猫記録1-⑤ やまちゃん

おじいちゃんとおばあちゃんの家は3週間ほど。そのあとまたお引越しをした。なんとなく前の住まいの匂いに似て、海の匂いがする。女の子は誰も知り合いのいない、言葉も全部理解できるわけではない不安とか、新しい学校のこととかで相当ストレスを感じているようだった。それか家族全員が同じ雰囲気で私までもいろいろと不安になった。

ほどなく、隣近所には女の子と同じような年の子がいることがわかって、外で遊ぶようになった。ここも車がほぼ入ってこられない所で、数メートル先にはひっそり公園があって、日本という国では子供だけで出かけてもようみたいで、女の子と近所の子と公園で過ごすことが多くなった。夏休みだったから、特に一緒に遊ぶ時間が多くあった。

昔から木登りは得意だったが、この公園にもちょうどよい高さの木があって、そこに上って女の子たちの遊びを見守るのが心地よかった。英国と比べると外を歩いている猫は少なく、トラブルも少なかったから安心だった。

しばらくして英国からの荷物が到着すると、なつかしい匂いのするものが増えてとても安心を感じた。ソファもテーブルもみな昔のまま。ガリガリしてよい木の本棚も到着して心置きなく爪が研げるようになったのもうれしい。変な紙でできているやつはなんとなく研いだ感じがしなくて嫌だったから。

学校が始まると女の子と遊ぶ時間は少なくなり、さみしい気持ちもあったがまったりと過ごすことが多くなった。そりゃ若いころのようには走り回れないし、血気さかんという頃はもう過ぎた。マミーも仕事をし始め、女の子はちょっと遠いところの学校へ通い始めて、たくさんの出来事に押しつぶされそうになっていた。私もそれがわかったから、女の子には特にやさしくしてあげた。

しばらくして、どうも背中に痛痒い何かができた気がした。気になってなめてみたり掻いたりしてみた。こちらに来てから、蚊に刺されるというのを覚えたのだが、それとは違う何かができた様子だった。結局、病院でそれを取り除いてもらった。雰囲気からあまり良いものではないというのが伝わってきたが、手術は緊張したしその後痛かったけれど、しばらくしたらそのことは忘れてしまった。

家族が英国に行くときはペットホテルへ連れていかれた。ケージの中で二週間を過ごさなければいけないのは苦痛だったが、飛行機の中よりはましだった。犬の鳴き声は気に障ったが、年に1,2回は仕方ないと我慢をした。

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