黒い戯言9 歌丸師匠の凄さ

 好きな落語家さんである歌丸師匠がお亡くなりになった。好き……といっても落語をされている姿を見ることができず、円楽師匠(楽太郎師匠)との掛け合いが本当におもしろかったなぁ、というくらい。でもこの喪失感はなんだろう……。
 さて落語をほとんど知らない私でも、師匠の凄さを伝えることができる。医療に携わる者だからできること、小さなことだけど私ができること。


①「溺れる苦しさ」


 ご存知の方は多いが師匠は肺を患っていた。それでも高座につとめていた。それが凄い。同様の病の患者様は喋ることすら苦しんでいた。一言二言ですら息が上がる。酸素を吸っていたとしても。ある人はいった「地上で溺れているようだ」と。「溺れている」ようだからこそ、そのまま寝たきりになって方もいる。きっと師匠も「溺れている」苦しみだったと思う。その中を手振り・身振りを交え、抑揚をつけて観客に話を伝える。それは並みの意思ではできることではないと思います。


②「魂の芯までしぼりつくす」


 最晩年の高座だろう映像で首筋に点滴の針が入っていたことにお気づきの方はいるでしょうか? あれは中心静脈カテーテル(通称CV)と呼ばれるもの。手の静脈(抹消静脈)ではできない高カロリーの点滴をするためのカテーテルです。ちゃんと食事がとれる方なら縁がない代物。おそらく師匠は栄養が十分にとれていなかったと思われます。単に食欲がなかったとも考えられますが、腸閉塞にかかったことがあることや晩年に発声の練習をしていたことから、なんらかの食事の形態などに制限があったのではないかとも思います。なんにせよ私が見てきたCVが必要な方は自分で食事がとれない方……乱暴な言い方をすれば寝たきりになっていく方、すでに寝たきりの方がほとんどでした。そして高カロリー輸液といえども、全ての栄養が賄えるわけではありません。輸液をして元気になっていくことは一時的にあったとしても、日に日に衰弱すると思います。きっと師匠の体も衰弱し、悲鳴をあげていたのではないでしょうか。
 それでも師匠は高座をつとめていました。一看護師として信じられません。それほどまでの落語への信念・執念とも言えるものを感じました。きっと命を、魂をしぼりつくす苦行だったのではないでしょうか。それができる人は数少ないように思います。

  今日は黒い戯言はなしです。
  ご冥福をお祈りします。ありがとうございました

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