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【超ショートショート】(76)~僕らの「時」の宝探しの旅・24時間の冒険~☆THE TIME☆

僕らの学校には、
〈時計部屋〉と呼ばれる
時計だらけの部屋がある。

毎年、
各学年から2名が選ばれ、
全部で6名で、
一年間〈時計部屋〉の掃除や
時計の修理を担当する。

今年の赤ヶ丘中学の〈時計部屋〉担当メンバーは、
1年C組 井上鏡子
1年F組 木村要
2年B組 天野ひとみ
2年D組 古川弘樹
3年A組 坂本涼太
3年E組 石塚めぐみ

そして毎年、選ばれたメンバーで、
その年のチーム名をつけるのが恒例。

さて今年は?

『THE TIME~alive my life』

チーム名に込めた思いは、
今を精一杯生きる。

彼らの仕事は、
まず時計部屋のドアのカギを
開ける所からスタートする。

なぜ、ドアにカギがあるのか?

それは、
この時計部屋に秘密があるからだ。

その秘密を守れる者だけが、
各学年から選ばれたのだ。
志願してなれる役割ではなかった。

時計部屋の時計は、
歴代の校長先生が集めた、
世界中の新旧の時計コレクション。

年に1度、文化祭の時に、
一般公開されるとても貴重な時計たち。

(木村要)
「先輩。この中に、
不思議な時計がある聞きました。
本当ですか?」

(石塚めぐみ)
「要はおしゃべりしないで、
早く掃除しなさい!終わらないじゃないの!」

掃除が終わると、

(古川弘樹)
「さっき話していた時計、
僕も聞いたことがあります。」

(井上鏡子)
「どんな?」

(古川弘樹)
「父と兄から。
二人ともこの時計部屋の担当になってるんだ。」

古川が話すには、
父も兄もその不思議な時計を見つけて、
不思議な体験をしたことだった。

(天野ひとみ)
「どんな?」

(古川弘樹)
「それは教えてくれないんだ。
この部屋の出来事は絶対、
話しちゃ行けないルールになってるって。」

1ヶ月もすると、
部屋の掃除にも、
時計の修理にもなれてくる『THE TIME』メンバー。

作業を早く終えると、
暇を持て余した木村要が、
まだ見ていない時計を探して、
部屋の奥へと冒険するように、
段ボールで作った銀紙を張り付けた剣と
これまた段ボールで作ってペイントした
ヘルメットをかぶり、
ひとり旅に出た。

(木村要)
「(女子みたいな声で)キャッ!」

(坂本涼太)
「おい!大丈夫か?」

(木村要)
「キャッ!キャッ!キャッ!」

(天野ひとみ)
「ねぇ?大丈夫?」

(木村要)
「(めちゃくちゃ大人な紳士のような口調で)
えぇ、僕は大丈夫!あなたは?」

ただの木村のいつもの悪ふざけとして、
みんなは笑みも浮かべず、
残りの作業に戻る。

だが、
このとき、木村の手には、
ひとつの小さな時計があった。

(井上鏡子)
「木村先輩。その時計は、
棚から出しちゃいけないヤツですよ!」

(石塚めぐみ)
「木村君!早くしまって!
先生に見つかると大変なことになるわ。」

木村は、仕方なく元の場所に、
その時計を戻した。

そして、
作業を終えた『THE TIME』チームが帰宅すると、
先ほどの時計が、突然激しく時を行き来するように、
針を動かし始めた。


学校が夏休みの8月。
『THE TIME』のメンバー6名は、
2週間ぶりに、時計部屋に入った。

ドアを開けた井上鏡子が、
部屋の異変に気づく。

「この部屋、何か変わっていませんか?」

(木村要)
「どこが?いつもと一緒だよ!
ほら、この時計もあの時計もその時計も、
同じ場所にあるじゃないか。」

(井上鏡子)
「でも・・・何か変です。」

(坂本涼太)
「まぁ、とりあえず部屋に入ろう。
ドアを開けたままだと、
誰かに見られて、
先生に怒られるから。」

(井上鏡子)
「はい・・・。」

異変に気づいた井上鏡子以外は、
いつもと変わりなく作業をこなした。

時計部屋の外に、靴の足音が聞こえて来た。
少しずつ部屋に近づくと、
ドアの前でその足音が止まった。

(天野ひとみ)
「誰かしら?」

そう話す天野はドアを開けようと、
ドアノブに手をかけた。

(井上鏡子)
「(小声)天野先輩!開けちゃダメです!」

そう話した井上がドラを指差し、
ドラにあるガラスに、
何の影もないことを、
みんなに教えた。

しばらくすると、
その足音はどこかへ歩いていなくなった。

誰もが安堵した時、
時計部屋の奥から、
今まで聞いたことの無い時計の針の音が、
聞こえてきた。

(石塚めぐみ)
「木村君!どこに行くの?
もう変なことするのは止めて!」

(木村要)
「いや、ひょっとして・・・」

木村は石塚先輩の注意を無視して、
部屋の奥へ入って姿を消す。

(石塚めぐみ)
「木村君!木村君!どこにいるの?
早く戻って!」

5分して、10分して、60分しても、
木村が戻らないことを、
残りのメンバー5名が心配しだし、
部屋の奥へ様子を見に向かう。

「ドスンっ!」

(石塚めぐみ)
「木村君!」

(坂本涼太)
「おい!要!しっかりしろ!」

意識を失った木村が、
ホコリまみれで倒れていた。

メンバーは、部屋の奥から広い場所に運んで、
木村を介抱する。

(木村要)
「あっ!イタタ~。」

(古川弘樹)
「木村君!大丈夫ですか?」

(井上鏡子)
「要ちゃん!今まで、どうしてたの?」

(木村要)
「あっ・・・え~と・・・忘れた!」

(石塚めぐみ)
「忘れたんじゃないわよ!
ふざけてないで思い出しなさい!(怒)」

木村はしばらく黙り、
今までの記憶をたぐり寄せるように、
眉間にシワを寄せた。

(木村要)
「あっ!そうだ!みんなにお土産があるんですよ!」

(天野ひとみ)
「何?お菓子とか?(笑)」

(木村要)
「全然違います先輩!食い意地張るのは、
もう止めたほうがいいですよ!(笑)」

(天野ひとみ)
「大きなお世話よ!(怒)」

(坂本涼太)
「それよりお土産って何だ?」

木村は、
制服のいくつかのポケットから、
小さな古びた時計を、
全部で6個出した。

(木村要)
「これがお土産です。」

(天野ひとみ)
「何よ!
壊れてて動かないじゃないのよ!(怒)」

(石塚めぐみ)
「あら!本当。でも、どこからのお土産?」

(木村要)
「それは言えません・・・というか、
わかりません。さっき起きたら、
ポケットにこの時計を見つけたんです。
それから、この本も、お土産です。」

メンバーのリーダーである坂本涼太が、
本を調べると、地図とあるという。

(坂本涼太)
「この地図は何だ?木村!」

すると木村は、突然記憶喪失から戻ったように、
勢いよく話し出した。

(木村要)
「この地図は宝ありかを書いたものです。
この地図と本に書かれた事と、
お土産の古時計と、
この時計部屋で一番古い時計を使って、
あの奥のドアから、
宝探しの旅に出れるそうなんです。」

(坂本涼太)
「宝探しって、どんな宝を探しに行くんだよ!」

(木村要)
「それは時間です。
僕が話した人は、時とも話していました。」

(古川弘樹)
「でも、時間や時を探してどうするんだ?」

(木村要)
「それは、僕にはわかりません。
でも、僕が話した人は、こう言いました。
〈もし、本当に時を探したければ、
その時に宝の時の意味を教えてあげる!〉と。」

メンバーみんな無言になり、
木村が話した内容を考えた。

(坂本涼太)
「その時の宝探しの旅には、
どうしたら行ける?」

坂本がリーダーとして、
どんな危険があるのかと、
また木村の話の信憑性を探るべく、
質問をすると木村が答えた。

(木村要)
「この部屋の一番古い時計が、
24時間を刻むまでの間に、
僕らは、それぞれが持つ小さな古い時計が導く、
時の宝の場所を探して、ここに戻ってくる。
地図は、時の宝があるという国のもの。
その他本には、その国の言葉や習慣が書いてあり、
日本言えば旅のガイドブックみたいなもの。」

(井上鏡子)
「もし、この部屋の古い時計が、
24時間の時を過ぎたら?」

(木村要)
「もう2度とこの部屋に戻ってこれない。」

みんな一応に興味を示したが、
宝と言われる「時」の意味がわからず、
この日の作業を終え、それぞれ帰宅した。

その翌日、
木村は冒険のフル装備で、
誰もがいない学校へやって来た。
もちろん、他のメンバーにも内緒で。

木村が時計部屋のドアのカギを開けるて、
部屋に入ると、部屋の奥のドアへ。

部屋の古い時計を12時にセットすると、
自分の小さな時計とガイドブックを持ち、
宝探しのドアのドアノブに手をかけた。

(石塚めぐみ)
「要!ひとりで何してるの!(怒)」

突然の大声に木村は、吹っ飛ぶように倒れた。

(木村要)
「先輩~!脅かさないでくださ~い!(涙)」

木村が石塚先輩を見上げると、
その周りに他のメンバー全員がいた。

おそらく、
ひとりで抜け駆けするだろうという
みんなの期待どおりに、木村は動き、
まんまとモニタリングされたのだ。

(坂本涼太)
「お前!ひとりで行くな!
俺たち仲間だろう!」

(古川弘樹)
「そうですよ!もしひとりで行って何かあったら、
助けてもあげられないじゃないですか。」

そうして、
『THE TIME』チームは、
時の宝を探しに、
24時間の旅に出ることになった。


時計部屋の外に、
仕事に来た校長先生が通りかかると、
時計部屋のドアのガラスから、
強烈な光がもれた。

すると校長先生は笑顔になった。

「ついに見つけたか!(笑)
どんな冒険と宝を持って帰って来るのか。
楽しみだ。そういえば、
あの娘は元気にしているだろうか?」

さて、
冒険に出発した『THE TIME』チームは、
見渡す限りの砂漠の砂の上に、
みんな倒れていた。

(木村要)
「ちょっと、みんな!
見てください!起きてください!」

木村の声で起きるメンバーたちの目の前に、

「はじめまして、
ようこそ時の旅へ!(笑)」

不敵に笑う怪しい人の案内で、
彼らの旅が本当にスタート。


時計部屋の古い時計が24時間の時を刻み終える頃、
ホコリまみれの『THE TIME』チームが、
ゴロゴロゴロ~と転がるように、
部屋に無事に戻って来た。

一体彼らに、何があったのか?
そして、
彼らは、
時の宝を手に入れることができたのか?

時の宝の正体とは・・・。


(制作日 2021.8.18(水))
※この物語は、フィクションです。

今日のお話は、
今日8月18日が「約束の日」ということから、
参考曲を探して、考えたお話です。

参考曲は、
CHAGE&ASKA『THE TIME』
~~~~~
どんな大事なことも どんな馬鹿げたことも
どんどん素敵なことも どんな皮肉なことも
今日のいま このためといえる きっと言える
~~~~~
以上が歌詞の一部。

約束の日を目指して奮闘する、
中学生たちを設定してみました。

「僕らの7日間戦争」を、
この設定で参考にしました。

時の宝探しの旅に出たお話は、
書いていませんが、
無事におそらく戻っただろう
という所まで書いてみました。

これで何が言いたいかと言われると、
難しいですが、
一つ言えるとしたら、
やっぱり10代って、
とっても貴重な時間だったということでしょうか。

部活にしても勉強にしても、
自分のやりたいことに邁進できる毎日が、
有限だからこそ、一生懸命になれる。
その頑張る姿を見て、
例えば甲子園で、大人たちが感動する。

10代を青春というのは違う、
もっとふさわしい言葉がありそうですが、
今は青春として話すと、
かけがえのない青春の時間だったんだなって思います。

ただし、
今は新しい言葉として「ヤングケアラー」があるように、
自分の青春を謳歌できない人もいることを、
忘れず、気づいてほしいと思います。
皆が等しく、
10代だからできる体験をしてほしいと、
切に思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『THE TIME』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 井上鑑
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『RED HILL』
(1992.10.10発売)

YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
☆『THE TIME』ライブ映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=NpGYTlNUdGw

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