なぜ臨床心理士はカフェでカウンセリングをしないのかーカウンセラーがクライエントを守ることについて
最近、勉強のためにいろいろなカウンセリング機関やカウンセラーのホームページを見ています。
その中で気になったのが、カフェカウンセリングという言葉です。カフェやファミレスなどの公共の場でカウンセリングをすることのようです。
おそらく大学院で臨床心理士や公認心理師の養成課程を出て資格を取得した人は強い違和感を覚えるのではないかと思います。
今回はなぜ資格を持っている人がカフェでカウンセリングをしないのかについて解説しながら、相談される方(以下クライエントと呼びます)を守る倫理について考えます。
安心して何でも話せないから
カフェという他人が当たり前にいる空間では安心して話せないことは容易に想像がつくでしょう。
例えば隣の人が盗み聞きしていて、誰かに話すかもしれないし、SNSに書いてしまうかもしれません。カウンセリングで「あいつが嫌だ」という話をしているときに、まさにその渦中の人が偶然近くにいるかもしれません。
話しているうちに怒ったり泣いたり感情が高ぶることもありますが、そのような反応も公共の場では抑制されてしまうでしょう。
隣の客の話声が耳に入ってきたり、誰かが大きな音を立てたり、誰かに話しかけられるなんてこともあるかもしれません。カウンセリングに集中できなくなる要素がたくさんあります。
クライエントさんが良くてもカウンセラーは行ってはならないと思います。安心して話せるカウンセリングの場を守るのはカウンセラーの義務だからです。
場所が固定されないからー「枠」を守るということ
カウンセリング、心理療法では「枠」が大切だと言われます。カウンセリングの時間、場所、頻度、カウンセラーなどを固定することが、カウンセリングという場の枠になります。
心が不安定だったり、抱えている問題が大きいほど「枠」は大切です。
大変なことが起きた時、ショックなことがあったとき、「いつもと同じ」ということが心を落ち着けてくれたという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。
いつも食べているもの、いつも寝ているベッド、いつも聴いている音楽、そういうものが安心感をもたらしてくれます。
それと同じことが心を表現するときにも言えます。
いつも同じ場所で話すということは、心を守ってくれます。
やむを得ず違う場所で話さないときはそのことについてわざわざ話す時間をとることもあります。
公共の場ですといつも同じ場所で話すことができるとは限らないでしょう。そういう意味でカウンセリングに有益とはなりません。
ちなみにオンラインカウンセリングでもカウンセラー側の背景はなるべくいつも同じでシンプルなものが良いと教わりました。
もう一つの懸念ー関係性の問題
カフェやレストランで一緒に食事をとる、飲み物を飲むとと、少し親密な雰囲気になります。カウンセラーとクライエントが一緒に食事をとったりする、それが複数回続くというのは、親密な関係になりすぎる危険性があります。
親しくなるならよいのでは?と思われるかもしれませんが、そもそもカウンセリングというのは、悩みを話したり、解決法を探したり、自分の人生について考えたりする場です。信頼していただくことは大切ですが、親密になるために話すのではありません。
そのことをはき違えないようにするためにも、そもそも最初から関係性の混同が起きそうなことはやらないのが良いと思います。
臨床心理士が学ぶこと
臨床心理士の養成課程では、クライエント(とカウンセラー)を守るための倫理というものを叩き込まれます。
学外に実習に行く前に、学内で実際に相談を担当する前に。
自分自身の経験でいえば、カウンセラーの服装のマナーや受け答え、クライエントを部屋に迎え入れるときに気を付けることなど、かなり細かく指導されました。
臨床心理士の試験を受けるときには、特に倫理について勉強し、同期とも確認しあいました。
今となってはそういう蓄積が、当たり前のように「この行為はまずいのでは」「このやり方はクライエントを傷つけるのでは」といった考えが出てくるようになったのではないかと思うのです。心を扱うということは、自分や他人を傷つけるような危ないことも起こりえます。
大学院で学ぶということの一番のメリットは、実はこのようなカウンセラーの倫理(と修士論文を書くことで培われる科学的思考)を学ぶことだったのではないかと思います。
資格を持っているからと言ってカウンセリングがうまいわけではない、資格を持っていないカウンセラーでも腕のいい人がたくさんいる、ということを時々耳にします。
その通りだと思います。
しかし一定の職業倫理を身に着けているかどうか、もっと言えば持っている資格の倫理要綱を順守する義務を負っているかという点は非常に重要だと思います。
そしてそのような職業倫理を持っているカウンセラーはカフェでカウンセリングは行わないはずです。
当相談室の対面カウンセリングは、以上のことから当然、個室で、臨床心理士、公認心理師の資格を持ったカウンセラーが行いますのでご安心ください。
もし、個室で一対一で話すことに不安を感じられる場合はオンラインカウンセリングがおすすめです。
安心できる場所から画面越しにお話しすることで、対面する緊張感を減らしてお話しいただけます。
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