国語的教科探究「思考と言語」2022秋・冬
第7~16時 新しい物語へ
前作、「アームストロング: 宙飛ぶネズミの大冒険」の次は、「アインシュタイン: 時をかけるネズミの大冒険」を読むことにした。
前作同様、挿絵が綺麗であったり、歴史上の出来事にも触れ合えるる冒険活劇だ。
シーズン2は水曜日にもゲストティーチャーが来たり、研修日でお休みの日が多いので、物語に触れられる日が飛び飛びになってしまう。それをコゥ・ラーナーに伝えるすかさず「忘れないようにメモがしたい!」という提案があった。
シーズン1でタイピングに慣れてきたコゥ・ラーナーたちは話を聞きながらメモを取ったり、疑問に思ったことを記録していくことができるようになった。ひらめきは一瞬だ。消えてしまう前にひらめきを閉じ込める役割を文字が持っていることにコゥ・ラーナーは気付いている。
schoolTaktは思考を共有する仕組みだ。同じ物語を読んでも人によって印象に残ったことや疑問に思ったことは違う。
「あ〜確かにそんなことあった!」
「真鍮ってこうやって書くんだ…でも真鍮ってなんだ?」
みんなで記録を作り上げていく。Contextの語源は「con(一緒)とtexere(織る)」人類が今までの叡智を積み上げてきたように、感じたこと、知ったこと、疑問に思ったことをみんなで紡ぎ上げていく。また、「Con(一緒)のtext(文章)」でもある。自分の気づきを記録していくことは共有財産だ。
これからの思考と言語はこの読み聞かせ+その日のアクティビティという二本立てで行なっていく。一冊の本をじっくり9時間。それは言葉と概念に向き合う時間になった。
第8時 言葉で概念を学ぶ
前回に引き続きアインシュタインを読む。
「メモ取りながら聞いてもいい?」
「この前まで自分で読みたかったけど疑問を記録したいから今日は読まない!」
記録は強制ではない。しかし、記録をするということがどういう意味を持っているかはコゥ・ラーナーは知っている。
読み進めていくとこんな声が上がる
「しゅうきって周期?秋季?」
「そうたいせいってどうやって書くの?」
「そもそもそうたいせいってなに?」
今回の物語はアインシュタインに関連するモチーフがある話なので難しい言葉も多く出てくる。普通の学校では教科書をベースに進めるため、概念的な言葉を低学年のうちに学ぶことはあまりない。難しい単語を単語だけで学ぼうとすることは大人でも難しい。
しかし、物語の中で現れるのであれば話は別だ。その言葉には使われたシチュエーションがくっついてくるからだ。
シェルパが出てきた単語を電子黒板に書き取っていく。簡単な図もついている。
「ああ、周期って数と論理でやった1年おきとか1週間おきとかそういう感じか!」
「相対的ってなんか、比べる感じ?」
「なんとかと比べて長い、とか短い、とか?」
自分なりに意味を構築していく。今日わからない言葉も日常的にいろいろな使われ方をしていくとそのうち身体に染み込んでいく。
第9時 絵も言葉
ゲストティーチャーに塚本忠行をお呼びしてグラフィックレコーディングの手法を教えてもらった。
文字だけでなく、絵や図を使っても自分の伝えたいことは伝えられる。
お絵かきをしているようで生き生きと感情を表現するコゥ・ラーナー。自分の気持ちを表現できるって気持ちいい!
「文章書くの苦手だと思ってたけど、絵とやじるしをつかえばうまく書ける気がする!」
そんな言葉もきこえてきた時間だった。
第10時 考えること、試すこと、振り返ること
来年入ってくる新入生をおもてなしできないかと考えたら、ハロウィンが近づいてきた。
「ハロウィンでゲームを作ってみんなで遊ぼう!」
意気揚々と企画をするコゥ・ラーナー4人でプロジェクトチームを作って議論していく。
全員で企画するわけではない。やりたい!と思った人がどんどんリーダーになっていく。
正直、シェルパは失敗の可能性もあると思っている。初めての人、初めての場所、初めてのルールで遊ぶことは大人でも難しいことだからだ。
「リハーサルをしてみない?」シェルパ の提案だ。
学びが最大化する時は「ちょうどいい失敗」を経験する時だ。ぶっつけ本番で大失敗、企画者も参加者も学びなく終わってしまうし、大人が手を出しすぎたら全員が「学びの消費者」になってしまう。
「いいね!」
いくつかの振り返る観点を提示して、リハーサル、スタート。
一人ひとり「いい失敗」ポイントが違う。ゲームに参加する役割が違うからだ。参加の仕方で見え方が違ってくる。
今回はすごろくのようなゲームだ。
「あんまりおもしろくなかった…」
「ぜんぜんさいころ触れなかったな〜」
「新入生くるともっと人が増えるからもっとスピード遅くなると思うよ」
「ぼく、企画に参加してないからルール説明できないかもしれない」
様々な立場から様々な振り返りが出ててくる。その意見を共有してどうすればいいか、本番までに何ができるのかを考える。
思考を言葉にして、言葉で思考を共有して。
みんなで考えるには言葉は必須だ。
第11~13時 インプロ物語づくり、ウォーミングアップ編
今までは物語は「読む」ものだった。しかし、ここからは「つくる」ものにもなっていく。
「インプロで物語をつくろう!」
「インプロって?」
「インプロビゼーションって言うんだけど、その場のひらめきで演技をしたり、演奏したりすることだよ」
「思いつきで物語をつくっていくって感じ?」
「そうそう!」
まだまだおっかなびっくりのコゥ・ラーナー。それでも、
「無人島に男の子と女の子が流れ着きました」
「男の子は…魚を獲りました」
「別の女の子も流れ着きました」
たどたどしくも物語をつむいでいく。
「そんな感じそんな感じ!」
「おれだったら恐竜を出すな〜!」
「そしたら木の棒で戦えないじゃーん!」
「やられちゃうよ!」
少しずつ全員の頭の中に絵が浮かんできたようだ。そこで4人1組になってグループでのインプロ。
グループごとに物語をつくっていく。慣れるために特に制限を設けず少しずつ書いていく。
3時間ぐらいをかけて徐々に創作の世界に慣れていく。
3時間目でルールの追加をした。
「ただインプロをするだけだと、どんどん物語は進むね。だけど、詳しく書いたり、セリフがないまま次の場面に行っちゃったりしない?」
「たしかに…」
「そんなときはこの4つのカードを使おう!」
そう言ってシェルパ は各グループにカードを配り始めた。
自分が即興で物語を紡いだら次の人に一枚カード選んでパスをする。そうすると理由が出てきたり、場面を詳しく描いたり、展開を変えられたりする。そうすることで物語が彩られるのだ。
第14~18時 インプロ物語づくり、ブラッシュアップ編
3回のウォーミングアップを経て、拡散的にアイディアを出していくことには慣れてきた。次はそれを整理して、綺麗な流れにしていく段階だ。
0から1を生み出すには大まかに分けて3つの段階がある。
なんでもいいので拡散的にアイディアを出す段階、アイディアに共通点や相違点をみつけて整理する段階、そしてそれらをまとめあげる段階だ。
今回からは友達と即興で作った箇条書き状態(プロット)の物語を自分なりに組み替えてみる。同じプロットでも全く違うストーリーになることだってある。
一人一人が思い思いに筆を走らせた。家でも夢中で物語を描いているコゥ・ラーナーもいたらしい。
よりよくすることは二つの視点で言うことができる。
「より面白くすること」と「より読みやすくすること」だ。
面白いものでも、読みにくかったら伝わらない。
読みやすくても、面白くなければ読みたくない。
クリエイティブの探究の始まりだ。
第19、20時 インプロ物語作り、アウトプットとフィードバック編
描いた物語は最後に印刷して冊子にする。今回は表紙をつけて印刷しただけだが、それでもみんな自分の作品が出来上がったことにご満悦だ。
しかし、それで終わりではない。
印刷をした子から他の子に読んでもらう。その時にシェルパ は1枚の紙を手渡した。
読んでもらう時にこの図にサインをしてもらうのだ。自分は物語が面白いと思って読んでもらっても、別のところが印象に残ることだってある。次にどんな修正を加えるとより魅力的になるかを考えるきっかけになる。
全員がお互いにフィードバックを送る。だれも否定なんかしない。否定はしないが、全員が批評の目を持っている。
自分と相手のクリエイティブを高めていくこと。言語を使って、概念を使って思考していくこと。そうやって自分の世界を表現していくことはとても気持ちがいいし、誰かの心を動かせる。
創作をしたことがある。この経験を持てるかどうかは自分でとても大切だ。自分の人生を自分で選んでいくことにとてもよく似ているから。
まとめとこれから
数と論理同様、2023年度は「思考と言語I」「思考と言語II」のコースを作ります。
語彙と思考は密接な関係にあります。今回の読み聞かせ、創作に加え、対義語、接続語などを扱い、より深く言葉と思考の世界を探究していきます。
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