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配食サービスって結構いいかも

今回の記事は、東海新報2024年4月23日付の「店の味 家庭で味わって」です。高齢者向けの配食サービスを地元飲食店が弁当を作り、地元運輸業者が配送するというもの。どのような利点があるのでしょうか。
(東海新報 https://tohkaishimpo.com/


記事は、陸前高田市で70歳以上のみで構成されている高齢者世帯を対象とした週1回の「ゆめちゃん弁当」の配達が今年度も実施されることを伝えています。この事業は、新型コロナウイルス禍に伴い、自宅に閉じこもりがちな高齢者の見守り支援につなげると同時に地元飲食店を応援しよう実施されているものです。

記事では、事業内容を次のように紹介しています。

市内の11事業者が持ち回りで調理し、利用者には毎週決まった曜日に食事が届く。アレルギーや刻み食などへの対応は不可。飲食店やメニューを選ぶことはできない。
料金は1食450円。配達は無料で、レンタカー業や運輸業など民間3事業者が担う。午後3時30分〜6時の間に配達し、健康観察も行う。不在の場合、再配達は行わない。配達時間の指定もできない。

東海新報 2024年4月23日付

今日的なサービスとして見た場合、やや一方的で融通が利かないものと感じてしまいますが、あくまでも高齢者の見守りが目的ということで、見守りのついでにお弁当を直接配ると考えれば、この方式になるのだろうと思います。

そんな配食サービスですが、昨年度、市が行った利用者アンケートでは、食事の量や味に関しては8割前後、食べやすさは約9割が「ちょうどよい」と回答し、好評であると報じられています。

好評だという配食サービスですが、どのくらい普及しているのでしょうか?


陸前高田市では、市が実施している主な事業の予算と決算について、その内容をホームページで公表しています。「令和4年度決算に係る主要な施策の成果に関する実績報告書」には、2020年度から2022年度までの実績が掲載されています。

2023年度の実績は記事中にありますので、それらをまとめますと次のとおりになります。

(前:利用者実人数 中:配食延べ数 後:決算額)
2020年度 247人 3,360食 2,544,360円(1人当たり食数 13.60食)
2021年度 308人 9,118食 8,434,217円(1人当たり食数 29.60食)
2022年度 286人 8,707食 11,330,305円(1人当たり食数 30.44食)
2023年度 220人 8,089食 ?円(1人当たり食数 36.77食)

利用者実人数が減少する一方で1人当たりの食数は増加していることから利用者が固定化しつつあることが分かります。

それでは陸前高田市の高齢者のうち、どの程度が利用しているのか見てみましょう。

利用者は70歳以上の高齢者のみの世帯となっています。公表されており、入手できるデータから利用者の条件に近いものとして国勢調査の「75歳以上の高齢者のいる世帯数及び世帯員数」とみると、

(前:夫婦のみ世帯 後:単独世帯)
世帯数  494世帯 576世帯 合計 1,070世帯
世帯員数 824人 576人 合計 1,400人

となっています。

この1,400人を近似的に利用者の対象母数とした場合、利用者実人数の占める割合は17.29%から22.00%程度となります。対象者全体の5人から6人に1人が実際に利用していることになります。

さて、この数字は大きいのでしょうか、それとも小さいのでしょうか?

高齢者を対象とした事業と比較してみましょう。再び「令和4年度決算に係る主要な施策の成果に関する実績報告書」から2つほど抽出してみます。一つは「老人クラブ活動等社会活動促進事業費補助金」、もう一つは「介護保険認定業務」です。

前者は、健康な高齢者の生きがい活動を支援するもので、後者は、介護が必要な高齢者を介護認定することで介護サービスが受けられるようにするものです。

2022年度の実績をみると、

老人クラブ 会員数 567人(同期の65歳以上人口 7,257人:7.81%)
介護認定 認定数 1,383人(同期の65歳以上人口 7,257人:19.06%)

となっており、配食サービスの利用者の割合と大きく離れているものではありません。つまり、5人に1人くらいの受益者というのが目安のように思われます。

次に、配食サービスを提供する事業者について見てみます。弁当を作る飲食店と配送する運輸業といった業種が該当します。事業所数については、2021年経済センサス活動調査で把握できます。それを見ると、

飲食店 11事業所(経済センサス 46事業所:23.91%)
運輸業 3事業所(経済センサス 8事業所:37.50%)

となっています。利用者に比較すると提供者の方が割合が高くなっています。このことは、新型コロナウイルス禍で大きな影響を受けた業種を支援することが目的であるというのも頷けます。

複数の事業を組み合わせることで、複数の目的を達成するという内容となっており、政策としてなかなか優れているのではないかと思います。

ただ、いつまで続けるのかが課題と言えなくもありません。一つは民間の配食サービス事業者があり、民業圧迫とならないかという点、もう一つが新型コロナウイルス禍が収束した中で特定業種への支援継続が必要かという点があると思います。

いずれにせよ、新たな視点で地域課題を解決する施策を展開してほしいと思います。


いかがだったでしょうか。
記事では好評とされた配食サービスですが、ちょこっと深掘りしてみても良い事業だと感じました。新型コロナウイルスというマクロな問題が、市民生活というミクロに影響し、その影響を最小限にしようとする取り組みは今後も続けていってほしいです。

今後も気になった記事をちょこっと深掘りしてみたいと思います。



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