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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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2019年11月の記事一覧

淋しさからいちばん遠くで あなたと出逢えますように

「冬はね、どうしても淋しくなるんだ。これはね、僕の病気のひとつなんだけど誰もが理解してくれる、たったひとつの病気なんだよ。」 そう言いながら、彼は珈琲を口に運ぶ。なんてことはない、いつもの日常。広い構内の一角に設置された自販機に、残念ながら紅茶はなかった。 淋しさを持て余す。 独りで過ごす夜を、あと何度乗り切れば淋しさは無くなるのだろうか。そんな疑問を誰もが持ち合わせていながら、誰もが口にするのを躊躇う。答えが無いと知っているからか、答えをもう知っているからか。本を読み

ラストダンスが悲しいのは嫌だなと思った話

今作、葬式の話ということで「死」に触れた話を。 中学2年のスキー教室から帰って来たら、ベッドの上で父が死んでいた。 読んでくださってる方が感情移入しやすいように、父の話を。 父は画家で、フランスで絵を描いていた。だから7歳までパリに居た。母はモデルをしていた。こっちはパリコレにまで出たらしいからそこそこ売れていた。父はどうしようもなく売れていなかった。 父は借金を沢山していた。人からお金を借りるのが大好きな人だった。友人、母、父の母、父の兄、いろんな人からお金を借りる

光は影と共にあり、闇は光をもたらす

写真を撮っている。 「なぜ撮るのか」と問われれば、私は「撮りたいからだ」と答えるだろう。「なぜ撮りたいのか」と問われれば、私は「世界が美しいからだ」と答えるだろう。 「写真」というものは、わずかでも光が存在しなければ、その景色を写すことができない。真っ暗な箱に小さな針穴を開けただけのカメラ・オブスクラ、つまり写真機の始まりの時代から、それだけは変わらない。 写真は光ありき。だから私は光を追いかける。歩き、歩き、歩いて、目を凝らし、そして光を見つける。撮る。光という「実体

クリスマスが近づくといつも

好きかどうかわからない時、たいていの場合好きじゃない。好きじゃないことを受け入れたくなくて、わからないとかいってるだけだ。 はじめて人を好きになったのは、中学3年生のころ。15歳だったけど、ちゃんとこれはほんものだってわかった。クリスマスが近づいて、毎年思い出す。 * * * 塾が終わって、駅からバスに乗った。一番後ろのはじっこの席に座って、大きな公園のそばの終点まで。イルミネーションなんてない街を眺める。ダッフルコートのトグルを上まで留めて、フードまでかぶって、バス停

恋の証人。

これは本当に起こったことかもしれないし、そうじゃないかもしれません。 「俺、宏美とも寝てるよ」 男が口にしたのは、わたしの憧れの女性の名前だった。 ちょっとだけ虚をつかれて、眠気がとんだ。 深夜3時までだらだらと抱きあって、わたしたちはまだ裸でベッドに寝そべっていた。さっきまで繋いでいたその手が、あの優しい女性の体にも触れていたなんて。 バイト先のバーで、わたしが働き始めるよりもずぅっと昔に働いていた男とその女性、宏美さんは、いまでもそのバーにそれぞれ飲みにきていた。

何より憂鬱なのは、秋が終わってしまうこと

打ち合わせ先からオフィスに戻る途中、突然雨に降られた。雨降るなんて聞いてない。打ち合わせ中に窓の外が暗くてああもう日が暮れたんだな、日が短くなったな、なんてのんきに考えてた。なんで雨雲だって気づかなかったんだろう。外にいたら絶対に匂いで分かるのに、とちょっと自分の衰えた野生の勘を恨めしく思った。もちろん折り畳み傘なんて持ってない。最悪だ。あの日と同じように突然雨に降られて私の前髪は早くも台無しになった。でも今日はもう帰るだけだから別にいいんだ。全然可愛くない私で君に会うよりず

君とさよなら

うそだってことは互いにわかってた。それでも笑顔でハグをし合った。 触れない手、合わない視線、寝るときは背中合わせで「ねえ、こんなのは違う」って告げる勇気も持てなくて、結局私は弱いまんまだ。 「鳥たちが一斉に鳴きはじめたら夕立がくる合図だよ」って ベランダで洗濯物を取り込んだあなたの顔も思い出せない。 不確かな記憶をさぐってみたけれど、あなたに触れた指の先までつめたくてまるで作り話みたい。セピア色したもやが広がる。 東京は今日も夕立だね、きっと。カラスの声がやけにうるさ

ダンスを終わらせて

それなりに生きている。 入社して4年。給料も残業時間も人間関係も納得できない時はあるけど、我慢できないほどじゃない。体調が悪くてもミスをした次の日だって、ちゃんと仕事に行く。 人生をかけて成し遂げたいステキな夢や胸を張って誇れる好きなことはないけど、それでいい。 今の生活に無理なくとれる時間と今までにできた努力の量をかけ算して、人生の落とし所はこのへんかと考えられるくらいには、大人になった。 学生の頃から付き合っている彼氏がいる。将来のことを考えているとは言うけど、具