⑱フラッシュバック『ついてくる父の影』

就活をしながら

アルバイトをした。

たくさんした。

ファミレス

パーティースタッフ
(結婚式場の配膳係や宴会場、
   立席パーティーのコンパニオンなど。)

子供服屋さん

そのうち

正社員は

諦めた。

ウェイトレスは

沢山いるけど

個人プレイの

様なもので

ただ、

自分の仕事を

すればよかったから

比較的

楽だった。

しかし

子供服屋さんは

そうはいかず、

人間関係に

苦労した。


唯一

ガムシャラに

頑張れば

認めて貰えた。

でもそれを

なぜか

よく思わない人もいた。

店長だった。

店長は

関西人で

私には

言葉が

少し

キツかった。

慣れれば

大丈夫になるかな

思っていたけど

やっぱりダメで

店長に

話しかけられると

ビクッとして

レジ打ちなどを

見られてると

萎縮して

間違えてしまう。

売上のノルマも

私にだけ

大きかった。

ちゃんと

接客をしているか

チラチラ

見られてるのが

分かると

言葉が

出なくなる事も

あった。

この感覚

あの時と一緒だ。


父のDVを

見て見ぬふりしてる時の

体が

硬直する感じ。

息が

しにくくなる感じ。


仕事だから

態度に出す訳には

いかない。

店長は

指導のつもりだった

でも

私には

恐怖でしかなかった。

店長は

関西弁で

普通に

話してる。

それに

怯えるのは

失礼だ

と思えば思うほど

萎縮する自分に

仕事内容以上に

疲れてしまった。


毎朝

玄関先で

嗚咽が

止まらなくなる

頭が痛くなって

鎮痛剤が

手放せなかった。

お店では

店長の顔を

なるべく

見ないようにした。

店長に

怒られないように

目を付けられないように

用事を頼まれないように。


毎日毎日

仕事が終わると

お腹と頭が痛くて

帰りの電車は

出入口に掴まって

直ぐに降りれるようにして

乗った。


もう限界だと

思ったのは

朝の電車で

涙が出てしまい

それを

同じお店の

スタッフに見られ

それを

店長に話された時

店長は

「何泣いてんだ。恥ずかしい。
大人だろ。
ハハハ!
前から思ってたけど、
俺の事嫌いだろ。嫌なら辞めていい。
嫌々されても迷惑だ。」
(を関西弁で。)

父を思い出した。

フラッシュバック。


店長が言ってる事は

何も間違ってない。

泣いた

私が悪い。

弱い

私が悪い。

でも

ここにいると

いつも

父を思い出してしまう

そんな

環境に

耐えられなくなった。


辞めた事を

姉に

言いづらくて

メールで

知らせた。


姉は

『じゃあ掃除と洗濯しといて』

と言って

甥っ子を連れて

仕事に行った。


後で姉に聞くと

土日

私が仕事で

姉が休みの日

私の目が

おかしかったらしい。

玄関で

嗚咽してるのも

薬を飲んで

出て行くのも

見ていたらしい。

帰って来た

私の背中が

有り得ないくらい

曲がっていて

甥と遊んでても

目は

笑っていなかった

らしい。


子供服屋さんを

辞めたあと

中々

バイト先が

見つからず

引きこもり状態だった。

甥の迎えに行ったり

ご飯を作ったり

姉が

仕事から

帰って来るまで

甥の相手をしていた。

甥に

相手をしてもらって

いたのかもしれない。


1年が経った時

高校から

付き合っていた

彼氏と別れた。

私が

自己中心的

だという理由で。

子供服の仕事を辞めて

単発的に

コンパニオンの

仕事をしている

と知らせると

「気持ち悪い」

と言われた。

変な仕事じゃない

式場にも

行ってる事を

話しても

コンパニオンと

聞いてしまった

彼は

「そういうの無理」

という事だった。

仕方がない。

私が悪い。


違う子供服さんで

バイトをした。

そこの店長もまた

関西の人だった。

本社が関西なのだ。

面接は違う人だったから

分からなかった。

やってしまった…

と思ったけど

そこは

パートの年配の方が

多くて

気持ち的に

少し楽だった。

皆さん優しかった。

子供の様に

扱ってくれた。

関西人の店長も

物腰の柔らかい人だった。

ただ、

言葉にはやっぱり

慣れなかった。


ここでの

私の壁

お客さんだった。


ベビーカーやチャイルドシートなど

少し勉強しなければ

分からない商品を

お客様に聞かれた時。

研修で

勉強した事

以外の事を聞かれた。

座り心地やアレルギーについて。

体重制限があるから

実際に座って

調べる事は出来ず、

手を当てて

感じてもらうしかなかった。

アレルギーも

病院で聞いてくれ

と思った。


大切な子供の為に

血眼になって

いい物を探す

親御さん。

祖父母さん。


戸惑った。


私は

分からない時は

先輩スタッフに

聞いてくるか

その場を

お任せしていた。

ある時

詳しい者に変わります。

と伝えて

その場を待ってもらおうとすると、

「お前に聞いてるんだよ!
ちゃんと答えろ!
お前が答えろ!逃げるなよおい!」

と怒鳴られた。

何が起こったか

分からず

動けなかった。

その方の奥さんが

「いいから。そんな声出さないで」

と言った時

また

フラッシュバックした。

お客さんは

帰って行った。


暫く

硬直したまま

息が苦しくなり

過呼吸になった。


私の接客も

悪い所があったのかも

しれない。

気に触る事を

言ってしまった

のかもしれない。

勉強不足だった。


そこでの仕事は

楽しかった。

可愛い子供達と

沢山会った。

幸せそうに

お腹を摩る

妊婦さん。


私にも

そんな日が

来るのかな。

早く来るといいな

思っていた。


ファミレスの時の

バイト仲間と

飲み屋さんに行った時

今の旦那と出会った。


良かったのか

悪かったのか

でも、

姉に迷惑を

かけたくなかったから

出会ってすぐ

同棲をする事にした。

義母さんがいる

旦那の実家で。













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