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【超ショートショート】(171)~嘘から生まれた本当の心~☆CHAGE&ASKA『僕はこの瞳で嘘をつく』☆

「先生!ボクどうしたらいいの?」

保育園でモテモテの男の子がいた。
男の子は「心」と書いて「しん」と読んだ。

心くんがある女の子に告白されて、
とても困っていた。

「先生、ボク夢ちゃんが好きで、
ひとみちゃんのことは好きだけど・・・」

告白したひとみちゃんは、
心くんにとっては、
仲の良いお友だち。
彼女候補ではなかったようだ。

「心くん、
正直な気持ちをひとみちゃんに話したら?」

「先生、ボク、そんなことできないよ!」

「どうして?」

「だってひとみちゃんも好きだから。」

「ひとみちゃんも好きなの?」

「でも、ボクは夢ちゃんの奥さんになりたいから、
ひとみちゃんと結婚できないんだ!(涙)」

「夢ちゃんの旦那さんね(笑)。
じゃあやっぱりひとみちゃんに話したら?」

翌日、心くんはひとみちゃんを呼んで、
自分の気持ちを話した。

「先生!心くんったら、ひとみのこと好きって(笑)」

「へぇ?!」

「将来結婚してくれるって(笑)」

「そうなの・・・」

ひとみちゃんが先生から離れると、
心くんがやって来た。

「先生~、どうしよう~!(涙)」

「言えなかったの?」

「うん!」

「どうして?」

「だって、ボク、夢ちゃんも好きだけど、
ひとみちゃんも好きだから、
ひとみちゃんのこと嫌いにならないよ(涙)」

「そう仕方がないわね。」

この保育園児の三角関係は、
卒園式まで続いた。

小学校は、
心くんとひとみちゃんが一緒で、
夢ちゃんは違う学校に通うことになった。

「先生?!」

「何?卒園おめでとう心くん!」

「ありがとう!あのね。」

「何?」

「ボクね、ひとみちゃんとも夢ちゃんとも、
仲良くすることに決めた!」

「ひとみちゃんと夢ちゃんは
それでもいいって?」

「うん!(笑)」

先生はまだ子供だと言うのに、
心くんの恋愛テクニックに恐ろしさを
不覚にも感じてしまった。

心くんが、
ひとみちゃん、夢ちゃんと
両方と付き合うことは、
ひとみちゃんも夢ちゃんも、
本当は知らなかった。

小学生になると、
心くんはすっかり気が変わり、
別の女の子に恋をするばかり。

だけど、
ひとみちゃんだけは、
ずっと心くんだけだった。

心くんとひとみちゃんは、
幼なじみとして友達関係を続けた。

「おい!お前ひとみと付き合ってるのかよ!」

「違うよ!ただの幼なじみだよ!
あんなヤツと付き合うわけないだろう!」

ひとみちゃんは、
思春期を迎えた頃、
思春期の勲章とも言えるニキビに悩んでいた。
そのため、
いつも人目を気にして、
保育園児の頃の天真爛漫でいつも笑顔の女の子が、
すっかり無口な暗い女の子に変わってしまった。

心くんも
そんなひとみちゃんの変化に気づいていたけれど、
同級生の目もあり、
ひとみちゃんに対して、
冷たい態度で過ごすようになった。

高校生になると、
ひとみちゃんが女子校に入学。

ふたりは毎日顔を合わせることがなくなった。

それから、
大学3年の頃、
同窓会で再会。
でも、たいした話しもせず、
また疎遠になった。

ふたりは、
時々共通の友達から、
互いの噂話を聞いた。

心くんにも彼女がいることも、
ひとみちゃんにも彼氏がいることも。

ふたりが26歳になった頃、
保育園の先生が病気で倒れ、
余命幾ばくもないと知らされた。

当時の保育園児が集まり、
先生のお見舞いをすることにした。

だが、
一斉に大勢が病院に行くのは迷惑だからと、
1日に2人ずつお見舞いすることを決めた。

「とりあえず、くじ引きで決めようよ!」

同じ番号の人とペアになることになった。

「心は?」

「俺は5番」

「ひとみは?」

「・・・私も5番」

ふたりは、
1ヶ月に2度、お見舞いの日に
病院の入口で待ち合わせ。

保育園児の頃のような
人懐っこい関係にはならず、
いつも他人行儀で話をした。

「あの、今は?」

「今は・・・」

「結婚は?」

「してません。」

「心くんは?」

「僕は・・・」

「僕は?」

このとき心くんは婚約中だった。
相手はなんと夢ちゃん。
そんなこと口が裂けても言えないと、
心くんは考えた。

「どうしたの?」

「へぇ?何でもないよ!(冷汗)」

ひとみちゃんは、
この日、ふたりの昔話をした。

「あのとき、結婚してくれるって言ったの、
憶えてる?(笑)」

「あのとき?・・・いや、忘れた!」

「もし夢ちゃんを心くんが選んでいたら、
私、死んじゃうって(笑)
保育園児で思ったのよ(笑)」

「あっ、そう。」

「今、彼女いないの?」

「・・・」

「何で答えてくれないの?」

「・・・」

それから後日、
心くんが夢ちゃんと結婚したと、
ひとみちゃんが知る。

ひとみちゃんは、
男性とお付き合いはしたことがあったが、
全部がプラトニック。

ひとみちゃんは、
あの保育園で心くんが話した言葉を
ずっと信じていた。

どんなに、
別の男性を好きになってみたつもりでも、
自分の心には嘘はつけなかった。

それから、数年が過ぎた頃、
心くんとひとみちゃんが再会する。

「どうしたの?心くん」

「どうしてのって、お前が倒れって聞いたから。」

「でも、もう大丈夫よ!」

「こんなところにいないで、
夢ちゃんのところに帰りなさい!」

「うん・・・」

このとき、
心くんは結婚していなかった。
あの頃の夢ちゃんとの結婚は、
婚姻届を書くときに、
破談となった。

理由は、
夢ちゃんには、
心くんよりも大好きな男がいた。

その男は妻子がいたため、
付き合うことができなかったが、
それでもいいからと、
夢ちゃんは待つことにした。

だけど、
心くんと再会し、気持ちが変わって、
心くんと結婚することを決めてしまう。
夢ちゃんの心の中にはその男を残したまま。

夢ちゃんは心くんに
嘘をつく毎日になることを
申し訳ないと思った。
それと男が夢ちゃんのために独身になったと
婚姻届を書く日に連絡してきた。

夢ちゃんは、
その日に心くんと住む新居を出ていった。

こんな出来事を、
病気のひとみちゃんにはできなかった。

「ひとみちゃんは?」

「何?」

「結婚は?」

「何で?」

「したの?してないの?」

「したかもしれないし、してないかもしれないし」

「ふっ、なんだよそれは(笑)」

そこへ、
ひとみちゃんを尋ねて、
僕らと同じ歳くらいの男性が
ひとみちゃんのお見舞いに来た。

「ひとみがいつもお世話になっています!」

心くんはそう男性に言われて、
心臓が止まりそうになった。

「あの~」

「この人は(笑)」

「ひとみ!ちゃんと紹介しないと」

「そうね(笑)」

「あっ!僕、帰ります!」

心くんは、男性がひとみちゃんの
旦那さんか彼氏だと思い、
胸が締め付けられていくのを感じて、
病室を出た。

すると、
その男性が追いかけてきて話した。

「あの~、すみません!心さん!」

「はい!」

「何か誤解させちゃいましたね!」

「誤解?」

「僕はひとみの兄です!」

「兄?」

「ひとみと僕は血のつながりはないのです。」

どうやら、
小学生の頃、
ひとみとそのお兄さんの両親が再婚したらしい。
ひとみもお兄さんも幼い頃に、
親を失くしていたから、
すぐに仲良くなれたと言う。

「ひとみは、
心さんに言われたことを信じて、
ずっと待っています。」

「・・・言われたこと?」

「そうです!保育園での約束です!」

「何だろう」

「僕帰りますから、
ひとみのところに戻ってもらえませんか?」

「はい。」

心くんは、お兄さんの言うとおり、
ひとみちゃんの病室に戻った。

ふたりは、
心くんが忘れていることを思い出すように
面会時間ギリギリまで話した。

それから毎日、
面会できる時間が1分でも5分でも、
心くんはひとみちゃんに会いに来た。

あれから、
心くんとひとみちゃんは、
お互いの白髪を見つけては、
ニコニコと嬉しそうに笑った。

(制作日 2021.11.21(日))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1991年11月21日発売 シングル
CHAGE&ASKA『僕はこの瞳で嘘をつく』
発売から今日で「30周年」。

この曲を参考に、
韓流ドラマにあるようなお話を書いてみました。

韓流ドラマって、
子供の頃の出会いから、
ふたりがハッピーエンドになる
ストーリーを多く見かけます。

子供の頃からの付き合いだと、
日常の些細な嘘をたくさん
ついてくることはあるもの。

好きな人を好きじゃないと言ってみたりとか。

嘘にも、
いろんな嘘があるので、
嘘をつくことが、
良いことも悪いこともある。

でも、
嘘をつく瞬間、
相手に対して愛があったなら、
いつか許されるときも来るといいねと
思ってみます。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『僕はこの瞳で嘘をつく』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 十川ともじ
(1991.11.21発売)

YouTube
【CHAGEandASKA Official Channel】
『僕はこの瞳で嘘をつく』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=UFWT8IzDlMI
『僕はこの瞳で嘘をつく』ライブ映像
https://m.youtube.com/watch?v=Tuwy6zhQ1-U

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