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【超ショートショート】(42)☆天使がくれたハンマー☆~胸の真ん中にざわめく穴の正体~

地球に、2159年8月29日、
巨大流星郡が衝突。
大きさは、一番大きなもので、自動車ほど。
それが世界中に降り注いだ。

世界の文化遺産や自然、工事や原発まで破壊。

世界中で難を逃れた都市は一つも存在しなかった。


22✕✕年
日本の富士山の洞窟に、 
巨大な研究施設が秘密裏に存在。

人類は、流星の衝突以降、
世界人口が減り、
流星が持ち込んだウイルスによって、
未知病気の発症を繰り返している。


何とか生き残った様々なジャンルの研究者が、
人類と地球を守るために立ち上がり、
出来上がったのが、
この〈富士・ハンマー・プロジェクト研究所〉
通称〈FHP〉

この〈FHP〉では、
あらゆる研究がされているが、
その中でも一番大きな研究は、
〔アンドロイドの開発と生産〕

地球の人口が、驚くほど減少したことで、
働き手が居なくなり、
人間一人に課される日常の仕事が増えてしまった。

その働き手の確保を目的として、
毎日新しい〔アンドロイド〕を生産し、
世界中に無償で発送している。


22✕✕年3月23日
人間の母親の子宮に見立てられた、
〔アンドロイド〕の子宮型プールカプセルから、
一人の人間の男の子が誕生。

この頃、
人間の女性が出産することは、
とても稀なことで、
ほぼ、自然妊娠でも、体外受精でも、
母親の体内から取り出され、
この〔アンドロイド〕の子宮型プールカプセルで、
十月十日人工的に育てられ、出産をする。

子供はちゃんと子宮から伸びる滑り台を下りて、
空気のある世界へと産まれるように、
AIでコントロールされている。

どんな〔アンドロイド〕の子宮でも、
人間らしく産まれた記憶を子供に残すことを、
大切にする〈FHP〉研究所リーダーの
ドリーム博士。

産まれたばかりの男の子を抱きしめ、
「君の名前は、ちょっと古風だが、
松五郎にするぞ!(笑)」

松五郎は、ドリーム博士に抱かれた後、
ベビーシッターの〔アンドロイド〕に、
育てられる。

〔アンドロイド〕は、
見た目はすべて人間そっくりだが、
一つ違いがある。
それは、体温だ無いということ。
機械が熱を持つことは、
トラブルの元で、
この辺りの研究だけは進歩が見られなかった。


そのため、
松五郎を抱く〔アンドロイド〕はいつも冷たく、
松五郎にとってそれが普通の人間なんだと認識する。

松五郎は、
〔アンドロイド〕の教育により、
18歳になることには、
一人前の研究者に成長。

ドリーム博士の研究チームに参加することになる。

そして、
松五郎を育てた〔アンドロイド〕とは、
ここでお別れとなる。

切ないのが、
松五郎は、そのベビーシッターの
〔アンドロイド〕を「お母さん」と呼ぶこと。

別れはとても寂しそうだったが、
松五郎は研究者の端くれとして、
「〔アンドロイド〕はロボット」と、
自身に言い聞かせるのに努める。


松五郎の参加する研究は、
人間自身のアンドロイド化。

人間は生まれ、教育を受けるが、
理解度や頭の良さに差が必ず生まれる。
その差を無くすための研究に、
日々忙殺されていく。 

地球の人口を効率よく増加させることが、
この時代の一番のテーマであるからだ。


そんなある日、
まだ若造な松五郎は、
自分の体力の限界を過信し、
高熱を出して倒れてしまう。

治療には、
もちろん医療系の〔アンドロイド〕が担当。

すぐに体調は回復するが、
なぜか、胸の真ん中に、
ざわめく穴の存在に気づく。


松五郎が、研究室で倒れた時、
一緒に研究している女性研究者、
風子に介抱してもらっている。


松五郎は倒れた時の記憶を甦らせ、
胸の真ん中にざわめく穴の正体を見つけていく。

「温かい」

これが一つのキーワード。

松五郎は、
肌の冷たい〔アンドロイド〕に、
産まれた直後から育てられ、
18歳になるまで、
肌の温かい人間にあったのは、
ドリーム博士だけ。

風子がなぜ肌が温かいのか、
その事を懸命に考える。

人間の中では、
血液が循環して、 
常に一定の体温を保っている。
・・・そんなことは、すでに知っている。

では、なぜ胸に穴があるのか?


そこへ、
松五郎を心配した風子がお見舞いに来る。

松五郎は、今自分が抱いている、
人生最大の研究テーマに昇格した、
胸の真ん中にざわめく穴について、
風子の見解を尋ねる。

すると風子は、
頬を赤らめ笑みを浮かべ、
松五郎のもとを離れる。


次にお見舞いに来るドリーム博士に、
同じ質問をすると、

「それは恋ってやつだね!
松五郎は、今、風子に恋しているんだ!(笑)
やっと人間らしくなって来たな!」

松五郎は、「恋」の意味がわからず、
再びドリーム博士に尋ねると、
突然博士は松五郎を抱きしめる。

「今、どんな気分かね?」

(松五郎)
「博士が温かいです。」

「松五郎を介抱した時、風子は、
君を必死に抱きしめていたんだよ!
思い出せているだろう?」

(松五郎)
「はい。でも、なぜ抱きしめるのですか?」

「まだわからないか?
「愛」だよ!
「愛」って〔アンドロイド〕から、
教えてもらわなかったのか?」

(松五郎)
「「愛」は、慈しむ気持ち。
そう聞いています。」

「ハァー。(ため息)
まぁ、仕方がないな。
そのうち風子が教えてくれるだろう。
その時、松五郎、
自分の気持ちに正直になるんだぞ!
逃げるな!(笑)」


松五郎は、
体調を回復してから数日後、
やっと研究室に戻って来る。

(風子)
「おはようございます。」

「おはよう。」

松五郎は、
風子に渡されたホットコーヒーを受けとる時、
一瞬、風子の手が当たり、
また風子の「温かいぬくもり」を感じた。
そして、
ジワッと胸の真ん中にざわめく穴が、
沸騰するのを感じて、苦しくなる。

(松五郎)
「あの・・・、コーヒーありがとう。」

(風子)
「うん。(笑)」

(松五郎)
「あの・・・、」

(風子)
「?」

(松五郎)
「この前みたいに、
僕を抱きしめてくれませんか?」

(風子)
「なぜ?どうしたの?
まだ具合が悪いの?」

(松五郎)
「そうじゃない!体調の問題じゃないんだ!」

(風子)
「じゃあ何?」

(松五郎)
「それは・・・、
この胸の苦しみの正体を知りたいんだ!
僕は今君に抱きしめられたいと、
この胸の真ん中にざわめく穴が思っている。
それに、
無性に、今君を抱きしめたいと思う自分もいる。
もう、苦しくて堪らないんだ!
なぁ!治し方を教えてくれ。(困)」

(風子)
「(笑顔で)じゃあ教えてあげる。」

風子から、
松五郎を抱きしめる。

松五郎は、
風子の温かい初めてのぬくもりの深さを、
のぞくように、彼女に身を預ける。


その光景を、
研究室の外から、
ドリーム博士が嬉しそうに眺めている。

(ドリーム博士)
「やっと研究データが取れたぞ!
松五郎にデータを入力して18年もかかるとは(笑)」


(制作日 2021.7.15(木))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
Chageさんの曲から、
2015年7月15日配信された
『天使がくれたハンマー』
作詞 松井五郎さん、作曲 Chageさん。

配信から今日で「6周年」
その記念に物語を書いてみました。

松井五郎さんの書いた歌詞の世界を参考に、
歌のラストの歌詞
~~~~~~~
愛を守れ 愛を鳴らせ
天使がくれたハンマー
愛だかでいい 愛だけがいい
愛しかいらないんだ
~~~~~~~
ここで物語が着地するようにしたつもりです。

ぜひ、
Chageさんの『天使がくれたハンマー』を
聴いてみてください。
どんな歌詞の世界を想像しましたか?

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした曲は
Chage
『天使がくれたハンマー』
作詞 松井五郎 作曲 Chage
☆収録アルバム
『hurray』
(2015.9.16発売)
★『天使がくれたハンマー』Music Video★
https://m.youtube.com/watch?v=dt5jP1MMDpI


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