。

そんな中で舞い込んだのが、前述の欅坂46から譲られた武道館3daysでした。そもそもこの公演はチケット発売後に急遽振り替えられたため、実は来場客のほとんどが「欅坂46目当て」でした。ですが公演が始まってみれば大団円。結果的にけやき坂46のファンを増やすきっかけとなる公演となりました。以降もけやき坂46は単独アルバムの発売や音楽イベントへの出演など快進撃を続け、翌年3月についにアンダーグループから独立。日向坂46に改名して「第3の坂道グループ」というポジションを獲得しました。

そんな日向坂の最大の特徴が、メンバー全員で前に進もうとする「チームワーク」です。

けやき坂46時代は仕事が全然なかったり、仕事が増えてきた最中に人気メンバーが抜けたり、そもそも頑張れば欅坂のメンバーに昇格できるのかも不明瞭という危ういグループだったので、メンバー同士で競争なんてしている場合じゃありませんでした。「競争をするという土俵にすらなかった」というのが正解かもしれません。またグループが軌道に乗り始めた頃に加入した2期生は最初はポジション意識が強かったものの、結果的にポジションを奪い合うまでは至りませんでした。

これはグループのコンセプトが「ハッピーオーラ」だったことも関係していると思います。お客さんにハッピーオーラを届けると言っているグループが、蓋を開けてみればギスギスじゃ全然ハッピーじゃありません。彼女たちも常に「ハッピーオーラ」という言葉を口にしていて、1期生も2期生も「この先どうなるかはわからないけど、まずはお客さんにハッピーオーラを届ける」という使命感のもと、がむしゃらに努力を続けていました。こうなるとますますメンバー同士で競争する余地はなくなっていきます。

さらにがむしゃらな姿勢は自分たちの冠番組にも現れます。現在放送中の「日向坂で会いましょう」の前身番組「ひらがな推し」の頃から全員でバラエティに対して全力で向き合い、共演者とは距離を置くと決めていたMCのオードリーの心を開かせています。(今はめっちゃ仲良しになっています。)

また2期生の濱岸ひよりが休業に入った時には1期生の佐々木美玲が常に声をかけ復帰のきっかけを作ったり、9月から12月中旬まで病気療養に入っていた2期生・松田好花に対しても全員で声をかけ続けたりと、メンバー全員から「一人でも欠けることなく前に進もう」という強い意思を覚えます。

元々競争の意識が強かった2期生・渡邉美穂も、2020年12月に開催された「ひなくり2020」でグループに復帰した松田好花を見て、普段の姿からは考えられないほどの大号泣をしたり、この公演の直前に休業した2期生・宮田愛萌の不在を嘆くなど、活動を続ける中で「みんなで前に進む」という意識に切り替わっていったことがわかります。けやき坂46のコンセプトであるハッピーオーラが生まれた時と同様に「今できる最善をみんなで考えてとにかく実行してみる」を実践し続けることで、全員で歩みを進めているのが日向坂46です。そして一人ひとりが自分なりにキチンと考えを持って取り組んでいるからこそ、競争という枠組みがなくても多くのメンバーが個々に成長を遂げています。またこの日向坂の成功例は、改名した櫻坂46にも一部受け継がれることとなります。

■「協調」の価値観はアイドル全体に波及

日向坂が持つ「みんなで前に進む(競争や依存ではなく助け合って進んでいく姿勢)」は、欅坂46から改名した「櫻坂46」にも受け継がれています。

欅坂46は最終的に選抜制を導入しましたが(正確には未遂で終わっていますが)、櫻坂46ではこれを排除。「櫻エイト」という準選抜のようなシステムは取り入れたものの、カップリング曲を含めて楽曲に参加しないメンバーは一人もいないという体制をとり、みんなで櫻坂46というブランドを築き上げていく方針を打ち出しました。

また未だに選抜制のシステムが残る乃木坂46も、以前まではスタジオにメンバーを集め、重々しい雰囲気の中で選抜メンバーを発表するシステムを取っていましたが、現在は冠番組のラストでサラッと紹介する程度に。初期の頃にあった競争バチバチの雰囲気は消え、最近は先輩後輩の仲を含め、メンバー同士の協調がより強く描かれています。(特に齋藤飛鳥は後輩との関係性を上手く築いているように見えます。)

さらにAKBで王座を勝ち取り続けてきた指原莉乃も、自身がプロデュースするアイドルグループ「=LOVE」「≠ME」では選抜制は採用しませんでした。またこのグループもメンバー同士の仲の良さ、雰囲気の良さが売りとなって人気を集めるなど、多くのアイドルファンがメンバー同士の良好な関係性に好感を示す時代になったと言えます。(全く知らないのですが、NiziUも同じようにメンバー同士の仲の良さが伝わるグループだと聞いたことがあります。)

これは筆者の個人的な感想ですが、当時AKBブームを支えた10~20代は多くが社会人になり仕事のプレッシャーを抱える境遇にいるのではないでしょうか。そうなると応援しているアイドルが自分と同じように競争に身を晒して一喜一憂している姿を見るのは、なかなかしんどいと思います。また自身も組織の一員として動くようになった分、みんなが上手く一致団結して進んでいく姿に感動や憧れを覚えられるのではないかと思います。

もちろん単純に今の若い世代は競争より協調を求める(個性を活かして活躍できることを望んでいる)傾向が強くなっているので、それを実現している(実現しようとしている)アイドルの姿に憧れる、というのも大いにあるかと思います。平成から令和に移り変わる中で、こうした世代の意識の変化や、アイドルファンの立場の変化などが影響して、アイドル観は競争から協調へと変化していったのではないでしょうか。


ということで大変長くなってしまいましたが、筆者が言いたいのは「やっぱ日向坂って最高だよね!」ということです!!なんとなく日向坂に興味がある方も、ぜひ一度彼女たちの前向きな姿を見てみてください。(冠番組の日向坂で会いましょうを見れば一発で伝わると思います。)

競争は個人技でも成立しますが、協調はまわりと歩幅を合わせないといけない分、本当に難しいことです。それでもその道を自信を持って歩む彼女たちの姿は、きっと魅力的に映るはずです。最近涙腺弱くなってきた方には一番ぴったりなアイドルグループかもしれないです(笑)


#0.まるでお日様のように

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