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英国動物愛護事情③日本が学ぶこと

飼い主は、繁殖業界の裏で何が実際に行われているのかを知ってください。そして常に、「その子(=子犬/子猫)」の後ろにどんな人物がいるのか、意識して想像してください(英国政府からのメッセージ)

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前回、イギリスの「ペット・フィッシング」防止キャンペーンをご紹介しました。様々な動物愛護に関する取り組みが行われている一方で、法律が厳しくなると違法業者の手口も巧妙になる懸念が指摘されています。今回は、イギリスで行われている対策についてもう少し調べるとともに、そこから私たち日本の飼い主が学べることを考えてみました。

飼い主が「ダークサイド」を認識することの重要性
イギリスの「ゲット・ユア・ペット・セーフリー(= ペットを安全に迎えよう)」ウェブサイトには、適切なブリーダーを見分けるためのチェックリストが提供されています。ブリーダーに電話やメールで問い合わせをする前、問い合わせる際、実際に訪問する時と、3つの段階ごとに分かりやすく説明されています。

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子犬・子猫が生後8週齢を過ぎているか、健康管理に関する情報が(必要書類もあわせて)全て得られるか、問い合わせの際に購入のプレッシャーをかけないか、予約金を要求しないかなど、合計14のポイントが挙げられています。

日本の場合、大手資本によるペットショップや規模の比較的大きいブリーダーによる販売が一般的だと思います。したがって、前回紹介したイギリスで問題となっている様な手口はあまりないと思います。ここで大切だと思ったのは、同国政府の警告です:

飼い主は、繁殖業界の裏で何が実際に行われているのかを知ってください。そして常に、「その子(=子犬/子猫)」の後ろにどんな人物がいるのか、意識して想像してください

これは、日本の飼い主も意識すべきだと感じました。ちなみに、前回ご紹介したイギリスの例というのは:

「ルーシー法」施行によって、ブリーダー以外が犬・猫を販売することが禁じられた。そこで違法販売組織は、「子ども役」「お母さん・お父さん役」を雇い、短期契約のマンションを借りて家族経営のブリーダーを装う。そして、劣悪な環境で繁殖を行うパピーファームから仕入れたり、外国から違法に輸入した8週齢に満たない子犬・子猫を販売。お迎え後、健康状態などに問題が生じるケースもあるが、連絡は一切取れなくなるといったケースがある。

イギリスで活躍する動物愛護組織:RSPCA
このキャンペーンにも参画しているのが、「王立動物虐待防止協会(The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」という非営利の動物愛護団体です。

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起源は、わずか数人の有志が1824年に設立した「SPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」という組織です。日本は、何とまだ江戸時代!1840年には、当時のビクトリア女王より「Royal(王立)」の称号が許されて「RSPCA」となったそうです。200年近い歴史・伝統と実績があります。

基本的に寄付によって運営されているそうですが、「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイなどの著名人も運営メンバーに名を連ねており、162拠点に500名近くのスタッフが勤務する大きな団体です。動物虐待ダイヤルが24時間稼働していて、イングランドとウェールズでは30秒に1本の割合で電話が鳴るとのことです。

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そうした情報を基に年間13万件以上の調査を行い、2018年には10万頭以上の動物を保護・救出。そのうち4万頭以上の動物に新しい里親を見つけるなど、精力的に活動しています。前回ご紹介したパピーファームを摘発したのも、このRSPCAでした。

さらに4つの動物病院5か所の診療所17の保護施設を直接運営するとともに、全国に散らばる拠点も39の診療所3台の医療車両42か所の保護施設を有しています。同協会はペットだけでなく、実験動物、家畜、野生動物の福祉向上のための活動にも従事しているとのことです。

日本における動物愛護の今後
日本でも昨年「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称、動物愛護法)が改正され、今年の6月から段階的に施行されています。動物愛護に関してはとても進んでいる印象の強いイギリスでも、まだ課題は多いようです。課題の多い日本の動物愛護は、どのように「進歩」していくのでしょうか?

今週の金曜日(7/10)には、環境省主催の「検討会」で繁殖業者等に義務付けられる「飼養管理基準」が話し合われます。動向を注目しましょう。

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イギリスの取りくみから日本が学ぶこと
ごく一部ですが、3回にわたってイギリスにおける動物愛護の取り組みをご紹介しました。イギリスと日本では様々な事情が異なります。でも、飼い主が賢く動物を迎える意識を持つことが、劣悪な環境で繁殖させられる動物たちを救うことにつながる、という点は共通していると思います。

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RSPCAのように「国」とも連携する大規模で力のある組織を設立することも必要ですが、一朝一夕にはいきません。でも、飼い主一人一人がそうした「意識と知識」を持つことは、今日からでも始められます

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日本の場合、イギリスのようにニセの家族を装った違法行為はないでしょう。法律や(あえてこの言葉を使いますが…)流通システムも違いますし。でも、「ブリーダー」と称する人々の中には、接客スペースやウェブサイトなど目につく所には投資を惜しまない一方で、犬舎の中を公開しない業者や遺伝的疾患のリスクを承知で繁殖が続けられるケースも存在します。

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繰り返しになりますが、「ゲット・ユア・ペット・セーフリー(= ペットを安全に迎えよう)」キャンペーンでイギリス政府が警告しているように、私たちは繁殖業界の裏で何が実際に行われているのかを知ることが大切ではないでしょうか?

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そうした流れを作っていくことが、不幸な動物たちを減らすために私たちに課せられた責任でもあると思います。

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