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113 / 這い上がるんだ


親が海上自衛隊なので、住む場所がコロコロ変わる子供時代だった。長崎で生まれ、広島の保育園に通った。そしたらまた長崎に引っ越して『ちびっ子ランド』というところに通った。

小4の時には、全校生徒が27人しかいないど田舎に引っ越した。同級生は3人しかいなかった。中学に進むとほとんどが初めましてだった。人見知りのぼくは、ずっと机に座って話しかけられるのをまっていた。

高校もみんなと違うところを選んだから、また全員初めましてだった。今思うと、そんな転々とする生活をしていたおかげで、ぼくの人見知りは克服されていったように思う。

「初めましての人と、仲良くなれる」という成功体験を繰り返すうちに、恐れる事がなくなった。今では1人で海外に行くことも全く怖くない。それが全く言葉の通じない国だろうと。

そんなこんなで「人と話すのが好き」だと高校生あたりの頃から自覚し始め、接客は自分の天職のように思えた。

25歳になった。
こじんまりとしたカフェに行った。
店主の女性はずっとぼくに話しかけてくれた。

うざい。話しかけるのやめてくんないかな。
ぼくはそう思った。話を途切れさせる為に、2回トイレに行った。それでも、また別の従業員や隣のお客さんも話しかけてきた。

耐えられなくて、すぐに店を出た。
自分が変化していることに気づいた。
前の自分だったら1時間以上はこのカフェに居て楽しんでいただろうな。

今では全く楽しめないどころか苦行だ。
ぼくはこの変化を受け入れることにした。
人と話さのが好きなのは過去の自分で、今の自分は人と話すのが嫌いなんだ。LINEやDMのやりとりすらストレスだ。申し訳ないから返そうという気はある。でも溜まっている通知を見るだけで頭がくらくらしてスマホを放り投げる。

でも、それが今の自分の姿であり、それを受け入れなければならない。ぼくは初めて、自ら好んでなるだけ人と関わらない仕事を探した。UberEatsやデータ入力のお仕事が向いてると思った。

なんならコンビニの店員とか、会話をするわけではないし従業員と話すこともそんなになさそうだから意外といいのかもしれないな。


くそったれ。必ず這い上がってやる。
胸の奥で、ふつふつと強い気持ちが湧き上がっているのが分かる。

ぼくは必ずアーティストとして売れて、お金のことなんて全く気にしなくていい生活を送るんだ。ビジネスのビの字も考えたくない。死ぬ間際になって「お金稼ぐのに必死な人生でした」って?そんな人生まっぴらごめんだ。

必ず、必ず這い上がるんだ。
このまま終わってたまるか。
這い上がるんだよ。




そんな事を、ベッドから這い上がれないぼくは思うのであった。














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