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【エッセイ】「好き」という感情に蓋をして生きて来た

好きな物

好きな人

これまでたくさん出会ってきたはずだ。

でも私はそれを
大きな声で発信してこなかった。

好きなものを
好きという事が恥ずかしいと思った。

好きな人に
好きだということは悪い事だと思った。

私はいつも自分の
「好き」に
蓋をして生きていた。

大学生の頃友人に

「好きな歌手は誰?」

と聞かれたときに
私は口ごもって答えなかった。

本当は
Coccoや
矢井田瞳や
aikoなどが好きだったのだが

何となく隠してしまった。

男が聴く音楽じゃない。

と勝手に自分で決めつけて
勝手に恥ずかしくなっていたのだ。

他にも幼いころから
好きなものは沢山あったはずなのに
ほとんど誰とも共有してこなかった。

犬や猫などの哺乳類が好き。

歌を歌うことが好き。

漫画やアニメが好き。

男の人が好き。

いつだって私は

世の中が求める正解を
勝手に決めつけて
自分自身を悪者にしていた。

どうしてそうなってしまったのだろう。

もしかしたら幼いころの
経験によるものかもしれない。

私には幼いころから
どこか女性的なところがあったらしい。

仕草や行動や高い声。

そういえば子供の頃近所の女の子の家に
セーラームーンのスティック?があって
うらやましいと思っていた記憶がある。

たびたび「おかま」と言われてからかわれた。

いじめという程の物では無かったが
やっぱりからかわれるのは
気持ちの良い物ではない。

気が付けば

限られた人以外と話すことを避け

感情を表に出すことを辞め

他人に合わせて生きるようになっていた。

目立たなければたたかれないから。

私は少し他人と違う
変わった人間だったのだと思う。

それを「おかま」と言われ
否定されたことで
変わっている=悪い事
だと認識してしまった。

変わっている自分を嫌いになってしまった。

変わっているって、個性的って、
とても素晴らしい事のはずなのに。

友達が居ないわけでは無い。

でも私から連絡することはほとんどない。

高校で仲の良かった友人とは
いつの間にか
ほとんどが疎遠になってしまった。

大学ではサークルにも入らず
講義が終わったらすぐ帰宅していた。
とにかく人と関わりたく無かった。

ありのままの私を否定されるのが怖かった。

「このままでは社会で生きて行けない。」

ある時ふと思った。

私は思い立つと意外と行動力があるらしい。

何とか人間恐怖症を克服しようと
バイトを始めることにした。

とはいっても居酒屋の調理なので、

そんなにたくさんの人と関わる訳ではない。

それでも私にとっては大きな一歩だった。

バイト先の人はみんな優しかった。

バイト終わりに遊びに誘ってくれた。

休みの日も映画やスノーボードや
宅飲みに誘ってくれた。

人と関わるのも悪くないなと思った。

少しだけ自分の事を好きになれた。

その時、バイト先の男の同僚のことが
好きだと気が付いた。

自分を好きになったら
自分の「好き」にも気が付くことが出来た。

もちろんそれを伝えた訳ではないけれど、

確かに好きだったのだと思う。

就職活動をするとき
これまた私は荒療治といわんばかりに
営業職ばかりにエントリーしていた。

何を考えていたんだか
今となっては分からないが
このように時々私は
謎の行動力を発揮する。

何とか地元の会社に内定をもらい
希望通りの営業職として働くことになった。

社会に出てみたら高校や
大学以上にいろんな人が居た。

20後半で結婚離婚
新築購入を経験した人。

宇宙人と陰で呼ばれる
奇人かつ奇跡のアラフォーイケメン男。

自己中変態野郎。

炭水化物が世界一好きと
豪語する大き目の女子。

みんな少し変だった。

でもみんな自分の事が好きなのだなと感じた。

そんな人たちと関わっていると
誰も私の事を否定しない。

それどころか面白がって寄ってくる。

初めて感じた感覚だ。

私は私のままで良いんだ。

「変」な自分で居ても良いんだ。

初めてそう思えた。

こうやって私は少しずつ
自ら閉ざした扉を開いて
自分らしくいることが出来るようになった。

完全に素のままで生きられている訳ではない。
まだ少し自分を出すのが怖い。

でもいろんな「好き」を自信をもって
共有できるようになった。

でもやっぱり

「男の人が好き」

だけは未だに共有できない。

共感して話したい事があっても
「男の人が好き」を隠しているせいで
本音で会話ができない。

いつもどこか後ろめたさを感じている。

嘘をついて生きていることにもう疲れてしまった。

いっそのこと全部さらけ出してしまいたい。

恋をしたこと

失恋したこと

結婚をあきらめたこと

一人で生きると決めたこと

全部全部話したい。

こんな私のことを知ってほしい。

でもまだ勇気が足りない。

そのうちいつもの

突発的行動力を発揮して

全部吐き出してしまうかも。

たぶんもう少し先だけど。

いつか必ず

そういう時が来るような気がしている。

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