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サクッと解説インドネシアスタートアップ2019

最近また意見を求められたり、議論することが多くなってきたインドネシアのスタートアップ業界。調べてまとめたことを気晴らしにサクッと解説したいと思います。
サクッと。

まずは市場概要。MIKTI (Indonesia Digital Creative Industry Community) という組織が昨年12月にまとめたレポートによると、インドネシアのスタートアップは992社いるそうです。startupranking.comという別組織がまとめたデータでは、約2000社となってますので、ざっくり1000-2000社はいるようなイメージですかね。ちなみに日本はstartupranking.comによると約500でした。人口対比でインドネシアの方が日本の約2倍スタートアップに挑戦しているという計算になりますね。

ユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)は2018年に1社加わって4社となりました。インドネシアのユニコーンについては後ほど掘ります。

なぜインドネシアが熱いのか。日本は今猛暑でジャカルタより暑いみたいですけど。3つのワードで説明すると、「多い」「若い」「ネットインフラ」です。

続きまして、起業家、スタートアップの特徴。
インドネシアは東西5000kmの18000からなる島国ですが、起業家の出身地は首都ジャカルタだけでなく島々に分かれているのに驚きました。
カテゴリー的には、ECが一番多くて、フィンテック、ゲームと続きます。

1番多いECを見てみましょう。
ここ2-3年大きな変化は無い印象です。
インドネシアの携帯キャリアが関わっていた「Elevenia」とか「Blanja.com」。500億円投入するぞーっと言って出てきた財閥系の「Matahari.com」などいくつか後退していったのと、ここ数年Shopeeが勢いあるなという感じ。Shopeeは動画広告に積極的で、ショッピピピピッピ♪という音色が耳に残ります。

インターネット業界で一番注目されている市場ですが、マネタイズが遅れており(あるいは遅らせており)、体力勝負の我慢大会の様相です。

続いて、インドネシアのユニコーン企業。
Gojek、Tokopedia、Traveloka、Bukalapakの4社です。
評価額最大のGojekはデカコーン(評価額100億ドル以上の未上場企業)と呼ばれており、世界の未上場企業で見ても評価額トップ10にギリギリ入るぐらいです。トップ10に入る東南アジア企業は、Gojekと同業界のGrabだけです。インドネシアだけで無く、東南アジアの期待の星Gojek。

この4社の共通点ですが、筆者は「巨大市場のデジタル化」と考えています。

Gojekはインドネシアに昔からあったOjek(オジェック)というバイクタクシーに注目しました。昔は(今も残ってはいますが)、オジェックドライバーと交渉して、「どこどこ行きたい」「15000ルピア 」とかそんなやり取りで、いわゆる白タクみたいな感じです。私も洪水の時に仕方なく乗ったことがあります。街を歩けばオジェック乗り場にあたるという言葉がありそうなぐらいどこでもありました(今もあります)。よって、市場もそこそこあったはずです。Gojekはそんなオジェックと乗車希望者をアプリで繋げたのでした。そしてそこからさらにGojekが凄いのが、人を運ぶだけで無く、お届け物や食べ物、マッサージ師や清掃員まで様々な「運ぶ市場」を開拓していきました。本来は、マッサージ市場やクリーニング市場なんて個別の市場です。市場の捉え方のお手本のような戦略で、巨大市場を作り上げました。

TokopediaとBukalapakの狙う市場も小売という巨大市場のデジタル化です。
今までは近所の人だけに販売してい電気屋さんや服屋さんが、インターネットを通して集客、販売ができるようになりました。

Travelokaは航空チケット市場のデジタル化です。島国のインドネシアでは、飛行機は非常に重要です。飛行機チケットだけでなく、電車やホテルなども予約できるようなり、インドネシアNo.1オンライントラベルエージェンシーとしてのポジションを確立しています。

スタートアップのカテゴリでECに続くのがフィンテックでしたね。
ここでは決済サービスをサクッと紹介します。

インドネシアではGo-PayとOVOの2強です。競合、対抗する企業群が出てきてはいますが、2強です。筆者が思うに、飛び抜けた理由は2点、「決済量」と「スピード」です。2強とも、市民の足、バイクタクシーを抑えているという基盤があります。Go-PayはGojekで使えますし、OVOはGrabで使えます。それを基盤に、電気代、携帯代、コンビニ、スーパー、市民が必要な決済ポイントを圧倒的スピードでカバーしていきました。国営企業が束になって、LinkAjaを作りましたが、時既に遅しかなと思われます。やはりスタートアップのスピードにかなわない。

あえて弱点をあげるとすると、Go-PayもOVOも基本的にQRか電話番号を使うので、決済スピードが速いとは言えない。日本のスイカやイコカみたいにペッてできないので、もしTravelokaがTraPayとか言ってスピード重視の交通機関やイベントチケット分野で、スイカみたいなのができたら市場がひっくり返るかも…しれない。知らんけど。

終盤です。現地からみるインドネシアの注目スタートアップということで、筆者の個人的な好みで4つあげました。

調べているうちに気づいたのですが、BrideStoryがつい最近Tokopediaに売却されていたのです。BrideStoryだけでは無く、筆者が個人的に注目していたスタートアップが最近結構売却されてるんですよね。先ほど紹介したユニコーンですが、それぞれ最近数千億円とか調達していて、インドネシアでどこに使い道あるねーんという疑問が解消されました。企業買収とか、海外進出とかじゃないと使えませんよね。億千万。億千万。

この4社の共通点ですが、筆者は「ニッチ市場のデジタル化」と考えています。

視線はニッチ市場です。SociaBuzzは広告主とインフルエンサーをデジタルで繋げました。BrideStoryはカップルと結婚式場や結婚関連サービスをデジタルを繋げました。

ニッチ市場は色とりどりです。中にはインドネシアらしいスタートアップもあります。例えばHalodoc。実は筆者が最近お世話になった医療相談アプリです。

ある日、朝起きたら首に大きなひっかき傷のようなものができていて、赤く腫れていました。触ると非常に痛い。
インドネシア人の友達に、スマホで写真を撮って送ってみたのですが、その友達が可哀想に思って、筆者が送った写真を使ってHalodocで医者に相談したようでした。相談料は25000Rp(約200円)とか50000Rp(約400円)とか医者によって違います。Halodocのチャットでの相談結果はトムキャット(通称やけど虫)とのことでした。そこからHalodocを通して薬局から医師の指定された薬を購入し、Gojekが自分のところまで運んでくれました。その薬をつけるとすぐ回復し、非常に助かりました。チャットで解決って凄い。

Warung Pintarもインドネシアらしいサービスです。言い方を変えるとスマートキオスクでしょうか。
インドネシアにはちっちゃな伝統的なキオスクがあって、食べ物や飲み物、シャンプー、歯ブラシなどの日用品が買えます。Warung Pintarはそのキオスクのデジタル化です。デザインやオペレーションを均一化し、Wifiや電子決済などネット環境を提供します。それによって、受発注が効率化され、集客力も上がって、店の収益も上がります。その収益の一部を徴収するだけで無く、デジタル化によって集まったデータを生かすこともできます。

最後のページです。
本日紹介したユニコーン企業の共通点「巨大市場のデジタル化」、注目スタートアップの共通点「ニッチ市場のデジタル化」。まとめると、既存の大小様々な市場をデジタル化することが、成功の鍵になるのではないかと言うことです。既存というのがキーポイントです。インドネシアでは新たに市場を作るのは非常に時間がかかります。

今までたくさんの企業がインドネシアに進出しましたが、特に日系企業においては、良いものを持ってくるだけで売れるという考えが強すぎると個人的に思っています。よく現地駐在員からお話を聞くのが、商品発表会のようなイベントをホテルやショッピングモールで数百万円から大きなものは1000万円ぐらいかけたりして行い、あとは売れるのを待つ。「いつ売上上がるんだ?」と本社から電話かかってくる。みたいな。

一方、現地スタートアップに関わっている人から聞くのが、慢性的な資金不足です。スタートアップのアイデア発想力や、実行スピードがあっても、実現のための人員確保、開発費用など資金が必要です。

大企業の資金力と品質管理力。スタートアップの発想力と実行力。両輪が上手く合致して回っていけば、インドネシア限らず世界で日系企業が活躍していくのではないかと思う今日この頃です。
もっともっと行けるぜ!ジャパンーン!

以上、サクッと解説「インドネシアのスタートアップ業界」2019でした!
現場からは以上です!

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