猫記録1-⑥ やまちゃん

2年ほどが過ぎたころ、家族はまた引っ越しを考えていたもようで、週末ごとに近隣で家探しをしていた。女の子の中学入学も考えてのことだ。そしてさほど遠くない新居へ引っ越しをした。また海の近くだ。

しかし今回の困ったことは電車が近くに通り、踏切もある。そこまでスピードの出ていない場所だが、やはり近くを通ると怖い。最初はみんなで私が走ってしまわないように、抱きかかえたり押さたりしながら様子を見られた。私だってそんな怖いものに近づきたくないからそっちへ行くわけないのに、どうも猫の習性として車が来ると道路に飛び出したりしてしまうもの、と思われているようだった。

だから私はそんなお馬鹿さんじゃなくってよ、と落ち着いて玄関先や出かけるといってもお隣のお庭にいた。お隣さんはとてもやさしい人で、うちには庭がないのだけれど、お隣の庭は心地よく、一日の大半をお隣の駐車場と庭で過ごさせてもらった。こっそりおトイレもお隣の庭でさせていただいていた。お水も置いておいてくれる。

家族のみんなは忙しく、普段は家にいない時間も多くなっていた。海の近くなので犬の散歩をする人も多く、喧嘩をふっかけてくる犬もいたけれど、そもそも興味はないし、良い飼い主さんの犬の中には友人もたくさんできた。声もかけてもらえるようにもなっていた。しかし決してお隣の庭より遠い所へは行かないと決めていたし、行きたいとも思わなかった。

そして又、背中にできものができた。前にできたのと似ているらしい。新しい獣医さんへ行き、やはり前回同様の良くないものだとわかり、手術をした。手術後は嘗め回さないようにふつうはエリザベスカラーという厄介なものを使うが、好きではないし、お洋服を着せられて過ごすようになった。

最初は獣医さんが作ってくれた綿の白いものだったが、やはり脱ぎたくなって何着もだめにして、マミーが小型犬用のちょっとおしゃれめな洋服も買ってくれた。あまり良い気はしないが、インフェクションを避けるためだというし、受け入れた。

この後、何度も同じようなものができるようになってきた。私自身疲れたなと感じる日は多くなり、何度かの手術で相当消耗してしまったのだと思う。気づけば、それなりの年齢にもなっていて、お向かいの仲良し犬が老衰で亡くなってからは、なんとなくもう手術はきついな・・と考えるようになっていた。そしてふと、英国のお庭を思い出す日々も多くなってきた。

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