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体育的探究「フィジカルラーニング」

毎日、広大な砧公園で駆け回っている。
移動距離10km、歩数にして1万歩。
とはいえ、それ以外の体の動きや面白さも知ってほしい。
すべての目的である「福利の拡張」に向けて―。
そうして生まれた教科が「フィジカルラーニング」です。

フィジカルラーニングとは

公教育には「体育」という教科があります。
そこでのイメージといえば、跳び箱をしたり、バスケットボールをしたり、水泳をしたりする学びではないでしょうか。
ヒロックのフィジカルラーニングでは、特定のスポーツのルールや技能を高めるのではなく、共通する身体の操作や、筋肉や関節といった身体構造について探究的に学ぶことを目的としています。
あわせて、心の動きや身体への影響も探究する。SELですね。
テクノロジーも活用しながら科学的、あるいは医学的に、最先端の身体的学びを取り入れています。

スポーツを創造する

まずは、固くなっているスポーツのイメージをほぐすことから。
ということで、みんなで新しくスポーツをつくろう!と呼びかけました。
以下の2点を条件として挙げました。

  • みんなが楽しめるもの。

  • 勝ち負けや記録がはっきりわかるもの。

大小さまざまなボールやマーカー、巻き尺、ゴール、ケンステップなどを準備しておき、他に必要なものがあれば買うから言ってね、と声をかけました。
子どもたちは、友達と協力しながら場を作ったり、実際に試したりと、まさに探究的に考えていました。
その中で実際にみんなでやったものは50m走とソフトボール投げの2つ。
かなりオーソドックスに落ち着きましたが、初めてやる子も多かったので、ありあわせの道具を工夫して行いました。

50m走では、巻き尺やストップウォッチの使い方やスタートの合図など、自分たちで場を作れるように全体で確認します。
同じくらいの走力の人と走ると記録が上がるよ、と声をかけ、2人1組で計測しました。
まずは自分流に走ってタイムを測る。
次に全体で、速い子の走り方を参考にコツを考える。
どこか一箇所意識して、再度測ってみる。
誰かとの勝負ではなく、前回の自分との勝負であること、コツを考えながら試行錯誤することで記録が上がることを体感しました。
最後はみんなで一斉にダッシュ!
ただし、ここでもポイント。
みんなが一斉にゴールできるタイミングでスタートしてね。
苦手な子は先にスタートし、速い子は遅れてスタートする。
手を抜かず、全力で走る!
ちなみにシェルパは最後にスタートし、全力で追いつきました!

ソフトボール投げも、投げる位置と巻き尺を使って距離が測れるような場をみんなで考えました。
5mごとにケンステップを色分けして置くなど、ナイスアイデアも!
まずは自分流で投げてみる。
次に、重心移動を意識した投げ方の体操(大リーガー養成でも使われているそうです)を教え、みんなで試してみる。
記録が上がることで、フォームの大切さを意識した様子でした。

ちなみに2ヶ月経った今でも、ランチの後の自由時間に走ったり、ボールを投げたりして楽しむ姿があり、改めて知ること・探究することの大切さを感じる日々です。

重心を知る

ソフトボール投げの体験を受けて、重心についてみんなと考えることにしました。
簡単な図を使いながら、重心について説明。
その後は実際に体を動かしてみて、重心を感じてみます。
左右に重心を移す、足を動かさずに前後に重心を倒してみる。
体をコマのように回しながら、重心の場所や移り変わりを探っていきます。
「上下にも重心って変えられるんじゃない?」
子どものつぶやきから、上下も意識してみる。
室内でもできるので、これからも天気の悪いときはやっていこうと思っています。

意識を置く

続いて、意識の置き方について子どもたちと考えます。
人間は、道具を使うことで身体を拡張している。
マジックハンドで届く範囲は広がるし、自転車を漕ぐことで走るより速く移動できます。
そのときに大切となるのが意識の置きどころ。
道具の先に意識をもってくることが重要なんだよ、と話をしました。
今回のレッスンは「剣術」!
自分の指先ではなく、剣先に意識をもってこれるかを体得していきます。
公園に落ちている木の棒を拾って大木と向き合い、上下左右に振りながら、ギリギリかするくらいの場所を調整していく。
その光景はさながら武者修行でしたw

この授業には2つの意図があります。
1つは、道具を使うスポーツや生活共通の技術を向上させること。
バットやラケットを使う競技は、意識の置きどころが上達に欠かせない要素です。
車の運転なども同じですよね。
道具をうまく使うことで、福利が拡張しそうです。
もう1つは、子どもたちの危機管理能力を向上させること。
子どもって、棒が好きですよねw
拾った棒を振り回すと、当然ヒヤッとする場面も起こります。
ここで「木の棒を持っちゃダメ」と制限をかけるのは簡単ですが、同時に学びも失われてしまいそう。
扱い方を知ることで、福利は拡張します。
傘やおもちゃなど、子どもが何かを手にしているシーンは多くあります。
そんなときに、道具の向きや範囲に意識を置けるようになるといいですよね。

2点同時に意識を置く

意識の発展系として、釣りの授業をしました!
理由は3つ。
1点目は、より複雑な動きのものがあると知ること。
2点目は、夏のキャンプで釣りをすることが決まったので、その練習。
3点目は、「食」のテーマと絡めて、人類が道具を組み合わせて操作することで、安定的に食料を得られるようになったことを追体験すること。
まずは釣り竿作りからです。
スクールで、麻ひもの先に新聞紙を丸めて重りをつけます。
それを持って公園に行き、落ちていた木の棒に結び付け、釣り竿完成!
竿(木の棒)が硬いのに対し、その先の糸(麻ひも)は柔らかい動きをします。
竿先に意識を置きつつ、ねらった場所に重りを落とす。
竿を立てると引き寄せられたり、寝かせることで遠くに運べるのは、振り子の原理と同じですよね。
物理的な学びも隠れています。
後日のキャンプでは、全員が自分で釣り竿を扱い、3匹の魚を釣り上げることができました!


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