師匠の名前の上に描いた日-カラスミカ企画「うつくしくきれいなわたしたちのくに」終演に寄せて
ようやく、筆を取ることが出来ました。
2019年11月16日(土)・17日(日)
カラスミカ企画
「うつくしくきれいなわたしたちのくに」
於 レンタルスペース+カフェ 兎亭
大きなトラブルなく、無事に全日程を終了することが出来ました。
御来場いただきましたお客さま、TwitterなどSNSで情報を拡散していただいた皆さま、気にかけていただいた皆さま、会場のレンタルスペース+カフェ 兎亭さまと店主の斉藤さま、出演協力ならびに稽古場協力いただいた(石榴の花が咲いてる。)さま、出演協力いただいたマーカス・フィルムさま…etc
その他、関わり・ご縁のある全てのヒトモノコトに心から感謝申し上げます。
本当に、有難う御座いました。
なんて。
筆をとりましたが、結局のところ未だに何を書いていいか全然分からないのです。私。
なので、取り留めもない話、啓くん風に言うなら「野暮なこと」を残していこうと思います。
興味あるわぁーーって方はお付き合いください。
かなりの長文なので気をつけて……!
公演が終わってチグハグになった心と身体のチューニングを合わせるのに2週間以上かかりました。
皆に会いたくて寂しくて泣き、
ほなみんのnoteを読んで泣き、
SNSの感想を読んで嬉しくて泣き、
「おてがみ」を読んで嬉しくて泣き、
皆に送りつけた恋文の返信を読んで泣き、
ヨルシカを聴いて泣き、
黒木渚を聴いて泣き、
啓くんのブログを読んで寂しくて泣き。
ひたすらぽろぽろしながら、静かに静かに「自分」へ合わせ続ける2週間。
頭の霞むような寂しさと吹き抜ける風と愛してるの気持ちと助けての叫びを飲み込む日々を過ごしてきました。
あと密かに転職したりしてました。
数日前かな。
何かが堰を切って溢れ出し、慌ててカラオケに駆け込んでamazarashiを浴びるように歌って「フィロソフィー」を絶叫しながら泣いた時に「戻ってきたな」と思いました。
なので大遅刻です。すいません。笑
『27年生きてきた自分の中身をほぼ全部吐き出して板に乗せ、人様から1700円と最低180分(移動込み)をいただいて見せている』ということ。
つまり自分の人生を評価のテーブルに載せたということに気がついたのが、初日昼公演のラストシーン手前でした。
桜が泣きながら場を作るのを見つめて照明音響のタイミングを見ながら、その場でギリギリって胃が痛み出したのを覚えています。
それまで稽古で散々面白がって、しんどがらせて、目えきらきらさせてたのにね。
遅っ!
だから、客席から聞こえる密やかに鼻を啜る音やハンカチをあてる仕草、タオルを慌てて出す背中、カーテンコールのお辞儀で響いた優しい大きな拍手や、小さな溜息の声なんかにすごくすごく救われていた2日間でした。
呆けたように笑う顔、震える手でした握手、ボロボロに泣いたあとが見える顔、自分の言葉を探して感想をくれる真剣な顔、康介ばりに書かれたおてがみやSNSの感想、「台本売ってないんですか?」のお声がけがあって、「嗚呼生きてていいんだ」と思えました。
観てくれた、受け取ってくれた貴方が気持ちをくれたから私は生きていることを肯定できました。
大袈裟じゃないんだよ。
生きてて良かった、死ななくて良かったと心から思えたんだ。
私を救ってくれてありがとう。
桜ちゃんの最後の長ゼリフたちは、私が20歳で劇団を旗揚げした頃から一貫して変わらない主張です。
年とって丸くはなったものの、この辺の思考は一切変わらないんだよな。
ただ、隠し方と使い方は少し上手くなれたかな。
朝、道路が太陽できらきらしてて、道の先に青空が開けてて、雲が流れてて、不規則に車が走ってゆく音がして、そのなかを進む。夏の太陽で皮膚が炙られてジリジリ熱くて、飲み込んだ水は生温くて、気だるい熱気の匂いと橋の上の陽炎。
それら全部、舞台では再現できない。
外を歩けば歩くほど、この世界が本物で、舞台はどう足掻いても嘘でしかないと思わされる。
だから私は、嘘を愛しています。
夜、といって夜の色を被せれば夜になることができるあの空間を。
幽霊だ、といえば全力で幽霊でいてくれるような俳優たちを。
バックヤードだといえばバックヤードだと、部屋だと思えば部屋だと信じて見つめてどこまでもついてきてくれる皆さまを。
本物なんて無理なんですよ。どうしても。
だからせめて私たちは、限りなく本物に近い「嘘」を持ってこなきゃいけない。
私はそう信じて、世界を創っています。
自分の中の体験を経験を感情を思い出をトラウマを何もかもを総動員して、全力で嘘を吐き続ける。
貴方は私じゃないから、貴方はあの子じゃないから、私はあの子じゃないから。
貴方に贈ったあの子に寄り添って、貴方の全力であの子を体現して欲しい。
君にあげるよ。使い倒して、ボロボロになるまで愛して欲しい。
それが出来ない俳優には1ミリも興味無い。
本気でそう思ってるからこそ、桜を、奈緒を、康介を、莉乃を、使い倒してくれた4人の俳優が愛おしかった。
萩野桜役の杏奈ちゃん。
駒月奈緒役のせりかさん。
増岡莉乃役のほなみん。
滝口康介役のけいくん。
この4人がいなかったら無理でした。
本当にありがとう。大好き。
今作も作品のなかで様々な奇跡が産まれました。
それはどれもこれも「水面町」という場所だったからかなと思ったり。
水面町は、東京の外れに位置するベッドタウンです。
春瀬川という大きな川を横断する白い大きな橋の向こう側にあり、小さな山もあったりします。
急行も一応止まる大きな駅があり、周辺は商店街として栄えています。
昔ながらの精肉店、創立百年を迎える伝統ある女子高、リニューアルオープンした洋食屋さん、最近できたスープカフェ、住宅街の中にひっそり佇むBAR、高台の上にある大きな公園、駅前のチェーンのカフェに、深夜3時までやってる煮込みとやきとりが美味い居酒屋なんかがあります。
そして、この町のちょっと不思議で面白い噂。
「水面町には神さまが住んでいる」
私の世界の住人のほとんどが、水面町に暮らしています。
そして、私が人で在り続ける限り、人を書こうと思える限り、この町はただ存在し続ける。
何が言いたいかって、私はまだ書けるよということ。
そしてよかったらどなたか、水面町の話を書いて欲しいです。よかったら。
最後になりますが……
タイトルの意味なんぞや、って感じだと思うんですよ。
それの説明です。
兎亭の入口の扉には無数の文字が書かれています。あれは、兎亭でイベントを行った人達が書いている名前たちなんですよね。
白から始まり、青、ピンクときて今回は黄色。
書こうと思って場所を探していたら、白い文字で書かれた「岡田和歌冶」を見つけました。
迷うことなく、その名前の上に描きました。
私の師匠の名前です。
この人と出会ったのは18歳。定時制高校にいた私に、転校前の高校の先輩が誘いをかけてくれたことがきっかけでした。
初めて出た舞台の稽古中に発した岡田さんの演出の言葉に、私の考えの源があります。
なんでお前らそんなんでいられるんだよ
叶わない恋だぞ、2人の空間なんて得られなかったはずなのに得られたんだろ
死ぬ気で守れよ、愛し合ってんだろ。目の前の相手だけいればいいって本気で思えよ!
この言葉を聞いた時、稽古を見ているだけにも関わらずボロボロ泣いていたのを未だに覚えています。
照明の使い方や舞台の上に何も無くていいことや、場の作り方や自分の間で芝居をしないこと。
悔しいながらなんだかんだ影響を受けています。
ぶっきらぼうで意外と臆病で、音も光も自分で操れて、すぐ酒飲みたがって、演劇に「堕ちた」作家の一人。
私のことを「弟子みたいなもん」と呼ぶ人。
細々とでも真っ直ぐ自分の演劇を貫き続けるその人の名前の上に、一回やめてそれでも戻ってきた自分の作品の名を重ねる。
してやったりです。にやにや。
ねえ岡田さん。私ちゃんと帰ってきたよ。
これ、読むか知らないけどさ。
岡田さんは「雲の劇団雨蛙」というところで演劇をやっておりますので、よろしければ皆様見てください。私とは全く違います。笑
えっっっらい長くなってしまった。
書きたいことはまだありますが、それはせっかくなので脚本のおまけにつけようと思います。笑
改めて。
無事に終わりました。ありがとうございました。
どこまでもどこまでも、一緒に行こうね。
大好きな皆様へ。
2019.12.06
カラスミカ企画 ヒナタアコ
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