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遠距離恋愛?それとも別れ?

時は6月。

私は沖縄にいた。また沖縄にいた。ちなみに仕事はフリーライターである。だからこそこんな自由が許されるのだ。

先月から付き合うことになったアメリカ人の彼に突然の異動を聞かされた私は動揺していた。動揺しまくっていたわけだ。

ああ、やっぱり全てが上手く行きすぎているから妙だと思ったらこんなオチかと思った。

彼からはメッセージで知らされた。その大変な事実を。「アメリカに異動になった」と。

私の頭の中にはもう筋書きが出来ていた。誠実かつ、真面目で現実的な彼だからこそ、きっとこう言われると思った。

「やっぱり現実的に考えて無理だと思うから、やっぱり君とのことはここで終わりにするしかない」と。

だってアメリカって遠いし、まあ遠距離恋愛って言っても本当に遠すぎる。きっとこう言うだろうと思って、既に泣きそうだった。

その夜はもともと会う予定だったので、私は暗い気持ちで彼に会いに行った。

何とも言えない彼の表情を見て、私はもう悟っていた。「別れる」と。だからまあ、彼の言い分を聞いて、それを受け入れるしかないなと思っていた。だって遠距離なんて、お互いに強い気持ちと信念がない限りアメリカと日本で上手く行くはずはないことくらいわかっていたから。

彼と話していたら、なんかいきなり彼から「君は本当に僕にとってパーフェクトだよ」と言われた。それもちょっと笑顔で。嬉しかったけど悲しかった。そして悲しくなってムカついてきた。そして私はつい、こう言ってしまった。

「そんなにパーフェクトだとか思うのに、これでもう終わりなんだね。私を失ってしまうことはあなたにとってその程度の痛手だったのよ」と。

ここから茶番が始まるのである。彼は目を丸くして私を見た。「え?」と。でこう言ったのである。

「待って待って。あのさ、僕は君のことを失ったりしないし、君とのことをこれで終わりにするつもりはないよ?」と。

私にしてみればまさに、「は?」である。そう言われてみれば何で思い込んでいたんだろう。彼が別れるという選択肢を選ぶことを思い込んで勝手に悲しんでいたのは私だったのだ。

「え?じゃあ遠距離で続ける気があるってこと?」と言いながら私は情けなくも、既に泣いていた。

彼は「君がそれでもいいって思ってくれると信じてたし、僕の方はそのつもりだったよ。もしそんな風に思わせてしまってたんだったら、僕が悪かったね、はっきり言うべきだったよ。初めから別れる気なんてなかったんだから」と私に言った。

こんなに嬉しかったことはそうそうここ最近では私の人生で起こっていなかったと思うくらいに嬉しかった。私は安堵感でまだめそめそしていた。

「だって、You are my girlだよ?忘れたの?」と彼は言って私を抱きしめてくれた。この日はちなみに、風が猛烈に強くて、沖縄の海風に吹き飛ばされそうになりながら、こんなに大切な会話をしていたことを覚えている。

というわけで、私は何とか首の皮一枚、彼との関係をつなぎとめたのである。というよりも、そもそも何の危機も最初から存在していなかった。

ただ、アメリカという果てしない遠い国に行ってしまう彼と、遠距離になるということだけは変わらない事実だったし、このことはやっぱり悲しかった。

なんとなく、彼とだったらどうにかなるのかもしれないと、不思議だけどそう思う自分もいた。

沖縄には3週間ほどとどまり、私たちは日本で残された貴重な期間をたくさん一緒に過ごすことが出来た。

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