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「かめさん力(りょく)」一個しか持ってない私がいい大人になってオーディションを受けた話。

私はとても不器用だ。

すごく要領よく、器用に見られることが多いし
回転が速いと思われていたりする。

「ひなたさんは、いつも挑戦していてすごいですね。」

みたいな会話がなされることもあり・・・
いつか書こうと思っていたことをここに書こうと思う。

幼少期。私は「のろまのなほちゃん」と呼ばれていた。
何をするにも動作が遅く、片付けもできない。
ご飯も遅いし、着替えだって遅い。
鉄棒でも逆上がりどころか、前まわりすらできなかった。
大縄跳びは「あんたが入ると止まるから」と断られた。
学校でやる算数ドリルも、いつも一番遅くて、居残りになった。
遅過ぎてどこをやっているのか先生でもすぐ見つけられないくらいとってもゆっくりだった。

走ればビリで(50メートル走で10秒を超える)
勉強すれば最後。
運動も勉強もどっちもできない。
本当に大人しくて「嫌だ」と言った記憶がない。
先生から「嫌だと言えない子です」と通知表に書かれたこともある。
目立つタイプではなかったし、体も小さかったので
いろんなことを全然ついていけなかったけど
「のろまのなほちゃんだからね」という言葉で全てを片付けられていたように思う。

イコール
「かめさんだから仕方ない。」

そんな感じだ。
そう。かめさんだった。

そんなかめさんの私は
とにかく「諦めない」ことだけを父と母から教わった。

夏休みの学校プールは毎日欠かさずに行った。
習い事のそろばんは絶対に休まなかった。
足が遅いので、小学校2年生から毎朝欠かさず、自分の家の周りを走り始めた。

頑張ってそうしたというよりは、それが当たり前だと思っていた。
何かを続けることが私にとっては、毎日の生活リズムだったから。

おかげで肌は真っ黒で
そろばんは一級を獲得した。
小学2年から中学生まで毎朝毎朝走り続け、中学2年生くらいから状況が変わった。
運動が不得意から得意になったのだ。

高校受験の時も「毎日8時間勉強しないと受かりません。」と言われた学校に、本当に毎日8時間勉強し続けた。
結果1年間で偏差値を10以上あげて合格した。

すごいことではない。

「努力は裏切らない」

コツコツやれば何かを成し遂げたり、状況をひっくり返せるということを私は知っていただけだ。

そして中学生の卒業アルバムに「女優になる」と将来の夢を書いた。

演劇部を作った。
劇団に入った。
ミュージカルを学び、事務所に入り
アルバイトしながらでも、役者の道を目指した。
辛いことはたくさんあった。
でもやめるという選択肢はなかった。

理由「かめさんだから。」

子役に演技指導をするようになって
大手事務所で教えるようになって
シンガーソングライターとして活動するようになって
歌とお芝居を混ぜ合わせてステージを作るようになって
自分がやりたいことがどんどんとはっきりしてきた。

そうか

私がやりたいのは「表現教育」だ。

お芝居や、音楽や、芸術を通じて教育をやりたかったんだ。

今の私じゃまだまだ学び足りない。

ドラマケーションの資格をとった
ワークショップデザイナーの資格をとった
人と繋がり、日々、学ぶ。
日々、仕事が増えていく。
作詞作曲の依頼。
千葉県立東葛の森特別支援学校の校歌作成。
研修講師
幼稚園や保育園の指導。
育児講座の講師。

まだまだ学びたい。

理由「かめさんだから」

すぐには何にもならないかもしれない。
でもコツコツ続けることで何かを成し遂げることを私は知っている。



先日あるオーディションを受けた。

いい大人だから誰にも言わず、内緒で受けた。
旦那さんにも言わなかった。

このオーディションは音楽、表現、こども、言葉・・・教育。私の夢が全て揃っているようなオーディションだった。
ありがたくも、最終オーディションまで残らせていただいて本社で面接とオーディションを受けた。

北海道から沖縄まで最終オーディション6名の参加者がいた。
全部で1時間くらいかなと思っていたけれど、1人ずつとても丁寧な面談があった。
さらにパフォーマンスにもしっかりと時間をとってくれた。
そして、驚くべきことに審査員が手拍子をしてくれたりするオーディションだった(審査員が10名以上でずらっと並んでいたので、かなり緊張はしたけれど)
とってもアットホームで、いるだけでいい時間だった。

私はというと・・・本番まで何度も台本作って読んで練習をした。
課題に出ていた設定を想定し、会場を自分の中で決め想像した。
後にも先にも、こんなに向き合えたオーディションは今までなかったと思う。やり切った。

この日。
会社のあたたかさと、参加者の結束力と。
そしてやり切ったいい大人の私が揃っていた。
何よりいいものを作ろうとするここにいるみなさんの姿勢が
私の背中を押してくれた。
なんだかとってもいい日だった。

私はとても不器用だ。

すごく器用に見えるとしたら

きっと「かめさんだから」だと思う。

何も持ってない。

一個しか持ってない。

「ひなたさんは、いつも挑戦していてすごいですね。」

そう言われてふと立ち止まる。

「諦めが悪いから、続けているだけなんです。」

そう。
私はあの日からずっと、変わっていないのだ。

だから今日も「かめさん力」で

ゆっくりでも歩み続けるのだと思う。

追記:生徒へ オーディションの結果、詳細は聞かないように。笑









いただいたサポートは、学びの書籍のためや、表現教育のため、また我が子のオムツ代にさせていただきます。