見出し画像

ヒナドレミのコーヒーブレイク     ダイアリー~一部抜粋~

 今 私の前には、一冊のダイアリーがある。このダイアリーには、私の人生の全てが詰まっているといっても過言ではないだろう。そのダイアリーには、あの出来事が赤裸々に書かれている。もちろん、それを書いたのは私だ。

 そう、あの出来事は、私の人生を大きく変えてしまうくらい、すごい出来事だった。今思い出してもゾッとする。消してしまえるのなら、あの記憶を一切消してしまいたい。だがそれは叶わぬこと。そのダイアリーの一部、関連部分を下に抜粋する。

♦♦♦私はアメリカ人の父親と日本人の母親から生まれた子。物心ついた頃には、父は母国の女性と出会い、アメリカへと帰っていった。残された私たちは、都会から田舎に引っ越し 細々と生活していた。母は女手一つで、幼い私を育てていたのだが、経済的に苦しくなり 働きに出ることになった。寂れた田舎のスナックで、男性の機嫌を取って お金をもらっていた。その時4歳になっていた私は、誰もいない家で、いつも独りで遊んでいた。いつかステキなお父さんが来てくれると信じて、私はいい子を演じていた。♦♦♦

♦♦♦ある時、母親がスナックの客の一人と姿を消した。夜になっても帰らない母親を、灯りも点けずに 私は待っていた。結局その夜、私は母親を待って 膝を抱えたままウトウトとして過ごした。窓から光が差し込んで、私は朝が来たことを知った。♦♦♦

♦♦♦その日の昼過ぎ、母親の勤めているスナックの人が来て「お母さんが出勤して来ない」と言った。私はその時、子供心に何となく もう母親は ここへは帰って来ない気がした。そのスナックの人が、見るに見かねて、私をその人の知り合いの女性のところへ連れていき、世話をしてくれた。♦♦♦

♦♦♦それだけでは終わらなかった。私の世話をしてくれた女性、亜沙さんは、表面的には優しいが、2人だけになると暴力を振るう。だから私の体中 痣だらけだった。でも、私はそれを誰にも言わなかった。そして彼女はさらに、私を言葉でもチクリチクリと責めてくる。居たたまれなくなった私は、そこを飛び出した。行く当てもなく さ迷っていたら、警官に見つかり尋問を受けた。私は、今までのことをどう話していいかわからず、逃げようとした。すると警官は追いかけてきた。私は咄嗟に、護身用に持っていたナイフで、警官の足を刺して走って逃げた。♦♦♦

 その後のことは、想像に難くないだろう。  ダイアリー 一部抜粋より  
                                完                      


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?