アメリカ人と太平洋戦争史跡を見た話

数ヶ月前のことではあるが、夏休みにアメリカの友人が2組3人、日本に遊びに来てくれた。私も多忙だったため、あまりかまってあげることはできなかったが、一人の男の子とは江戸東京博物館に行った。それはなかなかにいい経験だった。

留学をするときに求められるスキルの一つ、そして身につけられる視点の一つとして「自国のことを外国語で、また外国の視点から話すことができる」というものがある。むしろ留学などで外に出て鍛えられるのは、外側から自己を見る力だ。
しかし、外国人というのはそんなに日本に興味はないのである。
私が「日本人らしさ」を発揮したのは、舞台芸術学科のアニメオタクたちに「ルフィってカタカナで書いてくれ」と言われて続いてワンピースの登場人物の名前をカタカナで書き続けた時くらいだった。日本のことを英語で説明したのは、ここ、江戸東京博物館が一番多かったし、難しかった。

一番「どうしよう、何を話そう」と思ったのは、太平洋戦争史跡のエリアであった。
言ってしまえば我々はかつて敵同士だった国のパスポートを持っている。
彼は日本で、戦勝国の国の人間として、敗戦国の友人に、何を話すのだろうと思った。

結果から言えば、彼らにとって戦争は過去のことであった。
特に何もなかったのだ。

私は「祖母はまだアメリカのことを敵国だと思っているし、孫を留学に出すのも不安だった。だけどこうやってアメリカであなたに出会えて幸せだし、それはとても幸運なことなのだと思う。」と言った。

そうしたら彼は「そうだね。僕の両親もメキシコからやってきて大変な思いをして・・・・」

初めは驚いた。関係ねえ。
でも、メキシコ移民2世の彼にとって、アメリカと日本が戦争をしていたことは過去のことなのだ。我々には関係がないことなのだ。
70年も前の戦争より、今、メキシコからたくさんの移民がやってきて、彼らが国によって排除されようとしていることの方が問題なのである。

アメリカって国はそういう性格を持っている。
9.11、日本では毎年大センセーションだけれども、西海岸ではほとんど感じなかった。アメリカという国が9.11をどう思っているのか、あまりわからなかった。そんなことよりDACAの打ち切りとか、近くで起きた銃乱射事件の方がずっとずっと問題で、そういう身近な問題を自分たちの力で解決せねばならない、という気持ちを感じた。

確かに、過去を振り返り過去に学ぶことだって必要なのだが、じゃあそれとつながって、またつながっていなくても今起きている問題は何か、と自分のこととして捉えるほうがずっと大事だよなあ、と思った。

その一方で、日本の戦争教育はよくできているな、と思うのであった。
戦争をしてはいけないものだ、とぼんやりにでも思っている国民が多いだけでそれはものすごいことなのではないだろうか。

まあ今ぼんやりとでもそう思っている人がどれだけいるかは知りませんが。

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