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【超ショートショート】(100)~森の中のお花屋さん~☆幸せの黄色い風船☆

前も見えない豪雨の中、

道に迷う都会の道。

突然の車のライトに驚き、
よろける女の子。
そのまま、側溝に足を取られ、
転んでしまう。

足にかすり傷を作って、
泣きそうになる顔をしながら歩くと、
雨が上がって、視界が開けてくると、
そこは、どこかの森の中だった。

女の子は、怖くなり、
街灯もない道を早足で歩く。

T字路の突き当たりに、
明かりが見えてきた。

急いで駆け込むと、
お花屋さんだった。

(お花屋さんの女性)
「いらっしゃいませ。」

(女の子)
「あの~、ここは?」

(お花屋さんの女性)
「ここはお花屋だよ!」

(女の子)
「そうじゃなくて、どこですか?」

(お花屋さんの女性)
「どこって東京だよ!」

(女の子)
「東京にトトロの森みたいな所があるんですか?」

(お花屋さん)
「そうだよ!あるんだけど、この森は・・・」

お花屋さんのドアが開き、
お客さんのおじさんが入ってきた。

(お花屋さんの女性)
「いらっしゃいませ。今日は?」

(お客さんのおじさん)
「いつもの」

(お花屋さんの女性)
「はい!じゃあこれを。」

お花屋さんの女性はおじさんに、
お花を1輪手渡し、
おじさんはコインを渡した。

そして、
おじさんは店の奥のドアに入って行った。

(女の子)
「あの~、お店の奥にもお店があるの?」

(お花屋さんの女性)
「そうよ。
特別なお客さんだけが入れる部屋なのよ!」

(女の子)
「特別なお客さんって?」

(お花屋の女性)
「お花を買ってくれたお客さんのことよ!」

(女の子)
「じゃあ、私もお花を買ったら入れるの?」

(お花屋の女性)
「そうね!」

女の子は、お店にある花を眺めて、
どれを買うか考える。

(女の子)
「お花屋さん、ひまわりはある?」

(お花屋さんの女性)
「あるわよ!でも何でひまわり?」

(女の子)
「私の名前がひまわりだから。」

(お花屋さんの女性)
「あらそう、かわいい名前ね。」

するとお花屋さんは、
店で一番大きい花のひまわりを選んでくれた。

(女の子)
「お金は?」

(お花屋さんの女性)
「100円でいいよ!」

(女の子)
「私のおばちゃんのお花屋なら、
このひまわりで1本500円は取るよ!」

(お花屋さんの女性)
「あらそう(笑)。今日は特別に安くしたのよ。
初めてここにきたお客さんだからね。」

(女の子)
「ありがとう。」

(お花屋さんの女性)
「じゃあね、ひまわりを持って、
奥のドアを開けてね。」

(女の子)
「うん。」

女の子はゆっくりと、
店の奥まで歩き、
ゆっくりとドアを開けた。

(ウエイトレスの女性)
「いらっしゃいませ、ひまわりちゃん。」

(女の子)
「何で、名前知ってるの?」

(ウエイトレスの女性)
「お花屋さんから聞いたのよ!」

(女の子)
「そうなんだ!」

ウエイトレスの女性に席まで案内され、
こう言われた。

(ウエイトレスの女性)
「ここで次のお部屋に案内するまで、
ケーキでも食べて待っていてくれますか?」

(女の子)
「次の部屋?」

(ウエイトレスの女性)
「そう、次の部屋があるの。
ここは、その部屋の準備が出来るまでに待つお店なの。」

女の子より先に入っていたおじさんが、
ここでご飯を食べていた。

(女の子)
「どれくらい待つの?
何で待つの?」

(ウエイトレスの女性)
「それはね、お客さん一人ずつのためのお部屋を
作るためなんだよ!」

(女の子)
「作るの?」

(ウエイトレスの女性)
「そうよ!で、お客さん、
ケーキは何に致しますか?」

(女の子)
「いちごのケーキ!」

しばらくして、
いちごのケーキと紅茶がテーブルに並べられた。

ひまわりがケーキを食べていると、
さっきのおじさんがもう1つの部屋に入って行った。

(女の子)
「おじさんはどこに行ったの?」

(ウエイトレスの女性)
「それは、ヒミツなのでお教えできません。」

ひまわりがケーキを食べ終わると、

(ウエイトレスの女性)
「さぁ、ひまわりさん、
お部屋の準備ができました。
あちらのドアからお入りください。」

ひまわりは、おじさんがドアを開けた時、
少しだけ部屋の中を見た。

(女の子・ひまわりの心の声)
「おじさんの部屋は夜だったな。」

ひまわりはウエイトレスの女性の案内で、
ドアの前に来ると、

(ウエイトレスの女性)
「お花は、ちゃんと持っていてくださいね。
あちらのお部屋にも、
私のような案内人がいますから、
その人の指示に従ってくださいね。」

(女の子・ひまわり)
「うん。」

ひまわりは、ドアに手を掛けると、
ゆっくりとドアを開けてみた。

(謎の案内人の男性)
「ひまわり様、いらっしゃいませ!」

(ひまわり)
「あなたは誰?」

(謎の案内人の男性)
「私は、ひまわり様を担当します執事です。」

(ひまわり)
「ひつじ?」

(執事の男性)
「しつじです。動物のひつじではありません。」

(ひまわり)
「ふ~ん、何でもいいや(笑)」

(執事の男性)
「ひまわり様、あちらをごらんください。
先ほどからずっとお待ちですよ!」

ひまわりは執事が指差す方を見た。

ひまわりの部屋は、
草原の景色が広がっていて、
遠くの方に、茶色い点があった。

その茶色い点が少しずつひまわりの方へ
近づいて来ると、

(ひまわり)
「花?花だ!へえ?何で花がいるの?」

ひまわりが言う花とは、
ひまわりが生まれた時にいた飼い犬の
ゴールデンレトリーバーの女の子。
ひまわりにとってお姉ちゃんだった。

ひまわりが小学生に入学してすぐ、
突然の病気で亡くなってしまった。

花が亡くなる前、
ひまわりはいつも一緒に寝る花が、
大事にしていたぬいぐるみを壊してしまったことを、
ものすごく怒ってしまった。

ひまわりは、
それが原因で亡くなったと今も思っていた。

(執事の男性)
「ひまわり様、花様が来ますよ!(笑)」

(ひまわり)
「でも、花怒ってないかな?」

(執事の男性)
「大丈夫ですよ!花様はもうというより、
最初から怒っていませんよ。
花様が亡くなったのは、
本当にご病気が原因でしたから。(笑)」

花がひまわりの所に到着すると、

(ひまわり)
「花、ごめんね。あんなに怒って。」

(花)
「大丈夫だよ!何にも怒ってないから(笑)」

(ひまわり)
「花?話せるの?」

(花)
「うん!話せるよ!」

ひまわりは状況が理解できず、
執事の男性に答えを求めた。

(執事の男性)
「ひまわり様。このお部屋では、
すべての生き物が言葉を話せるように、
作られているんですよ!」

(花)
「ひまわり!ねぇ見て!」

ひまわりたちの目の前を、
犬や猫たちがミュージカルのパレードのようになって、
遠くへ歩いて行く。

(執事の男性)
「ひまわり様。このパレードについて行きますよ!」

ひまわりたちは、
パレードの中に入ると、
青空の中に現れた黒いトンネルへ入った。

ひまわりは恐怖で目をつむっていると、

(花)
「ひまわり!着いたよ!」

ゆっくりと目を開けると、
ひまわりの住む街の商店街に着いた。

(花)
「ひまわり!早く!」

花は、服屋さんに入ると、
好きな服を選んで着た!

(花)
「ひまわり!行こう!」

(ひまわり)
「ねえ、お金は?
洋服のお金は?払ったの?」

(執事の男性)
「ひまわり様。
ここではお金は必要ないんですよ!」

ひまわりは執事の話を聞きたかったが、
花が次へ急ぐので、
仕方なくついて行った。

そして、
もう一度、あのパレードに入ると、
またあの黒いトンネル。

くぐり抜けると、
青空の下の最初にいた草原に戻った。

(花)
「ひまわり!遊ぼう!」

(執事の男性)
「ひまわり様。あそこの時計が、
24:36になりましたら、
このドアのまでお戻りください。」

(ひまわり)
「何で?」

(執事の男性)
「ひまわり様が元の世界に戻る時間だからです。」

(ひまわり)
「元の世界?」

(花)
「ひまわり!早く!」

(執事の男性)
「さぁ、いってらっしゃい!」

ひまわりと花は、
好きなだけ遊んだ。

そして、花がこんなことを話した。

(花)
「ひまわり?あのね、これ知ってる?」

(ひまわり)
「風船?」

(花)
「そう、風船。」

(ひまわり)
「黄色い風船しか無いね」

(花)
「そう、黄色い風船だけなんだ、
この世界にあるのは。」

(ひまわり)
「この世界って?」

(花)
「天国だよ!」

(ひまわり)
「天国?」

(花)
「そう、ここは天国。
ひまわりがここに来たのは、
私が呼んだから。」

(ひまわり)
「どうやって?」

(花)
「それが、この黄色い風船。
この黄色い風船を青空に上げると、
大切な人に逢えるって、
天国では言われているの。
私も毎日、黄色い風船を上げたわ。」

(ひまわり)
「毎日?」

(花)
「ここにいる犬も猫も
みんな飼い主さんに逢いたくて、
みんな黄色い風船を上げているの。
あともう少しで時計が24:24になると、
一斉のせっ!って黄色い風船を青空に上げるのよ!
ひまわりもするでしょう?!」

花はたくさんの黄色い風船を用意した。
周りの犬も猫もみんな、
花と同じようにたくさん黄色い風船を用意した。

(花)
「ひまわり!あと少しで時間よ!
これひまわりの分。(笑)」

時計が24:24の時間になると、
草原のあちらこちらから、
一斉に黄色い風船が青空へ解き放たれると、
青空だったのが、黄色い空に変わってしまった。

(ひまわり)
「花?もう時間になるの。」

(花)
「時間?」

(ひまわり)
「そう、帰る時間。もう行くね。」

(花)
「ひまわり、また逢える?」

(ひまわり)
「うん!また逢えるよ!」

ひまわりは、
執事の男性が待つドアへ歩いた。

すると、
先ほどのパレードが、
ひまわりを巻き込み、
花と一緒にドアまで歩いた。

(花)
「ひまわり、またね。」

ひまわりは、泣いてしまいそうになるからと、
声も出せず、ただうなずいて、
笑顔を作って、花を安心させた。

(執事の男性)
「時計が24:36になりました。
では、ひまわり様、こちらのドアを開けてください。」

ひまわりは、
震える手でドアをゆっくりと開けた。

すると、
大きな光に包まれ視力を無くしたひまわり。

雨が降る都会の歩道で、
ひまわりが倒れていた。

(通行人の女性)
「お嬢さん?大丈夫?」

ひまわりは声のする方を見ると、
お花屋の女性がいた。

(ひまわり)
「お花屋さん?」

(通行人の女性)
「お花屋さんに行きたいの?」

ひまわりは、お花屋の女性の様子が変なので、
こう尋ねた。

(ひまわり)
「お花屋さんじゃないんですか?」

(通行人の女性)
「私はお花屋さんじゃないわ。」

(ひまわり)
「じゃあ、私のことは?」

(通行人の女性)
「お嬢さんのことは知らないわ。」

ひまわりは
通行人の女性が呼んだ救急車に乗り病院へ。

病院では、
森の中のお花屋さんの話や
花の話をしたが、
誰も信じてくれなかった。

だが、
黄色い風船の話をお医者さんにしたら、
聞いたことがあると教えてくれた。

(お医者さん)
「黄色い風船の写真か絵が、
確か僕の部屋に飾ってあるよ!
あとで見せてあげるから、
今日は入院しておとなしくしてくれるかい?」

(ひまわり)
「はい。」

翌朝、
お医者さんがひまわりの病室に来た。

(お医者さん)
「ほら!この絵だよ!黄色い風船は。」

その絵には、あの日、
ひまわりが見た景色が描かれていた。

(お医者さん)
「ここよく見てごらん。
ひまわりちゃんにいてるよね、この人。」

ひまわりは、お医者さんの指差す方を見ると、
あの日、花が着ていた服と、
ひまわりの着ていた服と同じ人と犬が
描かれていた。

(ひまわり)
「この絵は、いつ描かれたもの?
誰が描いたの?」

(お医者さん)
「うん、それはわからないんだ!
人からもらったものでね。
でも、この絵には、ヒミツがあってね。」

(ひまわり)
「どんな?」

(お医者さん)
「それはね、
この絵は必ずひまわりっていう子の所に
帰ろうとするらしいんだ!
君はひまわりだろう?」

(ひまわり)
「うん。他にもひまわりっているの?」

(お医者さん)
「さぁそれはわからないけど、
この絵をひまわりって子に返すのが、
僕の役目なんだよ!」

(ひまわり)
「返してどうなるの?」

(お医者さん)
「ほら、ひまわりは花と約束しただろう。
また逢おうって。」

(ひまわり)
「何でお医者さんが知ってるの?」

(お医者さん)
「それはね、
ほら僕の顔を見て思い出さないかい?」

ひまわりはじーとお医者さんの顔を見た。

(ひまわり)
「はっ!ひつじ?」

(お医者さん)
「だからひつじじゃなくて執事だよ!」

(ひまわり)
「何で?ここに?」

(お医者さん)
「ひまわり様に花様からの
プレゼントを渡すためであります。」

(ひまわり)
「プレゼント?」

(お医者さん)
「そうです。この絵は花様が描いたもの。
どうしてもひまわり様に忘れてほしくないと、
絵にして残したかったそうです。
そして、この絵のあの日に、
花様に逢えるように、
毎年黄色い風船を青空にあげてほしいと。
それを合図にひまわり様に逢いに来るそうです。」

(ひまわり)
「うん、わかった。ありがとう。」

(お医者さん・執事)
「こちらこそありがとうございます。」

ひまわりは帰宅すると、
部屋に花の描いた黄色い風船の絵を飾った。

そして、
毎年、花に逢えるようにと、
黄色い風船を青空にあげるように、
ベランダに備え付けた。


(制作日 2021.9.11(土))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2020年9月11日配信された
ASKA『幸せの黄色い風船』
配信から「1周年」となります。

それを記念して、
『幸せの黄色い風船』を参考に、
ジブリ風のお話を書いてみました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
ASKA 
『幸せの黄色い風船』
作詞作曲 ASKA
(2020.9.11配信)

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