猫記録1-④ やまちゃん

そもそも日本というのはどこなのだ?なぜ車で行けないのか?注射をしなくては行けない所とは?なんだか目まぐるしかった。部屋にあったものがどんどん片付けられていく。たくさんの箱に入ったり、飛び乗ったりするのはとても楽しかった。

大きなトラックが来て、そんな荷物を持って行ってしまって、なんだか広くなった家の中を走るのも楽しかった。と思ったのもつかの間、知らないひとに私は連れていかれた。

家族と次に会えたのは、広くてざわざわしている場所だった。木の箱の中から助けてと叫んだのに、みんなは、
「山ちゃん がんばれ!」
と目を潤ませるばかりで、助け出してくれる気配はないまま、私は暗がりへ積み込まれた。寒くて暗い。そのうち凄い音と揺れで動き始めてのがわかった。

どれくらいの時間がたったのかわからないけれど、私は泣き疲れて寝てしまったりしていた。ずっと轟音は続いていて、もうどうでもよくなっていた。そして動きが止まり、ようやく明るいところへ連れて行ってもらい、なんだかいろいろチェックされた。正直みなちょっと違う顔をしていて、マミーの言葉をしゃべっていた。

数時間後、家族のみんなの姿を見たときは、ホッとしたものの怒りがこみあげてきた。暗闇から助け出してくれたおじさんは家族に、
「こんなにキモの座ったこはみたことないですよ。平然としてますね。辛くて心を病んでしまい、目もうつろで降りてくる子もたくさんいます。もちろん耐えきれなくて亡くなる子だっているんです。」
と言っていて、褒められているらしいと思ったけれど、心も体も相当疲れていたようで、みんなと一緒に乗った車では爆睡してしまった。目が覚めたときは、全然知らない家にいた。

女の子のおじいちゃんとおばあちゃんの家らしかった。走り回スペースはあるものの、初めての家のにおいにビクビクして過ごした。外へはいってはいけないらしい。全部閉められてしまっている。ちょっといつも通り逃げ出して散策してみたが、あまりにもまわりが大騒ぎで探してきたので、おとなしくその家の中にいることにした。

新しい生活が始まるというのは家族の雰囲気で十分感じていた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?