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【物語ライター】物語の登場人物風にあなたのお茶会シーンを書いてみる【企画】

白兎に案内されたサロンには、壁一面に絵が掲げられていた。
額縁の向こうから、天使たちがまぶしげひ手を振り笑いかけてくる。
「心ゆくまでごゆるりと」
空と海の境界を溶かしたアイスティーと一緒に、憧れの画材が供されて。
私から時間の概念が消えた。

全部がふわふわもこもこしている、お気に入りの空雲カフェ。
ふんわりソファ席に身をしずめれば、小さな灰色鳥がやってくる。
「あったかいじかんをすごしてね」
たどたどしいけれど優しい言葉。
シトリンのハチミツたっぷりのミルクティーで、私はほっと息をつく。

星を散りばめたこのカフェで、天の川を閉じ込めた水晶硝子の1人掛けが私の指定席。
「個展の準備で忙しいんだろ? こんなとこに来てていいのかよ」
一等星より眩しい白銀の彼は、翡翠のゼリーパフェに藍玉のティーソーダを添えて、不器用な労りの言葉をくれるのだ。

足元のガラス板の下では、エメラルドの光に揺れる水面と、泳ぐ魚たちの姿が見えた。
時折聞こえてくるセイレーンの歌声に耳をすませながら、私はこの海上カフェで取引相手を待つ。
アクアマリンのソーダが無くなるまでに、さて、彼は無事ここへたどり着けるだろうか。

虹の遊色で魅せる立方体の結晶石たちが、吹き抜けのカフェテリアを照らす。
大事な会合の前は、いつもここで過ごすと決めている。
クリームで彩る琥珀のヴェリーヌを口にふくめば、とろける甘さが歴史の重みと一緒に広がった。
この味が私に天啓をくれるのだ。

ステンドグラスの光を受けて、パイプオルガンから壮麗な天上の音楽が奏でられる。
天使たちが輪になって踊るのを眺めつつ、舞台の側で、私は紫水晶の蜜漬けを黄昏紅茶に溶かして優雅に楽しむ。
自慢の喉は今日も最高だと笑ってみせて。
私の出番まで、あと少しーー

螺鈿細工の時計塔、あるいは夢幻図書館、またの名を次元カフェ。
膨大な図書を背景に、遥か頭上で回り続ける運命の巨大歯車がたてる音色に想いを馳せながら、私は読みかけの本を開く。
傍らのティーカップのなかでは、銀河の雫を落とした珈琲が青い焔をゆらめかせている。

案内されたテラス席からは、ローズクォーツの花びらが降り注ぐステージがよく見える。
まもなく始まる音楽祭の、ここが特等席だと教えてくれたのは"彼"だ。
銀水晶がとけてきらめく春色クリームソーダのグラス越しに、これから始まる夢のような時間へ想いを馳せる。

フローライトタイルがカラフルに敷き詰められたカフェテリア。
飛び交う会話たちもどこかポップな音楽めいていて、私は心を弾ませながら、カップに瑠璃とルチルのハーブティーを注ぐ。
爽やかな香りとを楽しみながらここで彼を待つ時間は、こんなにも鮮やかで幸せなのだ。

機織り機のそばで、今日も店主自ら月の雫や夜空のカケラを糸車にかける。
飴色に染まるこの隠れ家には、至る所に多彩な糸紬たちが飾られていて。
私は、糸繰師にだけ聞こえる彼等の囁きに耳を傾けながら、ほろ苦いペリドット茶と琥珀糖を供に新たな創作への糧を得るのだ。

レースを敷いた切株に、ルビーやエメラルド、トパーズのとろけるほど甘く澄んだジャムの小瓶たちをならべ、傍には焼きたてのスコーンもたっぷりと。
「お気に入りをぜひ教えてね」
パティシエのうさぎ姉妹から期待とシトリン紅茶を注がれて、私だけのティーパーティが始まった。

夜の帷を下ろし、星々が小さく瞬く店内で、そっとアンティークチェアに身を預けた。
一番星のカケラを乗せたモンブランタルトに、ブランデー漬けの猫目石にスパイスを加えたホットティー。
今だけは、ゆったりゆったり私のためだけに時間が流れていくのを感じたい。

陽が落ちた途端に氷花が咲き乱れ、あまりの寒さに行きつけのカフェへ飛び込む。
珍しく客がいないカウンターに座って真っ赤なルビーティーをホットでお願いすると、
「皆には内緒で」
黒猫店主がニヤリと笑い、合鴨に琥珀ソースを合わせたバケットサンドを供してくれた。

星読師の友人に誘われて、満月の夜にだけ開く秘密のカフェへと足を運ぶ。
ベルベットの質感を持つ店内に、蔦の絡まるモチーフが目を引くテーブル席。
「ここではね、一度だけ未来を変えることができるのよ」
銀の雫できらめく百合の秘密パフェを前にした私へと、友人が小さく囁いた。
古い魔導書に囲まれた、古いカフェの一角。
いつのまにか傾いた陽の光が薔薇窓から差しこみ、ファイヤーオパールの紅茶を注いだカッティンググラスを照らす。
ゆらりと移ろう鮮やかな赤の中に私は天使の姿を見つけ、待ち望んだ邂逅に微笑み、そっと声をかけた。

星空にかかる水銀色のレールの上を、月光水晶の列車が連なり走っていく。
かつての旅の想い出がとけた勿忘草の紅茶にターコイズブルーのパフェを添えて。
私は始まりの駅に隣接するカフェテリアから、旅立ちの音に耳を傾ける。

行くべき道に繋がるという、赤や青、黄色に緑と色とりどりの扉が至る所に生えたカフェ空間。
私は白のテーブルにつき、フォスフォフィライトの涼やかで繊細なハーブティーに唇を寄せる。
扉を開ける導きの鍵は、飲み終えたティーカップの中に。

まるで人目から隠すかのごとく蔦に喰まれた四阿で、にこやかに迎えてくれるのは、人であって人ではない何か。
そうして今日も、手ずから淹れてくれた緑柘榴のお茶に銀水晶のあんみつ、そしてささやかな世界の理に連なる物語を、私は彼から差し出されるのだ。

煉瓦造りのアンティークショップは、店主の気まぐれでカフェへと姿を変える。
迷宮としか思えない入り組んだ店内の奥の奥、極彩色の花にあふれたその場所で、私は他の常連とともに、世界樹の朝露で淹れた時重ねのお茶を口にする。
その語らいがいつしか、真理に辿り着くまで。

海の底で生まれたシャボン玉が、風に乗って丘の上のカフェまでやってくる。
たわむれに指先で弾けば、爽やかな蒼の香りが広がって。
でも彼に会うまでは帰らないと決めているから、こみあげてきた懐かしさとちょっとの淋しさを真珠のミルクティーに沈めて飲み込んだ。

水晶質の鬼灯にゆるりと火がつき揺れる、真夜中の硝子庭園。
ゴーストが給仕に回る幽玄夢幻のティーパーティは、密やかなのに賑やかで。
楽園の果実と柘榴石の蜜漬タルト、月の涙にトパーズを合わせたブレンドティー、幽玄夢幻のセイボリーを楽しみながら、私は常世の境界で笑う。

青薔薇の花人たちが迎えてくれるティーサロンへ。
銀河を写し取った美しいティーカップに注がれるアイオライトの涼やかな花茶に目を奪われていると、今回は特に自信作なのだと、満開の笑みで彼は告げる。
芳醇な香りが一層華やかさが増して、私の胸がトキメキと期待に跳ねる。

華月祭を迎えた朧の森の神樹の社前には、屋台が日傘や長腰掛ともにずらりとならぶ。
賑やかで甘やかで優しい景色の中、私は茶屋のひとつで時渡りと呼ばれる真珠茶に翡翠餅を頼み、舌鼓をうった。
足元を、河となった薄紅の花びらがしゃらりさらさらと流れていく。

ウッドデッキのカフェブースへ向かうと、先客の猫たちがほこほこと陽だまり団子を食べていた。
つられて私も同じものを頼み、ついでに彼らへ満月餡焼きを差し入れる。
「あちらのお客様からです」
店員の言葉でこちらを振り返った猫たちのまんまる瞳に、キュンと胸が高鳴った。

いつのまにか森の中にできていた、カップケーキみたいな可愛いカフェ。
思い切って扉を開けたら、ちょうど焼き上がったところだと、ルビーやカーネリアンが色鮮やかなフルーツプディングを掲げて店主さんが迎えてくれた。
そのぬくもりに誘われるまま、私はそっと席に着く。

白雲母と真珠で作られた真っ白な雪山パフェに、日ノ輪の実のシロップをほんの数滴。
それだけで、グラスの中のクリームは上から下まで見事な茜色に染まっていく。
溜息が出るほどに惹かれる逸品。
雲海を望むこのカフェで、私は至福のひとときを味わった。

結晶化した金木犀の花びらが、はじける炭酸水の中でキラキラと甘く光を反射する。
それだけで、心がふわりと浮き立つ。
ガーネットやシトリン、タンビュライトの色に染まるコスモスに彩られたこの秘密のカフェでなら、これからのことをゆっくりと考えられる気がした。



淡いオパールの雨が、カフェの飾り窓に薄いヴェールをかける。
世界から秘され、私だけに用意された特別な場所。
銀のティースタンドに飾られた薔薇や石楠花のクォーツ漬けや琥珀のケーキを前に、影のように寄り添う優雅な彼の給仕をうけながら、雪月花の紅茶に唇を寄せる。

銀砂が波にさらわれては煌めくのを眼下にのぞむ、崖の上の小さなカフェ。
ふしぎな巡り合わせで辿りついた私に、可愛い魔女が苺色の瞳をまん丸にして迎えてくれた。
火の魔女から譲り受けたという窯で焼く紫陽花パンに、マラカイトのジュエリーソーダで、夏の終わりを堪能する。

満開となった黄泉桜の下に縁台がならぶ。
「さあさ、おひいさま、ゆっくりしてってくださいな」
嬉しげな小鬼たちが、私を真紅の敷布で彩られた特等席へ連れて行く。
蜜漬けにされた珊瑚や柘榴石、琥珀がきらめくあんみつに翡翠茶を置いて、千年に一度の花見が始まる。

照明を落として闇に包まれた店内に、ぽつりぽつりとランタンが星のカケラを燃やして灯り始めた。
蒼に紅、橙、白銀、翠とゆれる幻想たち。
私はアンタレスの名を冠した鮮紅色の美しいティーカクテルを手に、店主が厳かに紡ぐ聖なる歌へそっとひたる。

同僚おすすめの"まどろみカフェ"へ。
やわらかな間接照明のもと、夢羊たちが編んで組み立てたぬくもりソファに埋もれる。
ホットミルクにアメジストのキャンディをひとつずつ足していきながら、夢見心地の時間を過ごす。
休日のたびに、ここへ通う未来が見えた。

宝石の光を閉じ込めたガラスの塔の屋上テラス。
レモンとシトリンで輝くジュエリーパフェを傍に置き、私はゆるりと夜風を受ける。
頭上に満天の星、眼下にも星の海が広がるこの場所で、かつて交わした遠い日の約束が果たされるのを待っている。

氷と大理石であつらえた鍾乳洞を思わせる地下カフェで、今年も秘密のティーパーティは開催される。
氷のカウンターにずらりと並ぶカラフルなカルセドニーの砂糖漬けやミモザのカヌレたちを前に、私の心は軽やかに踊る。
合わせる紅茶は黄昏か茜空か、迷うことすら楽しい。

鳥居の向こうに縁をつなぐ茶屋があるのだと、ここを教えてくれたのは不思議な目をした僧侶だった。
迷いも願いも出会いも幸福もすべては縁という名の糸だと笑んだその人の言葉に背を押され。
私はいま、決意とともに時渡りの茶を手に取り口にする。

精霊が描いたという光の曼荼羅が頭上に展開する美しいサロン。
そこに用意されているのは、東雲や蒼天、暁、宵闇をはじめ、天のカケラを閉じ込めたジュエリーアイスに、水晶の紅茶だ。
思いがけず繋がった縁の先で、私はこの常世の宴に身を置き、そのひと時を享受する。

湖上に浮かぶ鏡の城に用意された、ひとつだけの特別な席。
蒼天に舞う小鳥、水面に咲く睡蓮、茂る緑柱石の木々が美しい水彩の間で、水と光の精霊たちが、時の理を閉じ込めた金緑石の紅茶を注いでくれる。
移り変わる色と香りを楽しみながら、私は王の帰還を待ちわびる。

望月を頂点に上弦と下弦へと欠けていく、あらゆる世界線のあらゆる月の満ち欠けが映し出される麗しの天空カフェ。
時折、朔の時間と称して月の代わりにオーロラが現れるところもお気に入り。
夜霧をとかした藍玉の紅茶を供に、私は今日も変わりゆく月たちをうっとりと眺める。

新緑、海岸、紅葉、雪原と、それぞれの四季で彩られた個室カフェ。
瑞々しい緑に囲まれた春の席に着けば、葉ずれや小川のせせらぎ、小鳥のさえずりが耳に心地いい。
ローズクォーツやモルガナイトを花に見立てた愛らしいフラワーボックスケーキで、優しい時間に身をひたす。

水槽に囲まれた店内、衣装をひらめかせて優雅にホールを縫っていく熱帯魚のようなキャストたち。
深海めいた青のカフェは、まさに私と仲間たちにとってインスピレーションの宝庫だ。
ブルースターのムースとアイオライトの紅茶を前に、次回公演の企画会議に花が咲く。

わずかに位相を違えた迷いの森。
月見草が揺れる隠れ家カフェへ数百年ぶり足を向けたのは、ただの気まぐれか、それとも呼ばれたのか。
魔女集会が始まるまでの、わずかな空白。
星屑の砂時計を眺めながら、シリウスの涙を浮かべた紅茶で戯れにこの先を占ってみる。

旅先で訪れた水晶硝子の温室は、極彩色の鳥が舞う翠と緑と碧にあふれた楽園のようなカフェだった。
陽気な小人たちがワゴンで運んでくれるのは、籠いっぱいにもられた花蜜の焼き菓子と朝焼色のセパレートティー。
ふわりと浮き立つ心のままに、私は友人たちへ手紙をしたためる。

雲の行方まかせの気ままな散歩で、麦畑にぽつんとたたずむ赤い屋根の丸太小屋を見つけた。
軽やかな鈴の音にやわらかな木琴の音、可愛らしい歌も聴こえてくる。
誘われるままにのぞいてみたら、笑顔はじける仔リスたちに、青空ソーダと雲のもこもこムースケーキで迎えられた。

店中に翡翠カボチャやカラフルな蛍石芋、ルビー林檎、黄金柿に栗と秋の味覚にあふれ、一足早い収穫祭が始まっていた。
「穂月祭の間はずっとこのスタイルだよ」
豪快に笑う店主が持ってきたのは、燃えるように輝く宝石タルトを乗せた巨大パフェで。
想定を超えたボリュームに、私は覚悟を決めてフォークを握る。

虹を模したフラワーカーペットを背景に、絵描きと音楽家が集うアートカフェが賑やかに始まった。
曲から絵を描き、絵から曲を作りだす私たちの間を、芸術神の遣いが炎陽のティーカクテルを注いでまわる。
自分がもう一段跳ね上がる、そんな予感に満ちた時間だ。


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