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【超ショートショート】(23)☆DO YA DO☆~お兄ちゃんのお嫁さん~

函館の大三坂(だいさんざか)の
坂の上にある喫茶店。

君は、小さなブーケ(花束)を手に出てきた。


11月の雪の夜。

函館山、
君は僕のコートの中に居た。

それから毎日、
ファッション雑誌の恋愛特集のまねごとを、
お互いに繰り返し、
一丁前に、
大人な恋愛をしているように
装(よそお)いあってみた。

でも、やっぱり、
うまく出来なかった。

君が、あいつとケンカしているのは知っている。
今も君は、
あいつのことが好きなのも気づいている。

僕は、万が一の番狂わせの万馬券を狙うように、
君の寂しさに優しくしてみたんだ。

すっかり、君は、僕の優しさに、
騙(だま)されてくれたと思っていた。
君の寂しいそうにする笑顔に気づくまでは。

僕らは、
函館の大三坂の坂の上にある喫茶店、
元町茶寮で、時々待ち合わせした。

いつも君は、僕よりも、
30分早く到着していると、
マスターが、こっそり教えてくれたよ。

君は、
コーヒーに生菓子のセットを、
よく注文したね。

どれも美味しいって笑う笑顔を
僕に何度も見せてくれた。

でも、ある日、
僕は見てはいけないものを
見たような気持ちになり後悔した。

君の笑顔の瞳の奥は、
目の前の僕ではなく、
とても遠くを眺めていることに気づいた。

僕の姑息(こそく)な優しさに、
君は、ただ、
騙されたふりをしてくれただけなんだね。

やっぱり、
君の心からあいつを消すことなんか
出来やしなかった。

僕は、
君のこと、今も好きだよ。

でも、
君がしあわせに・・・、
本物の笑顔になれるなら、
僕は、
あいつと君のキューピッド役を演じることに、
決めたよ!

あいつも僕の大事な友達だから、
しあわせになってほしいんだ!


12月、
クリスマスイブも近づく頃。

僕は、
君とあいつに嘘をついた。

あいつには、

(僕)
「今度の日曜日のクリスマスイブ、
僕の妹の誕生日なんだよ!
それでな、頼みがあるんだけど・・・、
妹が、お前のこと、好きだって言うんだよ。
まだ保育園児だって言うのに(笑)。
それでな、悪いけど、誕生日プレゼントに、
ブーケ(花束)をプレゼントしてほしいんだ!
もちろん、費用は僕が出すから。
ちょっと頼まれてくれよ!ダメか?(笑)」

君には、

(僕)
「あのさ、今度のクリスマスイブの日曜日、
2人のことで話があるんだけど、
あの坂の上にある喫茶店に来てくれないかな?」


そして、
日曜日のクリスマスイブ。
待ち合わせ時間は「14:00」と告げていた。

僕は、
喫茶店の向かいにある
カトリック元町教会のかげに隠れて、
2人の様子を見守った。

13:30頃、
雲のすき間から太陽の光のスポットライトが、
君を照らすように、喫茶店へ入る君。

14:00
あいつは、
僕が用意したバラのブーケ(花束)を持って、
喫茶店へ入る。

僕は、
事前にマスターに伝言していた。

(僕)
「今日、これから、
いつもの君と、
僕の友達のあいつが14:00に来ますので、
これを出してあげてください。
僕のおごりで。(笑)。
それと、
僕は今日の待ち合わせ時間に来ないことも、
伝えてもらえますか?」

待ち合わせ時間から、2時間後。
ホワイトクリスマスの小雪がちらつき始めた頃、
君は、ブーケを手に、
あいつと笑顔を確認しあいながら出てきた。

そして、
周りを見渡してから、
どちらからでもなく、
手を繋ぎあい、身体を寄せながら、
坂の下へと歩いて行った。


(僕の腰辺りを)
〈トン・トン〉と叩かれる。

「ねぇ~ねぇ~!私、ケーキが食べた~い!」

同じマンションに住む、
僕が妹と呼んでいる保育園児の女の子。
時々、子守りを頼まれていた。

「ねぇ~ねぇ~、早くケーキ~!」

「わかったよ!どんなケーキが良いんだい?」

「苺とクリームいっぱいのケーキがいい!」

「わかったよ!」

「お兄ちゃん!
さっきの女の人、お兄ちゃんの彼女?」

「もう違うよ!」

「あぁ~、良かった!(笑)。」

「なぜだい?」

「だって、お兄ちゃんのお嫁さんは、私って、
前にプロポーズしたじゃん!(笑)」

「プロポーズって(苦笑)」

「私、お兄ちゃんを泣かせる女(ひと)は、
絶対に許さないから!(怒)」

「あぁ~(冷汗)ありがとう(笑)」

「うん!(笑)早くケーキ買いに行こうよ!」


僕は、未来のお嫁さん候補の、
保育園児の女の子と、手を繋ぎ、
坂の下のケーキ屋さんへ、
歩いて行く。

帰りの、上りの坂道では、
クリスマスケーキを右手に、
背中で眠る未来のお嫁さんの
あどけない寝息をBGMに、
家に送り届けた。


(制作日 2021.6.27(日))
※物語はフィクションです。

今日は、
1990年6月27日発売の
CHAGE&ASKA シングル『DO YA DO』
発売から今日で、「31周年」になります。
そのお祝いとして、
『DO YA DO』をヒントに
お話を書いてみました。

歌詞に登場する「坂」を参考に、
函館という街を選んでみました。

こんな時代、毎日だから、
ちょっと旅気分で、
物語を考えてみました。

また、
最後に登場する、
妹役の保育園児は、
台湾ドラマ『時をかける愛』を参考に、
お兄ちゃんの未来のお嫁さんとして
登場してもらいました。

お兄ちゃんこと僕の設定は、高校2年生です。
青春時代の恋のかけひき、
と、までは言えなくても、
こうした事が、
学生の頃に経験した人もいるかも知れませんね。

お兄ちゃんのように、
自分の想いを封印しても、
友達や好きな女性のしあわせを応援しちゃう所が、
韓流ドラマ『春のワルツ』のフィリップみたいで、
ちょっとせつなくなりますね。

CHAGE&ASKA『DO YA DO』も、
こうしたせつなくさが
隠れているような気がします。

明るい曲調とは違う歌詞の物語にも、
ぜひ聴き入ってみてください。


(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~​

参考にした曲は
CHAGE&ASKA
『DO YA DO』(1990年)
作詞作曲 ASKA 編曲 Jess Baily
★収録シングル
『DO YA DO』
(1990.6.27発売)
★収録アルバム
『SEE YA』
(1990.8.29発売)

☆ライブ映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=ceIpa_cAyQ4
☆Music Video☆
https://m.youtube.com/watch?v=0Y94qIPD_zk

 


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