見出し画像

『さがす』(ほぼネタバレなし)

話題になりまくりの映画だったけど田舎ゆえ公開が遅く、ようやく見られた。監督の片山慎三って名前どっかで見たなと思ったら『岬の兄妹』の人! あれはすごい映画だったね……。

その片山監督の商業デビュー作が今回の『さがす』。ということはさぞお辛い世界の話なんだろうなと覚悟して鑑賞しましたよ。

楓(伊藤蒼)は父・智(佐藤二朗)と二人暮らし。ある日、智が「テレビで話題の連続殺人犯を見つけたで~! 懸賞金はいただきやで~!」とニコニコ語ってくるのを聞き流してたら翌朝智が失踪しちゃったもんだから大慌て。必死になって智を探してみたらば、工事現場で智の名を騙って働いてるのは件の殺人犯・山内(清水尋也)やんけ! お父ちゃんどこやったんや!!!……みたいなあらすじ。

ただこのあらすじは予告編にも出てくる部分で、二時間ずっと楓が智を探す映画なわけではない。中盤から山内の視点に代わり、さらに智の視点に代わることでサスペンスの面白さがどんどん増してきて、最初の予想とは違った方向に話が進んでいく。このサスペンス的な面だけでもかなり面白かった。

登場人物の作り込み、演技の実在感がものすごい。特に伊藤蒼ちゃんの凄みは本作を見た人全員が脱帽するんじゃないかしらん。『空白』に引き続き幸の薄い役ね、と思ってたけど真逆と言ってもいい、幸は薄いながらもパッション溢れる女の子を演じてて痛快だった。思春期の複雑な心情をまっすぐ行動に表す性格とナチュラルな行儀の悪さが合わさってなんだか他に見覚えのない独特の魅力を放つキャラクター。それを完璧に演じきれる中学生おる? おったわ……。

https://www.cinematoday.jp/news/N0128399

佐藤二朗は正直いつもはあんま好きじゃない。ふざけてるのが嫌なんじゃなくて、「普段はふざけてるけど真面目な演技もできますよ」感が鼻につくというか(偏見)。でも今回の役柄は重いものを抱えながらもベースはふざけたおっさんで、その塩梅が佐藤二朗にピッタリだった。

https://www.cinematoday.jp/movie/T0026650

清水尋也の奇妙な存在感はすでにいろんな作品で発揮されてるけど、ただ立ってるだけでコイツやべぇなと思わせる佇まいに加えて、まともな人を演じてるときにはちゃんとイケメンの好青年に見えるのが凄まじいと思いました。異様にスタイルいいよね。

https://www.cinematoday.jp/news/N0128659

片山監督はポン・ジュノ作品の助監督やったりしてる人で、『岬の兄妹』のときから独特のジメッとした雰囲気が韓国映画っぽいなぁと思ってたけど、本作でも西成の暗い下町感とか佐藤二朗の絶妙に小汚いおっさん感とかにポン・ジュノ印を感じた。

あとこれ一番言っときたいのが、死にたい人とか生きてるのが辛い人の存在が根底にあるからどうしても重い話ではある一方、かなり笑いどころが多いと思った。しかもかなり強烈なギャグ。襖の奥から現れるAV鑑賞部屋(設備がめちゃくちゃ豪華)とかそこになぜか日本刀が置いてあってそれでじいちゃんを殺すとかあれギャグでいいんだよね……? 俺めっちゃ笑いたかったんだけど、重い話を見るムードのおかげで客席が戸惑いでクスリともしてなくて、それがまたおかしかった。「おっぱい見せて」のくだりに居合わせてたことが判明するシーンとかも普通に笑えた。こういうギャグもポン・ジュノっぽいかもしれない。

見出し画像出典:https://movies.yahoo.co.jp/movie/378723/

この記事が参加している募集

映画感想文