【エッセイ】「好き」という感情に蓋をして生きて来た
好きな物
好きな人
これまでたくさん出会ってきたはずだ。
でも私はそれを
大きな声で発信してこなかった。
好きなものを
好きという事が恥ずかしいと思った。
好きな人に
好きだということは悪い事だと思った。
私はいつも自分の
「好き」に
蓋をして生きていた。
*
大学生の頃友人に
「好きな歌手は誰?」
と聞かれたときに
私は口ごもって答えなかった。
本当は
Coccoや
矢井田瞳や
aikoなどが好きだったのだが
何となく隠してしまった。
男が聴く音楽じゃない。
と勝手に自分で決めつけて
勝手に恥ずかしくなっていたのだ。
他にも幼いころから
好きなものは沢山あったはずなのに
ほとんど誰とも共有してこなかった。
犬や猫などの哺乳類が好き。
歌を歌うことが好き。
漫画やアニメが好き。
男の人が好き。
*
いつだって私は
世の中が求める正解を
勝手に決めつけて
自分自身を悪者にしていた。
どうしてそうなってしまったのだろう。
もしかしたら幼いころの
経験によるものかもしれない。
私には幼いころから
どこか女性的なところがあったらしい。
仕草や行動や高い声。
そういえば子供の頃近所の女の子の家に
セーラームーンのスティック?があって
うらやましいと思っていた記憶がある。
*
たびたび「おかま」と言われてからかわれた。
いじめという程の物では無かったが
やっぱりからかわれるのは
気持ちの良い物ではない。
気が付けば
限られた人以外と話すことを避け
感情を表に出すことを辞め
他人に合わせて生きるようになっていた。
目立たなければたたかれないから。
私は少し他人と違う
変わった人間だったのだと思う。
それを「おかま」と言われ
否定されたことで
変わっている=悪い事
だと認識してしまった。
変わっている自分を嫌いになってしまった。
変わっているって、個性的って、
とても素晴らしい事のはずなのに。
*
友達が居ないわけでは無い。
でも私から連絡することはほとんどない。
高校で仲の良かった友人とは
いつの間にか
ほとんどが疎遠になってしまった。
大学ではサークルにも入らず
講義が終わったらすぐ帰宅していた。
とにかく人と関わりたく無かった。
ありのままの私を否定されるのが怖かった。
「このままでは社会で生きて行けない。」
ある時ふと思った。
私は思い立つと意外と行動力があるらしい。
何とか人間恐怖症を克服しようと
バイトを始めることにした。
とはいっても居酒屋の調理なので、
そんなにたくさんの人と関わる訳ではない。
それでも私にとっては大きな一歩だった。
バイト先の人はみんな優しかった。
バイト終わりに遊びに誘ってくれた。
休みの日も映画やスノーボードや
宅飲みに誘ってくれた。
人と関わるのも悪くないなと思った。
少しだけ自分の事を好きになれた。
その時、バイト先の男の同僚のことが
好きだと気が付いた。
自分を好きになったら
自分の「好き」にも気が付くことが出来た。
もちろんそれを伝えた訳ではないけれど、
確かに好きだったのだと思う。
*
就職活動をするとき
これまた私は荒療治といわんばかりに
営業職ばかりにエントリーしていた。
何を考えていたんだか
今となっては分からないが
このように時々私は
謎の行動力を発揮する。
何とか地元の会社に内定をもらい
希望通りの営業職として働くことになった。
社会に出てみたら高校や
大学以上にいろんな人が居た。
20後半で結婚離婚
新築購入を経験した人。
宇宙人と陰で呼ばれる
奇人かつ奇跡のアラフォーイケメン男。
自己中変態野郎。
炭水化物が世界一好きと
豪語する大き目の女子。
みんな少し変だった。
でもみんな自分の事が好きなのだなと感じた。
そんな人たちと関わっていると
誰も私の事を否定しない。
それどころか面白がって寄ってくる。
初めて感じた感覚だ。
私は私のままで良いんだ。
「変」な自分で居ても良いんだ。
初めてそう思えた。
*
こうやって私は少しずつ
自ら閉ざした扉を開いて
自分らしくいることが出来るようになった。
完全に素のままで生きられている訳ではない。
まだ少し自分を出すのが怖い。
でもいろんな「好き」を自信をもって
共有できるようになった。
でもやっぱり
「男の人が好き」
だけは未だに共有できない。
共感して話したい事があっても
「男の人が好き」を隠しているせいで
本音で会話ができない。
いつもどこか後ろめたさを感じている。
嘘をついて生きていることにもう疲れてしまった。
いっそのこと全部さらけ出してしまいたい。
*
恋をしたこと
失恋したこと
結婚をあきらめたこと
一人で生きると決めたこと
全部全部話したい。
こんな私のことを知ってほしい。
でもまだ勇気が足りない。
そのうちいつもの
突発的行動力を発揮して
全部吐き出してしまうかも。
たぶんもう少し先だけど。
いつか必ず
そういう時が来るような気がしている。
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