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第10章:「受け入れがたい状況にNOと言おう」
第2章から第4章では、イギリスで様々な犬種が無秩序な繁殖で遺伝性疾患に苦しんでいる例をご紹介しました。日本では、トイプードルを中心に(超)小型犬の「標準仕様」になってしまう程に「膝蓋骨脱臼(俗に言うパテラ)」がまん延しています。それも同様に、繁殖による遺伝性疾患であることをお知らせしました。平蔵の「ガラス細工の首」も(おそらく)お父さんから引き継いでしまったものです。
平蔵と同じ病気に悩んだおねえちゃん
平蔵には、たくさんの異母きょうだいがいます。SNSを通して、一部の飼い主さんとの交流もあります。血統書番号を登録すると、血縁関係にあるワンコの情報を知らせてくれるサービスもありますよね。
平蔵の1日前に別のお母さんから生まれたお姉ちゃん(お父さんが同じ)は、子犬時代に平蔵と同じ環軸椎不安定症により、首の痛みが出たそうです。数ヶ月、首にバンデージを巻いて過ごしていました。症状がおさまった後は元気に過ごしていましたが、3歳のお誕生日を迎える頃に突然亡くなりました。
華奢な血筋
そのほかにも、症状の重いパテラで手術を受けた子、椎間板ヘルニアで緊急手術を受けた子もいます。平蔵をひめりんごと比べると明らかですが、骨格がとても華奢で関節系の疾患が多いのも不思議ではありません。血のつながりのある犬たちに発生している、多因子疾患である可能性は否定できません。
終わらない流れ
平蔵とおねえちゃんがまったく同じ病気なことや、その他のきょうだい犬について、お里は認識していると思います。(業務提携しているらしい「インスタグラマー」さんが伝えたとのこと…。)でも、その後も
「平蔵君のきょうだいが見つかりました」
という通知を何通も、
何通も受け取りました
平蔵のお父さん犬は、状況を知った後も(<= ここ、重要です。なかなか分からない疾患なので、知らなかった頃は仕方がないと思い、そう伝えた事もあります)交配に使われ続けていました。そろそろ年齢的に引退の時期かも知れませんが…
「ビジネス」ならば品質を
イギリスで「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」のチャンピオン犬が、遺伝性疾患をもちながら繁殖犬として使われ続けていたことを第3章でご紹介しました。このエピソードは、ドッグショーで優勝することで、交配料や子犬を高額で販売する純血種のブリーディングの課題でした。
もちろん平蔵たちに、ドッグショーは関係ありません。でも、繁殖業者の意図が犬たちの健康よりも優先されているという意味では同じではないでしょうか?彼らにとって、犬は家族の一員でなく「商品」。それ自体は、理解できることではあります。ただ、そうならなおさら、
品質に懸念が生じたら
具体的な対策を講じるのが
まともなビジネスでしょう
骨を切断するのも「無秩序な繁殖」のせい
第3章でご紹介したイギリスBBCのドキュメンタリー番組では、パグが2時間にわたる外科手術を受ける様子の一部が放送されました。まともに呼吸できない状態だったために、鼻の穴を広げたり顎の骨や粘膜を切除したりといった処置を受けます。
執刀した獣医師は:
呼吸という基本的な機能を得るためだけに、
これほど高侵襲な治療が必要…
信じられないことです
倫理的に
絶対に許されてはいけない
トイプーが歩いたり走ったりするのも、このパグの呼吸と同じ。生き物として最も基本的な機能の1つです。でも、パテラのために脚の骨を切断し、削り、繋ぎ変えるような手術が必要になるケースも少なくありません。
平蔵の首も、症状が出てしまった場合は首に何本ものピンを埋め込んで頸椎同士を繋ぎ、さらにセメントで固定する手術が必要になります。それも、
運よく、命を落とさなかった場合ですが…
私たち飼い主の責任
BBCの番組は、こんな言葉で終わっています:
私たち消費者にも責任があります
犬たちが苦しんでいる、
そんな受け入れがたい状況に
"NO"と言いましょう
私たち(イギリス)は、
犬を愛する国だと言ってきました
ならば、それを証明しましょう
コロナ禍による好景気
コロナ禍の影響で、ペット業界は好景気のようです。2020年の新規飼育頭数、つまり、新たにペットとして迎えられた子犬の数は前の年(2019年)と比べて14%の伸びだそうです(ペットフード協会資料より)。市場自体の成長としては、かなりのレベルです。
子犬の値段も高騰し、競りあっせん業者によるとオークション価格はそれまでの2倍ほどだそうです(2021年4月・中日新聞)。繁殖屋のウェブサイトを見ても、パピーたちのお値段が頻繁に100万円を超えたりしています。繁殖業者さんたちは、経済的な余裕が更に、さらに、増えたに違いありません。
どうか、もうそろそろ、健康面を本当に優先した繁殖をして頂けませんか?「末永く健康で(某業者のサイトから)」いられるためには、エビデンスに基づいた知識が必要です。最低限のことを学ぶ、色々な余裕はさらにできたでしょう。
命を「商材」にするのであれば
そもそも、
最低限、必要だった知識
だと思いますし。
残念な宣伝文句を見かけたので、心の声:遺伝的な形質は、生まれてからの食生活で修正はできないと思いますよ。コラーゲンの経口摂取で、被毛の状態が向上するというのはどんな機序なんでしょうか?栄養基準は確認してますか?免疫のメカニズム、基本的なトコロは理解してますか?どうして「プロ」になろうとしないんだろう…なり方を知らないのかも…命なのに
大切な家族の一員の健康と幸せのために
結論として、この業界が自助努力で大きく変わるのは難しいでしょう。でも、私たち自身が変ることはできます。飼い主として、命に対して十分なレスペクト(敬意)を払う、プロとしての意識と「知識」をもつ「ブリーダー」を見極める目を養うことが不幸な犬たちを減らす
遠回りな近道
だと思います。繰り返しになりますが、
私たち消費者にも責任があります。犬たちが苦しんでいる、そんな受け入れがたい状況にNOと言いましょう(イギリスBBC)
見極めは難しいですが、次回は最後に、私なりに考えたポイントをご紹介したいと思います。あくまで経験に基づいた個人的な印象なので、みなさんのお役に立つかどうかは分かりません。一部分でも、どなたかのご参考になればと思います。
第10章のキーメッセージ:私たち消費者にも責任があります。犬たちが苦しんでいる、そんな受け入れがたい状況にNOと言いましょう(イギリスBBC)