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今こそ聴いてほしいスキマスイッチ

こんにちは。暇じゃない暇人です。
今更ながらnoteのアカウントを作ってみました。よろしくお願いします!
最初の記事では僕が音楽に触れるきっかけになったユニット・スキマスイッチについて書こうと思います。

暇じゃない暇人とスキマスイッチ

彼らの魅力等について語る前に、僕がスキマスイッチにハマった時の話をさせてください。興味のない人は読み飛ばしてもらって構いません。
最初に彼らのことを認知したのは2016年、僕が小学5年生の頃です。当時ポケモン大好きキッズだった僕は (今でもポケモンは好きですが) 毎週金曜日のアニメを欠かさず見ていました。その時ポケモンの後に放送されていたのが「NARUTO」のアニメで、そのオープニングに起用されていたのがスキマスイッチのこの曲でした。そこで「いい曲だな~」と小学生ながらに感じたのが出会いだったと思います。

その後同級生の一人が彼らの音楽をよく聴くと知り、折角だから色々聴いてみようと近所のTSUTAYAにベスト盤を借りに行って、「奏」や「全力少年」といった名曲と出会うことになります。あまり意識的に音楽を聴いていなかった僕にとって一組のアーティストにハマるというのは初めての経験でした。そしてなけなしの小遣いを握りしめブックオフに足を運んでオリジナルアルバムも購入し、いちファンとして彼らにのめり込むようになっていった、という感じです。その後は現在Twitterなどで投稿しているように様々な音楽に手を出すようになっていきましたが、彼らの音楽は自分の中では原点であり未だに特別な場所に位置しています。今回の記事はそんな現役リスナーの僕が彼らの魅力についていろいろと語る、という旨のものです。

ただのJ-POPで留まらない彼らの音楽

世間的には「奏」などのバラードや「全力少年」などの爽やかなポップソングを生み出すユニットとして捉えられがちな彼ら。勿論そのイメージは間違っていないし、その方面でも名曲は多数ありますが、彼らがその方向性しか持ち合わせていないと思ったら大間違い!スキマスイッチは王道のポップソングメイカーであるように見せかけて、サラッと聴き流せる爽やかなポップスを徹底した緻密な設計で作り込む、想像以上に職人的なこだわりを持つJ-POPユニットなんです。

有名な例として挙げられるのがこの曲。ドラえもんの映画主題歌として耳にした人も多いと思います。ピー助との別れのシーンは感動でした…。そんなこの曲ですが、Aメロ→Bメロ→サビで転調、というまあよくある構成のなか、転調したまま2番のAメロに突入するというイレギュラーな手法を用いた一曲として知られています。Official髭男dismの藤原聡がこの曲に影響を受けて「発明家」という曲を書いたというエピソードもあります。

また意外と知られていないのが、彼らはデビューから一貫して作詞・作曲は勿論、楽曲のアレンジ・プロデュースも2人で行っている、ということ。外部のプロデューサーを迎えず (後述の「さみしくとも明日を待つ」など一部例外もあり) 2人の持つ手札で勝負するからこそ、様々なアーティストからの影響をアレンジ面で直接アウトプットできる、という利点もあり、それらがスキマ独自の色として特徴的な輝きを放っています。上で挙げた「ユリーカ」は個人的スキマベストソングの1つであり、重厚感のあるバンドサウンドと疾走感のある突き抜けるようなメロディーが絡み合う名曲。「全力少年」にも劣らない特大アンセムです。

歌詞に目を向けても彼らの遊び心が炸裂。w-inds.に楽曲提供、その後セルフカバーしたこの曲もスキマらしい言葉選びの巧みさが大いに感じられます。

冷静に照らし合わせてみれば君と僕は正反対で
数字だとしたら6と9のようなもんだな
キュウに一人にされた居間では
食べ散らかしたインスタントの空っぽ容器と
ロクでもない僕が残った

正反対の例として提示した「6と9」を活用しながら言葉をハメていく特徴的な言葉遊びの気持ち良さが抜群です。この他にも彼らの楽曲には最後の1フレーズで今までの展開をガラッとひっくり返すような詞が見られたりと、その歌詞を読む楽しさを存分に味わえるアーティストであることは間違いないと思います。

現代J-POP界におけるスキマスイッチの影響

Official髭男dismやYOASOBIを筆頭に近年稀にみる豊かさを見せている2020年代のJ-POPシーン。その環境に大きな影響を与えた存在としてよく名前を挙げられるのは椎名林檎、相対性理論、BUMP OF CHICKEN、ニコニコ動画などからのボカロシーンなどですが、現代の邦楽ポップスにスキマスイッチは確実に大きな影響を与えています。オフコースやミスチルなどから受け継がれた日本人好みの爽やかなメロディーの鍵盤ポップスで盤石のクオリティを見せながら、ファンク的なテイストも入れ込むスタイルは現代のJ-POP、特にバンド形態でのサウンドにおいて直接的な源流になっているのではないかと思います。なんせデビューシングル「view」で既にその方向性を打ち出していたわけですし。

そして上の写真で挙げたOfficial髭男dism、YOASOBI、マカロニえんぴつ、藤井風の4組は全員スキマスイッチからの影響を公言しています。髭男の藤原聡は歌詞を重視するきっかけとして彼らの名前を挙げ、マカロニえんぴつのはっとりは「自身のメロディに泣きメロポイントが欲しくなるのはスキマスイッチイズム」と語っています。他にも透明感のある歌声で注目を集めるシンガー・Uru、ループペダルを用いた弾き語りパフォーマンスが人気のAnlyなど多くのアーティストからリスペクトを受けています。現代を代表するアーティストであり評価筋の高さも併せ持つ面々からの支持が熱い今こそが彼らの再評価に絶好のタイミングだ、というわけです。

全アルバムについて解説

彼らは20年というキャリアの中で根本はブレずとも様々な表現に挑戦してきたアーティストです。そんな彼らの魅力が凝縮されているのはやっぱりアルバム。彼らが大きな影響を受けたMr.Childrenはアルバム曲で本性を現す傾向がありますが、その特性も受け継いでいるのかアルバムでは想像以上に攻撃的な面も顔を覗かせます。ここでは彼らがリリースした9枚のオリジナルアルバムについて簡単に解説していこうと思います。いい意味で想像を裏切られるスキマワールドが広がっているはずです。

1st Album「夏雲ノイズ」(2004)

記念すべき1stアルバム。1曲目「螺旋」のピアノリフの時点でほとばしる才能が感じられる。今作について特徴的なのはエレキギターを一切使わずにサウンドが組まれている点で、暖かみのあるオーガニックなサウンドが趣向されている。今や代表曲となった「奏」もこのアルバムに収録。この「奏」はドラムが打ち込みでのレコーディング、収録曲の「種を蒔く人」はペダルスティール・ギター (スピッツ「楓」でもペダルスティールギターを弾いた田村玄一が担当) とベース以外は全て打ち込みで録音されている。もともとインディーズ時代に宅録ユニットとして活動していたことから打ち込みを生演奏に聴かせることにこだわっていた、というエピソードもある通り、決して勢い任せではなく緻密に組み込むポップセンスをこの時点で既に確立していたのが感じられる名盤。

<有名な曲>
「ふれて未来を」


2nd Album「空創クリップ」(2005)

「奏」のスマッシュヒット、「全力少年」の大ヒットで一躍国民的アーティストに躍り出た彼らが放った2ndアルバム。しかしながらアルバムとしては前作よりも落ち着いた路線となり、かなり堅実に作り込んだ一作となった。その影響もあっていささかインパクトに欠ける一枚となったのも事実だが、その分収録曲は粒揃い。鍵盤担当の常田真太郎が影響を受けたバンドとして名前を挙げたGRAPEVINEをバックバンドと共同アレンジに迎えた重厚なミディアムロックチューン「さみしくとも明日を待つ」、山弦の二人によるアコギ演奏の臨場感が抜群な「目が覚めて」など等身大のポップソングとして一級品の完成度を見せつけた。今作からエレキギターを解禁するなどサウンドの幅が広がったが、前作のオーガニック感に添える形での導入となり、初期スキマサウンドの核が確立された。

<有名な曲>
「飲みに来ないか」


3rd Album「夕風ブレンド」(2006)

初期スキマの集大成となった3rdアルバム。「ボクノート」「ガラナ」などのヒットシングルも収録され、相当なプレッシャーの中制作されたと本人が明かしているが、見事にその期待に応えるがの如く高クオリティの楽曲がズラリ。ファン投票で1位となった名バラード「藍」、ブラスサウンドも印象的なファンクナンバー「アーセンの憂鬱」など人気曲が並んでいる。ピアノリフが過去最高級に強いのも特徴で、「ズラチナルーカ」「糸ノ意図」は一度は聴いてほしい名曲。個人的に初期スキマの最高傑作である「アカツキの詩」もこのアルバムに収められている。ストリングスのアレンジも巧みで、小袋成彬に「J-POP史上最高のオーケストレーションの一つ」と言わしめた、2000年代邦楽史に燦然と輝く大傑作。

<有名な曲>
「アカツキの詩」


4th Album「ナユタとフカシギ」(2009)

3枚のアルバムをリリースした後彼らは1年間の活動休止を挟む。その1年間でお互いがソロ活動を行い、再びユニットとして活動を再開して放った4枚目。1曲目「双星プロローグ」の時点で過去3枚とは明らかに違うモードに突入しているのが一聴ですぐわかる。ソロ活動を経て2人のスキマスイッチというユニットの捉え方に相違があったらしく、とにかくバチバチとした関係性の中作り上げられた。そのせいか楽曲もかなり攻めたアプローチのものが多くごった煮感満載で、James Taylor的なカントリーナンバー「ムーンライトで行こう」、宇宙の遥か彼方まで突き抜けるような壮大なアレンジが特徴の「SL9」など後にも先にもない空気感が漂う異色作。個人的にも彼らのアルバムでこれが一番好きです。アニメ「獣の奏者 エリン」の主題歌として人気の楽曲「雫」も収録。

<有名な曲>
「ゴールデンタイムラバー」


5th Album「musium」(2011)

ここからスキマスイッチは覚醒します。前作で大幅にアレンジの幅を広めて遊び心の豊富な職人的ミュージシャンとして歩み始めた彼らが作り上げた5枚目。とにかくバラエティ豊かな楽曲が圧倒的なクオリティで揃っているが、それがポップという化けの皮を被るようになったのが本作で、聴き心地の良さと新しい感覚のアプローチ、徹底的なこだわりが両立したスキマ流のJ-POPを体現する金字塔的傑作。先行シングル「アイスクリーム シンドローム」「さいごのひ」「晴ときどき曇」がどれもキャリアハイレベルの名曲なのに加えてグルーヴィなロックナンバー「ソングライアー」、ジャムセッション的な趣の「スモーキンレイニーブルー」など、スキマのパブリックイメージを大きく逸脱しながらポップさを持ち合わせた楽曲が並んだ一枚。

<有名な曲>
「アイスクリーム シンドローム」


6th Album「スキマスイッチ」(2014)

デビュー10周年を経て徐々にベテランとしての道を歩みだした彼らによる6枚目。アルバムのクオリティ的には前作「musium」と今作が全盛期だと思います。今作は全体的にシックな色合いで統一された一枚。そのカラー感覚と呼応するように音像も洗練され、脈々と受け継がれてきた王道ポップの感触とモダンなイメージが組み合わさった捨て曲なし全10曲のポップソング集となっている。これまでのスキマにはなかった衝動的なロックナンバー「ゲノム」、ファン人気も高い名バラード「僕と傘と日曜日」など、前作の楽曲の方向性を更に突き詰めていて、楽曲単位のクオリティが尋常じゃない曲ばかり。先行シングル「星のうつわ」のストリングスアレンジは流石のもの。アレンジを凝りに凝ることによってメロディの変態性が増してきたのもこの時期あたりからのスキマの特徴です。

<有名な曲>
「星のうつわ」


7th Album「新空間アルゴリズム」(2018)

アルバムタイトルの方向性が示す通り「原点回帰」をモットーに制作された7枚目。僕が初めてリアルタイムで聴いたスキマのアルバムです。前2作の徹底的にこだわり抜いた職人的ポップというよりかは肩の力を抜いた心地良いポップソングなのが特徴的で、その分彼らの遊び心が見えやすい一枚になっている。ドラマ「おっさんずラブ」の主題歌に起用され久々のヒットとなった「Revival」、壮大なスケープで描かれる名曲「リアライズ」など今作も名曲がズラリ。特に注目なのが先行シングル「ミスターカイト」で、今までの彼らにはなかった組曲的な構成。語り調で綴られた前半を経て、果てしなく広がっていく爆発的な盛り上がりのサビ。自分たちをカイトに例えて鼓舞する歌詞も凄まじいスピードで飛ばしていく。もし聴いたことがない人は絶対に聴いた方がいいです。2010年代のスキマが辿り着いた境地は異次元のクオリティとクリエイティビティだった。

<有名な曲>
「ミスターカイト」


8th Album「Hot Milk」(2021)

前作から3年振りとなるアルバムはEPサイズの2枚同時リリース。今作は「今求められているもの」をテーマに、タイアップ曲満載の王道ポップソングを収録。その影響で躍動感満載の一枚となっており、令和版「全力少年」として制作された「OverDriver」、これぞスキマな爽やかなポップチューン「青春」など流石の安心感。その楽曲群の中でもフォーク的な路線を盛り込んだ「東京」、哀愁漂うミディアムナンバー「されど愛しき人生」など冒険心を忘れない曲作りも彼ららしい。後述する「Bitter Coffee」と合わせて完成するコンセプトアルバムとしてリリースされたが、2つ組み合わせていたら間違いなく最高傑作になっていたと思う。

<有名な曲>
「されど愛しき人生」


9th Album「Bitter Coffee」(2021)

前述した「Hot Milk」と同時リリースされた9thアルバム。こちらは「今メンバーが作りたいもの」をテーマに、彼らの魅力であるシニカルな世界観や挑戦的な楽曲を中心に収録。彼らが積極的に取り入れているファンクテイストの「I-T-A-Z-U-R-A」、エネルギッシュなロックサウンドの「G.A.M.E.」などこれまでアルバム内で展開してきた幅広さをこれでもかと演出している。シティポップ的な感触の「フォークで恋して」など80~90年代のサウンド感を意識している楽曲が多く、リバイバルと現代的なポップ感覚を癒合させて独自の色に仕立て上げる手際は流石の手腕。ミディアムナンバーもボコーダーを導入した静と動の対比が印象的な「SINK」など新機軸を打ち出していて、スキマの神髄を凝縮したような濃厚な一枚。

<有名な曲>
「フォークで恋して」


本当はスキマスイッチの名曲たちを日本を代表するミュージシャンたちがリアレンジする、という企画盤にして大傑作「re:Action」や大量にリリースされているライブ盤など紹介したい作品が他にも沢山あるんですが、それはまたの機会に…。


おわりに

現在のスキマスイッチはドラマ「おっさんずラブ」新シーズンの主題歌として新曲「Lovin' Song」を書き下ろし、春には自身初のトリビュートアルバム、7月には待望の10枚目となるオリジナルアルバムのリリースを発表しています。そして同じく7月には小田和正、スピッツ、奥田民生など豪華アーティストを迎えた自身初の主催フェス「スキマフェス」が開催されます。この新曲「Lovin' Song」がこれまた名曲。90年代のドラマソングを意識した王道バラードソングに仕上がっていて、今の彼らのモードが90'sのリバイバルであることを感じさせます。

彼らを聴いて育った世代が次々とシーンで革命的な名曲をリリースし、彼ら本人も全盛期を更新し続けるかのように新曲を生み出し続けている今こそが彼らの再評価の絶好のチャンスだと僕は考えています。この記事で少しでも彼らに興味を持っていただけたら、ぜひ彼らの作品を聴いて新たな魅力を発見してみてほしいと思います。

最後に「暇人選スキマスイッチ」と題して、スキマの楽曲の中でも遊び心に溢れたもの、特に名曲だと感じたものを15曲選んだプレイリストを置いておきます。The Beatles「Free As A Bird」のオマージュ (というかほぼそのまんま) となっている「夕凪」がイチオシです。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

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