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『マイ・ブロークン・マリコ』感想(ネタバレあり)

今日は気になっていた映画『マイ・ブロークン・マリコ』を観てきました。とても良い作品だったので自分なりの感想を残しておこうと思い、この文を書いています。
(見出し画像は公式HPより)

映画のCMか何かでチラリとタイトルを聞いて惹かれたのと、その後YouTubeで予告映像を観て「永野芽郁すごくね?」と直感したこともあり、これは観に行かねばと自宅から2番目に近いTOHOシネマズ(最寄りではやってなかった)に足を運びました。大まかなストーリーは以下の通り。

ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。

映画『マイ・ブロークン・マリコ』公式サイト

まず観終わった感想としては、85分の映画にしてはかなり満足感があったなというところです。原作が優秀ということもあるでしょうが、俳優陣の芝居、特に主演の永野芽郁がかなり良かったこと、回想シーンが多いながらも「観ながら迷う」現象が無かったことが大きいのではないかと感じました。原作は未読なので構成に関して詳しく話すことは控えますが、場面や時代の違いが服装などから無意識にわかるようになっていたのがひとつの理由だと思います。
思ったこと、気づいたことがいくつかありましたが、分けて書いた方が書きやすいし読みやすいと思うのでパート分けしていきます。個人的な感想というよりは表現の考察の要素が大きいかもしれません。(以下ネタバレ)

タイトルについて

まず『マイ・ブロークン・マリコ』というタイトルとそれを暗示させるような表現が秀逸だなと感じました。
あらすじからもわかる通り、主人公シイちゃんの親友であるマリコが自殺してしまうことを象徴しているのはもちろんのこと、他にも「あ、これタイトルと絡めているな」と思う表現が多く登場しています。

冒頭、シイちゃんがマリコの死を知った直後にマリコ宛にLINEを送るシーンでは、スマホの画面が割れていることがわかります。ひとつは主人公のがさつな性格を表す意味もあるでしょうが、「マリコとのトーク画面を開いたスマホが割れている」ことが「マイ・ブロークン・マリコ」を象徴しているとも取れるでしょう。作中何度かスマホの画面が映されますが、私の記憶ではいずれもマリコとのトーク画面で、その他の内容は映っていなかったと思います。

次に物語の核となるシーン、シイちゃんがマリコの遺骨を奪い、逃走するシーンです。観客はそれまでの回想でマリコが父親からの虐待を受けていたことを知っているので、非常識なシイちゃんの行動はほとんど善行として捉えられます。しかし直後、父親はガラスの割れたマリコの遺影を手に涙するのです。クソ親父にもクソ親父なりの歪んだ愛があったようですが、これも「マイ・ブロークン・マリコ」です。"My" という所有格は文脈によって誰のものかが異なりますが、ここでは父親からの目線で暗示されており、心情描写に深みが出ていいなと個人的に最も印象に残ったものでした。

3つ目はマリコの遺骨が散乱するシーンです。最も直感的で多くの観客の記憶に残ったシーンでもあるでしょう。シイちゃんも被害を受けたひったくり犯を、まさかマリコでぶん殴るとは!空中で散乱する「マイ・ブロークン・マリコ・イン・ザ・スカイ」は衝撃的でしたが、助けを求められた咄嗟の判断ですから、シイちゃんの根底にある優しさを象徴するとも捉えられます。その優しさこそまさにマリコが求めていたものだったのかもしれません。

最後に喫茶店での喧嘩のシーン。マリコが自宅で彼氏に暴力を振るわれていたところを助け、シイちゃんがフライパンを振り回して追い返したはずなのに、またその男のところへ行って、しまいには左腕を骨折してしまった彼女に放った「感覚ぶっこわれてんじゃねえの」というセリフ。これも文字通り「マイ・ブロークン・マリコ」です。マリコは壊れていることを自覚していたようですが、シイちゃんが本気で叱ってくれるところも好きだったようで、二人の関係が唯一無二であることがわかると同時にとても哀しくやるせない気持ちになるシーンでした。

以上、「マイ・ブロークン・マリコ」というタイトルとそれを暗示するシーンについてでした。製作陣の意図がどこかで話されていたら読むなり聞くなりして知りたいなと思いますね。

シイちゃんについて

主人公のシイちゃんは現在を永野芽郁、中学時代(?)を佐々木告(つぐ)が演じています。芝居については素人でただの一視聴者に過ぎませんが、この二人がめちゃくちゃ良かったです。

永野芽郁は朝ドラなんかの影響もあってキラキラした女の子のイメージがありましたが、今作ではやさぐれたヤンキーっぽさを見事に降臨させていたと思います。タバコを吸う仕草、姿勢など、もしや普段から吸い慣れてる人かな?と思う自然さでした。特に私のような非喫煙者から見ると全然嘘っぽさが無く、こういう役ももっと見たいなと思いました。
全体的に激しいキャラクターだったので素人にもわかりやすい凄みがあったように感じます。なんか賞獲るんじゃないか。

佐々木告は劇中の中学時代とちょうど同年代くらいの俳優で、大人のシイちゃんほど「洗練」されていない、まだ若い荒っぽさ、乱暴さみたいなところをナチュラルに演じていたと思います。最近の子役すごい人が多いなあと改めて感じました。
公式サイト等見ると主要キャスト5人しか出演者情報を見つけられませんでしたが、なんでこの子の名前載せないの?と思うくらい印象的でした。契約とか大人の事情あるんですかね。せめて公式サイトには全員の名前を載せてもらいたいものです。

締めます

なんだかんだ2パートでまとめられてしまいましたが、登場人物それぞれの感情を想像させられる、没入感のある良い作品だったと思います。
自殺という遠くて身近なテーマを扱っているので観る人によっては結構しんどいかもしれませんが、個人的にはとても好きな作品でした。
哀しい話ですが、優しい話でもあります。人間味があって、どの立場においても「自分だったら……」と想像してしまうような親近感のある作品です。

気になっている方はぜひ観てみてください。

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