見出し画像

英国動物愛護事情①悪徳繁殖屋の撲滅へ

悪徳繁殖業者撲滅に向けて「ルーシー法」が成立

イギリスでの動き
今年の4月、イギリスで子犬と子猫をペットショップなどブリーダー以外の「第三者」が販売することを禁止する法律が施行されました。この法律は、かつて繁殖犬として酷使されたキャバリエの名前を取って、通称「ルーシー法」と呼ばれます。

画像2

「ルーシー」はひどい飼育環境下で何度も子犬を産まされていましたが、てんかんの発作を患って5歳で放棄されました。保護された時は、お尻の毛が固まり、背骨は曲がり、被毛が所どころ抜け落ちた酷い健康状態だったそうです。幸い新しい飼い主さんのもとで治療を受けることができ、その後は幸せな時間を過ごすことができました。

ところで日本の現状:虐待の厳罰化
日本では今、去年成立・公布された改正動物愛護法が段階的に施行されています。今月初めには、愛護動物の殺傷に対する罰則が「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」に引き上げられました(以前は「2年以下又は200万円以下」)。虐待・遺棄に関しても、100万円以下の罰金に加えて1年以下の懲役の可能性が追加されるなど、厳罰化されています。

画像1

来年は「8週齢規制」と「数値規制」が追加
来年6月には、出生後56日を経過しない犬・猫の販売等を制限する「8週齢規制」が施行されます。(ちなみに、この8週齢規制、日本犬の除外には大きな問題がありますよね。)

同時に始まるのが、「第一種動物取扱業者」への「基準遵守義務」。犬・猫の飼育環境改善のため、ケージのサイズや飼育職員数、出産回数上限など守るべき基準を7分野にわたって具体的に決めるもので、俗に「数値規制」と呼ばれています。

第一種動物取扱業者:ペットショップ;「繁殖屋・生産業者」 & 「競り仲介屋 (= オークション業者)など…。ニュアンスを正確に表現する言葉を選んでみました -_- きちんと誇りとこだわりをもって携わっておられる「ブリーダー」さんもいらっしゃる事ですし、そうした方々には「今さら」な規制ですし

個人的には、「遺伝性疾患を有する個体の交配、若しくは遺伝性疾患を発現し得る交配を行ってはならないこと。」(第21条2項6号)が厳格化され、平蔵のきょうだい犬とこれ以上巡り合わなくなることを夢見ていますが、先週もおとうとを発見・・・。

ともあれ、遵守義務を課す基準を決めるため、環境省は学者の方々や動物愛護団体さん、ペット関連業界団体、「犬猫の圧処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」などと議論を行っています。「色々な」綱引きが行われている様ですが…。劣悪な飼育環境下で苦しむ犬や猫が少しでも救われる内容となるよう、環境省には期待しましょう。(↓ちゃんと見てるからね!)

画像4

「パピーファーム」で生産される子犬たち
さて、動物たちが劣悪な環境で搾取されているのは日本だけでないようです。イギリスでも、ルーシーがいたような「パピーファーム(直訳:子犬農場;アメリカではパピーミル=子犬工場と呼ばれる)」が社会問題となっているそうです。

画像3

子犬たちは生後2~3週間で母親から引き離され、インターネットなどを通して販売されています。また、ペットショップなどへの長距離移動を強いられる場合もあり、肉体的・精神的な病気や社会化面での問題を抱えるケースが多いとされています。

この改善に向けて、動物愛護団体や著名人が積極的な活動を行ってきた結果、昨年5月に法案が議会で承認され、今年の4月6日、施行となりました。

今後、イギリスで生後6か月未満の子犬または子猫の譲渡ができるのは、保護施設または認可を受けたブリーダーに限られます。さらにブリーダーは、子犬が産まれた場所で、母犬と一緒に生活している様子を直接見せることが義務になりました。

画像6

違反者には、最高6か月の懲役もしくは罰金が科せられるのですが、金額の上限は「無制限」

この法律によって、子犬や子猫が安全で清潔な環境で生まれ母親とともに成長し、そこから新しい家族のもとに巣立っていく環境が整備されることが期待できる、と政府はコメントしています:

「動物たちがベストな環境で命のスタートを迎えられるように、また、ルーシーのような苦しみを味わう動物がいなくなるように、という思いでこの法律をつくりました。親犬・親猫の飼育環境が改善されると同時に、母親から早期に引き離される子犬や子猫がいなくなるでしょう。この法律はまた、動物の生命を守るだけでなく、善良な市民(飼い主)を悪徳業者から守るものでもあります。第三者による販売を禁止することで、すべての飼い主は、健康な新しい家族(ペット)を、責任あるブリーダーから迎えることになります。」(マイケル・ゴーブ環境大臣)

ルーシー法は、子犬を国外から違法に持ち込む「密輸業者」の排除も狙ったものだと報道されています。でも、この法律ができたことで、違法業者の手口が巧妙化し「地下に潜る」ことも懸念されているそうです。

プレゼンテーション1

日本では想像がつきませんが、イギリスで行われている「偽装家族」による違法販売について、また別の機会にご紹介したいと思います。「欧米では…」とよく聞きますが、良い面悪い面、両方合わせて参考にしたいですね。