見出し画像

幸せな「犬生」のために①…無秩序な"生産"の横行

- 平蔵が5歳の誕生日を迎えて -

平蔵が5歳のお誕生日を迎えました。2回ほど胃腸炎にかかり、ビビりの父ちゃんがパニックになりましたが ^_^; それ以外は、ほとんど病気をしていません。よく食べ、よく寝て、よく遊ぶ、元気で手のかからないコです。

画像1

でも…
生まれもった「ガラス細工の首」が
治ることはありません

第1けい椎(「環椎(かんつい)」と呼びます)と第2けい椎(「軸椎(じくつい)」と呼びます)がキチンとつながっていません。ちょっとしたことで骨がズレちゃうリスクが高く、せきずいを痛めて「環軸椎(かんじくつい)不安定症」を発症した場合、

突然死もあり得る

と整形外科の先生に言われています。

平蔵環軸

背ぼねの一番上ですから、そこの神経が壊れてしまえば脳からの信号はどこにも伝わらず、全身がマヒ…。ず~っと元気に過ごせるよう、毎日祈っています。でも、ガラスの首は今日、何かの拍子に壊れてしまうかも知れません。

このブログは、平蔵と同じ首の病気をもっていた「お姉ちゃん」が3歳で急死したのをきっかけに始めました。きっとお姉ちゃんが空から守ってくれているんでしょう。一時は装具を着けていた肩は、すっかり治ったようです。

画像11

今回のバースデーを機に、もう一度、犬の繁殖と遺伝について考えてみました。新しく勉強したことに加え、思いが溢れて長くなりそうなので ^_^; 長くなりそうです。毎回、

1話完結的に短めに

まとめようと思います。よかったら読んでみてください。

人間がチョット気をつければ避けられる「遺伝性疾患」について、一人でも多くの飼い主さんに知ってもらえたら嬉しいです。誤解も多いようなので。

誤解も多いようなので…

コロナ禍のこんな時代でも、心穏やかに暮らせるのは平蔵とひめりんごのお陰です。このコたちへの恩返しの小さな1つとして、このブログがワンコたちの幸せに、いつか、つながればいいな…と思います。

画像4


第1章:ヒトの「流行り」はイヌの不幸

「無秩序な生産」が招く遺伝性疾患

埼玉県獣医師会が、2016年に「犬の遺伝性疾患について」としてステートメントを出しています:

日本は世界でも突出して犬の遺伝性疾患が多い国と言われております。その原因としては、映画やテレビなどのマスメディアの影響を受けて特定の犬種に人気が集中し、その需要によって無秩序な生産(繁殖)が横行していることが指摘されています。

画像5

日本で数が一番多い犬種がトイプードル(トイプー)。2000年代に入り、「テディベアカット」が考案されたのが、「人気が出たきっかけの1つかな~」と思います。2008年からは13年連続で、血統書発行枚数トップの座を維持しています。現在、アニコムのペット保険に加入している犬では20%、つまり5頭に1頭はトイプーだそうです。

テディベア感が強いからか、色もレッドやアプリコットといった茶色系の人気が高いようです。ペットショップや子犬検索サイトを見ても、その傾向は間違いなさそうです。

色が薄くなりましたが、平蔵もレッドのトイプー…

画像6

で、「無秩序」かどうかは
とりあえず…

平蔵も、「人気が集中した犬種」として首に遺伝性疾患をもって生まれてきました。今後ご紹介しますが、平蔵がもっている「環軸椎」の疾患だけでなく、俗に「パテラ」と呼ぶ「膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼」などの骨格に出る異常も、ヒト医療および獣医療で明確に「遺伝性疾患」とされています。そして、それは「秩序ある」繁殖で予防できるものです。

誤解も多いようですが…

セレブの影響で2964%増えたフレブル

実は、犬種に「流行り」があるのは日本だけではありません。例えばイギリスでは、サッカーのベッカムや歌手のレディーガガ、俳優のヒュー・ジャックマンなど「セレブ」の影響で、フレンチ・ブルドッグ(フレブル)の人気が過熱しています。

画像7

2017年に発行されたフレブルの血統書枚数は、10年前の2008年と比較すると2964%!つまり、1年間に新しく登録されたフレブルの頭数が、40倍近くに増えたことになります。

翌2018年には36,785頭が登録され、1990年から約30年間、不動の1位を続けてきたラブラドール・レトリーバーを抜いたことでも話題になりました。

画像8

犬の遺伝性疾患について、まず、日本のトイプーと似ている(ように思われる)イギリスのフレブルについてご紹介しつつ、考えたいと思います。

劣悪な環境での繁殖や密輸

人気の犬種は値段も上がります。「パピーファーム」(*1)など劣悪な環境での乱繁殖や、東欧諸国などから違法に持ち込まれる子犬も増えています。

画像9

そうしたコたちも含めると、血統書発行枚数をはるかに超えるペースでフレブルが増えているそうです。2020年に発行された血統書は39,266枚でしたが、実際にはこの3倍以上の子犬が取引されたと考えられています(*2)。

「ザ・ケネルクラブ」が懸念を表明

2018年、こうした状況にイギリスの畜犬団体(血統書の発行などを行う機関)「THE KENNNEL CLUB(ザ・ケネルクラブ)」が、声明を出しました。「天文学的な」増加の背後に無秩序な繁殖があることは間違いなく、遺伝性疾患により健康にトラブルを抱える個体の急増につながると警鐘を鳴らしています。

画像10

特にフレブルを含む「短頭種」(= 鼻ぺちゃ犬)は、もともと呼吸器や目に病気を抱えるリスクが高い犬種です。「とにかく儲けたい」業者による無秩序な「大量生産」によって、病気が蔓延する懸念が大きいと、異例のステートメント発表となったようです。

ザ・ケネルクラブは、人気の犬種がフレブルであることから、特に問題を感じているそうです。

画像11

次回は、「品種改良」という名のもと、人間が(一部の)フレブルたちにもたらした苦痛をご紹介します。

第1章のキーメッセージ:平蔵の病気について勉強して感じたのは、「事実」を「正確に」知ることの大切さでした。避けられる病気で、苦しい思いをするワンコが1頭でも減りますように。悲しむ飼い主さんが、1人でも減りますように
*1. 劣悪な環境で子犬を大量に生ませることから「子犬工場」と訳される。
アメリカでは「パピーミル」と呼ぶ
*2. The Kennel Clubのプレスリリースより