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店を始めたい人へのメッセージその11:焙煎機選びの基準、私の場合

焙煎機は自家焙煎珈琲店にとって必要不可欠かつ最も高価な設備です。
また焙煎機は焙煎人にとって、長期間、場合によっては生涯にわたって苦楽をともにする相棒となります。
それだけに後悔することのないよう、慎重に選びたいものです。

それでは私が焙煎機を選ぶにあたって求めた条件を列記します。焙煎機選びのひとつの考え方と受け止めて頂けると幸いです。

○生産国:国産 ※絶対条件
○熱源:ガス
○方式:半熱風式
○焙煎量:5キロ ※最低3キロ
○その他:インバータ制御ブロアによるアクティブな排気量制御ができること

当初、最も有力だった候補は、(株)富士珈機が製作するFUJI ROYALシリーズでした。いろいろな意味で信頼性抜群です。
しかし様々なメーカーの焙煎機と比較検討する中で、最終的に落ち着いたのは(株)大和鉄工所が製作するマイスターシリーズでした。

私が焙煎機に求める条件それぞれの理由について説明します。

○生産国:国産

これは絶対条件でした。
なぜなら
理由その1:部品供給、修理などアフターサービスも代理店を介さず、メーカー直営で信頼性が高い。
これに対して、海外製は必ずと言っていいほど代理店が介在します。これによりメーカーの倒産と代理店の倒産または契約解除という、二重のリスクを負うことになります。実際にそういった例もあります。
また補修用パーツの価格や供給スピードという点でも国産品と比べて不利です。この点については単純に距離という物理的な問題です。

焙煎機は長期間にわたり使用するものであり、仮に故障してもすぐに復帰することが要求される機械です。そう考えると国産一択でした。

理由その2:国産品は日本の気候風土や、日本のコーヒー事情を理解した設計がなされている・・・と思う。いや、そのはず。
日本と海外では気候風土が違います。コーヒー事情も然りです。日本ならではの事情を理解し、それらを加味した設計ができるのは、やはり日本のメーカーでしょう。

付記:30年以上前の話です。スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」は日本への輸出仕様車の電装品は、ヨーロッパ製のものから日本製(日本電装=現デンソーなど)のものに換装していました。例えば日本の真夏の首都高速道路の渋滞は世界的に見ても自動車が置かれる環境として極めて過酷で、ヨーロッパ製のものでは対応できない、というのが主な理由と記憶しています。

○熱源:ガス

まずガスはランニングコストが低いです。都市ガスならなお一層ランニングコストは下がります。熱量も充分強力。
また、焙煎量が1キロを超える焙煎機になると、私が知る限り、ガス一択になります。

付記:熱源に木炭を使用するものもあるようです。

火力のコントロールという面においても、電気には及ばないとしても、微圧計で数値として表示でき、また瞬時に火力を増減できるので問題ありません。

○方式:半熱風式

半熱風式は浅煎りから深煎りまですべての焙煎度にそつなく対応できます。また、スペシャルティグレードなどの硬く水分量の多い生豆でも容易に、かつ安定した焙煎ができます。そして、国産小型焙煎機の中では最も多く採用されている方式で、たくさんの候補から比較検討できるのも理由の1つです。

対して直火式は、魅力や長所もたくさんありますが、難易度が高いとされ、私には使いこなす自信がありません。また硬く水分量の多い生豆の焙煎はやや苦手とのことで、これも選択肢からはずれた理由です。

熱風式もとても魅力的ですが、国産の1キロを超える小型焙煎機では、私が知る限り1種類しかなく熱風式同士での比較ができないため、これも選択肢から外すほか在りませんでした。

○焙煎量:理想は5キロ ※最低3キロ

理想は5キロです。最低でも3キロ以上ないと、将来の販売量の増加に対応できなくなり、結局買い換える羽目になるからです。

逆に焙煎量が5キロを超えるものになると、最大焙煎量の増加に伴い最小焙煎量も多くなるので、開店当初の販売量が少ない時期は、売り切ることができずに廃棄ロスとなり、これが経営にダメージを与えます。
そのように考えると、店主一人かその家族だけで経営する小さな店なら3~5キロがもっとも無理がないと言えると思います。

付記:ところで当店の焙煎機は2.5キロ釜ですが、他社3キロ釜と同等の焙煎能力を有しています。2.5キロきっちり焙煎できます。

○その他:インバータ制御ブロアによるアクティブな排気量制御ができること


マイスター2.5のインバータ

従来の国産焙煎機は、排気ブロアの回転数は一定で、ダンパによって排気量を制御するという、その日の天候や気温などの影響を受けやすいパッシブなものでした。

2002年の規制緩和により、100W以下のモータにもインバータが使えるようになりました。
インバータ制御にすると、モータの回転数を任意に変更でき、アクティブな排気量制御が可能になります。

これにはメリットがたくさんあり、
①ダンパ開度は焙煎開始から終了まで固定。原則操作不要。
②チャフ飛ばし、1ハゼ、2ハゼ前の排気量の変更はインバータでリニアに操作できる。
③天候や気温の影響を受けにくい安定した焙煎が可能。
④コンピュータによるセミオートマチック化も可能になる。

大和鉄工所のマイスターシリーズは、このインバータ制御ブロアをいち早く採用した焙煎機です。

インバータはこれからの焙煎機には必須のデバイスと感じます。

私がマイスターシリーズを選択した決定的な理由も、インバータです。


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