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人と違った視点を持つために~「固定観念を持たない」ことの大切さ(福田美蘭展)

イラストレーター&コラムニストの陽菜ひなひよ子です。

12年前、長く住んだ東京から地元名古屋にUターンしました。そのとき一番がっかりしたのは、美術展の少なさでした。

大中小さまざまな規模やジャンルの美術館やギャラリーがひしめく東京では、有名無名問わず多くの展覧会が開催され、どれに行こうか迷うほど。それがどれほど恵まれたことだったかを改めて思い知りました。

無名の作家の作品でも面白いモノはたくさんあるし、仕事柄ビッグネームではなくても見るべき作品は数多くあります。しかしそれは東京であればこそ。地方で同じことを期待するのは無謀というものでしょう。

しかし問題は、誰もが知る有名画家でも、我が名古屋には来ないことが本当に多いのです。そこには「名古屋飛ばし(※)」の問題があります。(※イベントなどが東京から名古屋を飛ばして大阪へ行き、さらに福岡や仙台に飛び、名古屋には来ないこと)

そんな名古屋で今話題の展示がこの「福田美蘭展・美術って、なに?」。なんとこの展示、名古屋市美術館のみで巡回しないというのです!マジか!

松竹梅の鰻のこの迫力!

常に私たちの視覚、思考を刺激し、常識を覆すような見方や楽しさに気づかせてくれる福田美蘭の作品は、混沌とした時代を迎えている現代を生き抜く知恵とエネルギーを与えてくれるでしょう。

これは期待大!しかし行った人の投稿などを読むと「絵がうまい」という声が圧倒的で、ちょっと気持ちがひるみました。正直「うまい絵」はさんざん見て来たので、もうお腹がいっぱいなのです。

それよりは、新しい「視点」や「発想」のヒントとなるようなモノが見たい。そんなわたしたちの期待も決して裏切らない、いやむしろ、そっちの方がスゴイよ!というのがこの「福田美蘭展」なのでした。

画像左上はロシアのプーチンさん、モディリアーニ風。ていうか、プーチンさんのお顔そのものがモディリアーニやんか!と驚愕ガクガク。その右は、天井の角って死角すぎない?ここに額飾ったら無駄がなくなるんでは?の思い付きから額をオーダーしちゃった!という作品。

右中は仁徳天皇の和歌を元にした作品。もとは民衆のかまどから煙が上がっていないことから彼らの貧困を悟り、税収を控えたという善政を讃えた話。この絵は爆発=「日本に流入する欧米文化」の襲撃に気づかずにいる執政者(?)、という意味だそうな。

左下は写楽の浮世絵を実写風に描いたら・・・の絵。個人的にはこの絵、すごく好き。右下はわたしが手振れを起こしたのではなく、こういう絵。デジカメが台頭してきた頃に「写真をプリントしたらピンボケだった」という経験も貴重になるかも、と思って描いたのだそうで。確かにこういう写真、見なくなりましたね!

会場にはほかに澄ましたモナ・リザのだらりと休憩した姿や、絵がパカッと二つに割れて扉を閉じられるような、大掛かりでモッタイナイ感じのものもあり。「ただのうまい絵」を期待して見に行ったら逆に肩透かしを食らうユニークな作品たち。


でもわたしが一番気に入ったのは「登場人物の視点で描いてみた」シリーズ。おヌードの女性とスーツの男性、どっかで見たな?と思ったら・・・

マネの有名な作品「草上の昼食」で、向かいに寝そべる男性の視点で描かれているんですね。このシリーズ、ほかに何点かあり、どれもおもしろい!

と、ここまでは面白いモノをご紹介して来ましたが、時世を切り取ったシリアスな作品も多く、どれもに共通するのは「疑いの目」をもって物事を見るということ。それが「人と違った視点」につながっているのですね。

作風はアカデミックですが、現代アートの「ジャーナリズム精神」に満ちた作品による「東日本大震災」や「ウクライナ侵攻」「911」などを描いた作品には考えさせられます。

会場の最後に展示されていたのは、時の人ともいえるゼレンスキー大統領でした。

福田美蘭展、名古屋市美術館にて11/19(日)まで!


11/14(火)、note公式『美術展 記事まとめ』に掲載されました!




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