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【超ショートショート】(89)~ポピーの花、握る手のひら~☆アグネス・チャン『LIFE』☆ASKA楽曲提供曲☆

ぼくは朝起きると、
ニワトリが産んだ卵を取りに、
ニワトリ小屋に行く。

もし10個の卵を見つけたら、
朝ごはんの目玉焼きは、
2つ目のスペシャル目玉焼きに、
お母さんが作ってくれる。

「やったー!卵10個あったよ!(笑)」

ニワトリ小屋を出る時だった。
ニワトリが外にいるカラスに驚き、
ぼくの脚にニワトリぶつかり、
卵を入れたかごを落としてしまった。

「どうしよう。(涙)」

収穫した10個の卵のうち1個が割れてしまった。

「お母さん、ごめんなさい。」

お母さんは、何も言わずに、
ぼくの頭を撫で、目玉焼きを作ってくれた。

「ほら、目玉焼きだよ!」

ぼくはお母さんの顔と目玉焼きを何度も見て、

「命の大切さを知って良かったね。
さぁ、ニワトリさんにありがとうって言って、
召し上がれ。(笑)」

その日の夕方、
お母さんがいない台所で、
ぼくが朝割った卵を見つけた。

「ごめんね。ニワトリの赤ちゃん。
今度は割らないようにするからね。」

ぼくのお家は、山の上ある。
お家の周りには、春の今はポピー畑。
扇風機の弱い風が吹けば、
ポピーたちは可愛くゆれてる。
扇風機の強い風が吹くと、
ポピーたちの花びらが壊され、
ぼくは哀しい。

だから、空に飛ばされたポピーの花びらを、
風と競争して取り合う。

「今日は、こんなにたくさん助けたよ!」

ぼくの友だちのキャバリアのメイリンに、
袋いっぱいのポピーの花びらを見せた。


ポピー畑がなくなった夏の頃。
お母さんが倒れて、
ぼくはお家で一人で留守番。

(お父さん)
「もう立派な男なんだから、
一人で留守番くらいできるよな!」

雷が鳴る雨の中をお父さんはお母さんを担いで、
病院に急いだ。

ぼくは、雷が怖くて眠れず、
お母さんが夜、帰って来るかもしれないと、
縁側に座って待った。

「ザワザワ!」

突然した変な音にぼくは驚き、
身体を一緒に留守番するメイリンに隠した。

「ザワザワ!」

「誰だ!」

「ザワザワ!」

「・・・・・」

ぼくは怖くて怖くて、
メイリンを残して、
布団にもぐり込んで隠れた。

「(布団を叩く音)トントン!」

ぼくがじっとしていると、また

「トントン!」

「誰だ!止めろ!」

すると、
布団を叩いた何が布団から離れていく音がした。

「はぁー良かった。」

ぼくは怖いものがいないと思って布団から出ると、

「やぁ!」

「はっ?」

ぼくのしらない女の子が立っていた。

「誰?」

「私はポピーよ!
あなたが助けてくれた花びらのポピーよ!」

急いでポピーの花びらを入れた袋を見に行った。

「花びらがない!」

ぼくはポピーの花びらという女の子を、
ちゃんと見てみた。

「何でも人間になったの?」

「神様がね。あなたが寂しそうだから、
助けてあげなさいって言って
人間にしてくれたのよ!」

ぼくは話の意味がわからないまま、
怖さを笑顔に隠して、
ふたりと一匹で朝になるまで話した。

(お父さん)
「おい!起きろよ!
こんな所に寝たら、
お前も風邪引くじゃないか!」

「お母さんは?」

(お父さん)
「あ~、もう大丈夫だ!」

「いつお家にお母さん帰るの?」

(お父さん)
「あと、1週間くらいかな?」

ぼくは1週間もお母さんがいないのが
嫌だと思うのに、お父さんは、
ずっと笑ってる。なぜだろう。

(お父さん)
「おい!これから街に出て買い物に行くぞ!」

「何を買うの?」

(お父さん)
「それは行ってからのお楽しみだ!」

ぼくが街に降りたのは、ずっと前。
だからどんな所か憶えていない。

街には扇風機の風もないのに、
たくさんの人が、ポピーがゆれてるように、
あちらこちらとゆれ歩いている。

街の広場に出ると、
大道芸人や歌手が手品をしたり歌ったり、
たくさんの人を喜ばせていた。

(お父さん)
「さぁ、着いたぞ!」

お父さんとお店に入ると、
ぼくの洋服よりも小さな服が並んでいた。

(お父さん)
「おい!女の子だ!」

「女の子?」

(お父さん)
「そうだ!女の子だ!」

「きのうのポピーの女の子?」

(お父さん)
「ポピー?何のことだ!(笑)
きのうお母さんが女の子を産んだんだよ!
お前の妹だ!(笑)」

「・・・・・(驚)」

(お父さん)
「ほら、早く妹の服を選べ!(笑)」

「うん!(笑)」

それから、
3回の夏を迎えた夜、
またお父さんがお母さんを担いで、
病院に出掛けた。

(お父さん)
「ちゃんと妹の面倒を見ろよ!
お兄ちゃんなんだからな!」

(妹)
「お父さん!いってらっしゃい!(笑)」

ぼくは、夜遅いからと、
妹を布団に寝かせた。

(妹)
「お兄ちゃんは寝ないの?」

「うん!
お父さんが帰って来るかもしれないから、
まだ寝ないよ!」

ぼくは妹が寝た見ると、
縁側に座って、ポピー畑の方を眺めていた。

(知らない声)
「耳をすませてごらん!」

「誰?」

(知らない声)
「私だよ!」

「だから誰?」

(知らない声)
「メイリンだよ!」

「メイリン?キャバリアの?」

「そうだよ!」

「何で犬なのに話せるの?」

「今日、お兄ちゃんがメイリンと散歩中に、
他の犬にいじめられそうになった時、
助けてくれたでしょ?」

「うん!ぼく、ケガしてお父さんに怒られたけど。」

「ごめんね。腕、まだ痛いの?」

「もう痛くないよ!」

メイリンが縁側のお兄ちゃんの横に座ると、

「どうして犬なのに話せるの?メイリン!」

「神様がね、今日のお礼を言いなさいって、
話せるようにしてくれたのよ!」

「神様?」

「そう!神様!」

「神様はどこにいるの?」

メイリンはお兄ちゃんのケガをした腕をなめた。

「この手のひらにいるのよ!」

「へぇ?手のひら?」

「神様が話してたわ。
子供の手のひらには、
神様のような力があるんだって。」

「力?」

「そう!その力はね、
あのポピーの花びらを助けた時に、
神様が授けたんだって。」

「何で?」

「このお兄ちゃんはとても優しい子供だから、
神様が応援したくなったんだって!」

「応援?」

「そう!神様は子供なら
誰でも応援するわけないって話してたわ。
本当の優しさを持つ子供だけを応援するんだって。」

ぼくはずっと話すメイリンの声を聴きながら、
メイリンを枕に寝たしまった。

(お父さん)
「おい!こんな所に寝たら、
風邪引くぞって何回言わせるんだ!」

「うん・・・おかえりなさい!
お母さんは?」

(お父さん)
「うん・・・」

ぼくの質問に、お父さんの顔が、
怒り顔から、笑顔に、
ぼくと目が合うと笑顔を止めて怒り顔に、
まるで妹が乗っていたゆりかごのように、
ゆらゆら顔を変えていた。

「で、どっち?」

「男の子だ!(笑)」


(制作日 2021.8.31(火))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1988年8月31日発売
アグネス・チャン『LIFE』

ASKAさんが
アグネス・チャンさんに楽曲提供した曲です。

少しだけ歌詞を書いてみます。
~~~~~
『LIFE』
作詞作曲 飛鳥涼

涙ぐむ その度に
心の何処かで 卵が割れるよ

いつ立って やさしさは
哀しい人から 先に生まれたね

風が壊した 花びらさえ
季節(とき)を飾る踊り娘(こ)

神さまは 子供達の
握る手のひらの中

お話が欲しい夜は
耳をすましてごらん そっと
~~~~~

物語の中に「ポピー」の花が登場したしたが、
「ポピー」は日本名だと「ひなげし」

アグネス・チャンさんの曲
『ひなげしの花』を参考に「ポピー」を登場させ、
その他、物語は『LIFE』を参考書いてみました。


(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
アグネス・チャン
『LIFE』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 矢賀部竜成
(1988.8.31発売)
https://m.youtube.com/watch?v=b6rmOfdmnoo

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