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意思決定に繋げるためのデータ分析の型『Data Analytics Seven Steps』

こんにちは。高橋です。普段はコンサルとしてデータ分析を活用したデジタルマーケティング支援をやっております。最近では『データ分析力を高める ビジネスパーソンのためのSQL入門』を出版してSQLを使ったデータ分析の普及活動を頑張っております。
今回は自分が本業や複業などで色々なデータ分析案件に携わった経験から意思決定に繋げるためのデータ分析のステップについてまとめてみました。


正しくデータ分析ができているか

データ分析がビジネスにおいて重要であるということは、今の時代当たり前になりつつあります。
どんな企業でも、どんなビジネスパーソンでもデータを活用する流れはもはや止めることはできない時代に来ています。

しかし、実際にデータ分析が正しくできているかと言うと、必ずしもそうではないと感じることがあります。

  • データを見ただけて終わる

  • 今あるデータから何かわからない?

  • そもそも使えるデータなんてない

データ分析が当たり前になってきた時代でも、このような話も同時によく聞くことがあります。
本質的な課題は組織や企業やスキルセットなど様々なところにあるかもしれませんが、多くの場合は正しいデータ分析のやり方を知らないような気がします。
大量のデータが世に溢れている状況だからこそ、とりあえずデータを見て考えようとするケースが多く、そうなると上記のようなよくある失敗に陥りやすいと感じます。

そもそもデータ分析とは『データを活用して意思決定するための手段』です。課題や仮説に対してデータを用いて検証をし、その結果意思決定するというある意味当たり前のことがなぜかデータ分析になるとできないパターンが多いと感じます。

データ分析が意思決定に繋がらない理由はいくつかあると思いますが、1つは最近ではデータアナリストやデータサイエンティストのようなデータを専門に扱う職種のニーズも増えているため、SQLやPythonやBIツールなどの具体的な手法(How)にフォーカスが当たりすぎて『意思決定』という最も重要な要素が抜け落ちるケースも多々あるように感じます。

また、良くも悪くも『データが重要』という言葉や雰囲気だけが先行して、具体的にどうすればデータ分析がうまく使えるのかが分からない状態が続いているのも理由の1つかもしれません。

意思決定に繋げるためのデータ分析の型

意思決定に繋げるためのデータ分析ができていないという課題を感じながらも、自分としては工夫をしながら今までデータ分析を行ってきました。そこで、今回は自身が長年データ分析をしてきた経験からデータ分析をして意思決定に繋げるための7つのステップについてまとめていきます。

これから解説するステップをデータ分析の『型』として活用することで、ある程度品質を保って意思決定に繋げるためのデータ分析が誰でもできると思っています。

前職のデータサイエンス組織でも意識していたことで、もう少し丁寧に言語化したステップになっています。

『Data Analytics Seven Steps』

データ分析は以下7つのステップに沿って行うことで、最終的に意思決定に繋げるデータ分析ができると考えています。このステップを『Data Analytics Seven Steps』と勝手に名付けています。(略してDASS

1.課題【Issue】
2.仮説【Hypothesis】
3.想定【Assumption】
4.分析【Analysis】
5.結果【Fact】
6.考察【Consideration】
7.決定【Decision】

Data Analytics Seven Steps

『Data Analytics Seven Steps』には次の2つの目的があります。

  1. データ分析を意思決定につなげる

  2. データ分析結果を組織のナレッジとして貯める

まず1つはデータ分析を意思決定につなげるためです。繰り返しになりますが、データ分析とは『データを活用して意思決定するための手段』です。つまりデータ分析をした結果、何らかの意思決定に繋がらないとデータ分析自体の意味がなくなってしまいます。

冒頭でも説明した、『データを見ただけで終わる』『今あるデータから何かできない?』のようなデータ分析でよくある失敗をしないためにも、データ分析を意思決定につなげるためのフレームワークとして『Data Analytics Seven Steps』を活用して欲しいと思います。

もう1つはナレッジの蓄積です。データは会社にとっての資産です。そのためデータ分析をした結果は長期的には組織力を高める重要な要素になり得ます。データ分析ができる会社・組織にするためにナレッジを蓄積して正しくデータ分析ができる文化を作っていくデータ分析の『型』として『Data Analytics Seven Steps』を活用して欲しいと思います。

特にデータ分析を行う専門のチームや組織がある企業では、企業のデータ分析文化を醸成したり、メンバーのデータ分析スキルを向上させたりする必要もあります。
数多くの分析依頼が来てそれを裁くことだけに集中するのではなく、『Data Analytics Seven Steps』のようなフレームワークを使い、効率的に分析を行い、それらをナレッジとして貯め続けることでデータ分析組織力を高められると思っています。
私も前職のデータサイエンス組織でこの7つのステップと同じようなことを取組み、データ分析組織として分析の質を担保しナレッジを貯めていました。データ分析を属人化させないためにもある程度『型』に沿った分析ができると良いと思っています。


ここからは『Data Analytics Seven Steps』の各ステップについて細かく説明していきます。

1.課題【Issue】

Data Analytics Seven Steps

データ分析で一番大事なポイントはどんな課題があるかです。これはデータ分析に限らず、一般的なビジネスと全く同じで、最も重要なことはどんな課題を設定するかです。ビジネス全般に共通して言えることで、『どう解くか』よりも『何を解くか』の方が重要です。

安宅さんの有名な著書『イシューからはじめよ』のタイトル通り、課題設定こそがまず最初の重要なステップです。

問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。

イシューからはじめよ

冒頭にも触れた『今あるデータで何かできない?』と言われるケースは、まさに一番最初の課題設定ができていないパターンです。データがあるから、AIが何かしてくれるから、などの手法から話を始めるケースは、一度立ち止まってそもそもどんな課題があるのかを是非考えて欲しいと思います。

また、課題設定の際には本当に重要な課題なのか、この課題を解決できたらどのくらいのビジネスインパクトがあるのか、などを考慮して設定できるとなお良いです。いくら高度な分析を正しく行ったとしても、最初に設定している課題が適切でなければ良い意思決定などできません。間違った課題を正しく解くのではなく、適切な課題を正しく解くことがデータ分析においても求めれる要素です。

2.仮説【Hypothesis】

Data Analytics Seven Steps

データ分析とは『データを活用して意思決定するための手段』とお伝えしていましたが、別の言葉で表すと『仮説を検証するための手段』とも言えます。つまり課題に対してどんな仮説があるのか、それをデータを用いて検証するのがデータ分析です。

そのためにはどんな仮説を持っているのかを十分に考える必要があります。逆に仮説がないとどんなデータを見たら良いかも分からない状態だと思うので、とりあえずデータを見て考えよう、というよくある失敗パターンに陥りやすいです。

ちなみにデータ分析には大きく2種類あります。それは『仮説検証型データ分析』と『探索型データ分析』です。

2種類のデータ分析

『仮説検証型分析』がまさに今回の『Data Analytics Seven Steps』に該当する分析です。多くの分析はこのパターンに当てはめて行う方がデータ分析の価値を出せると思っています。

一方で『探索型データ分析』=EDA(探索的データ分析)とも呼ばれている分析もあります。これは明確な課題や仮説を持たずにデータを見ながら課題や仮説を検討するための手段です。EDAはデータサイエンティストが使う分析手法の1つという印象で、いわゆるビジネスパーソンがEDAを使うケースは少ない印象です。
データサイエンティストのようなデータを専門に扱い、かつより高度な知見も求められる場合にはEDAを使ってデータの構造を理解したり、課題や仮説を考えるやり方もあるかもしれません。
しかし、一般的なビジネスパーソンであれば探索的にデータを見るよりは、まず仮説を考えて、仮説を検証するためにデータを見る方が効果的だと思います。

いずれにしても大事なことはデータ分析をする際に探索的にするのか、仮説検証型にするのかを明確にすることです。仮説検証型であれば、どんな仮説があるのか事前に考えておく必要がありますし、今回の7つのステップに当てはめながら分析をするのが良いと思っています。

よく、『データの海に溺れる』という表現をすることもありますが、仮説がなく闇雲にデータを見ようとすると結果的に意思決定に繋がらないことが多いです。データ分析は『仮説を検証するための手段』という意識を持って、必ず仮説を考えておきましょう。

3.想定【Assumption】

Data Analytics Seven Steps

課題があり、仮説も考えたら次に考えることは仮説が検証できたら何をするのか事前に想定アクションとして考えておくことです。
データ分析の際に、このステップを考えずに行うパターンが非常に多いように感じます。これが考えられていないからこそ意識決定にも繋がりにくい分析が多い気がします。
その意味で、分析の前に想定アクションを考えておくことは非常に重要だと思っています。

例えばECサイト運営者がサイトの売上を上げるために特定のカテゴリの製品だけ割引クーポンを発行しようと考えているとします。その時にカテゴリ別の売上を集計して結果に応じて次のような想定アクションを考えます。

  • カテゴリ別の売上が1番少ないカテゴリに割引クーポンを発行する

  • カテゴリ別の売上が100万円未満のカテゴリに割引クーポンを発行する

このような意思決定が事前に想定されているのであれば『カテゴリ別の売上』の数値を見ないと意思決定ができないため、データ分析の必要性が発生します。

データを見てその結果に応じてどんな意思決定パターンがあるのか、事前に想定アクションとして考えておくことがデータ分析ではとても重要です。この想定アクションがないとデータを見て終わり、データを見てから考える、のようなデータ分析でよくある失敗パターンになりやすいです。

実際のデータ分析をする前に事前にデータの結果に応じて具体的なアクションを考えておくことはできるはずです。もしこれを考えられていない場合は『データ分析した結果でどんなアクションに繋がりますか?』と問いを投げかけてみると良いかもしれません。

逆にあまり良くないデータ分析の例としては、分析をする前から意思決定が決まっているパターンです。
例えば先程の例で言うと、クライアント先のゲーム販売担当者から、ECサイトでのゲーム関連製品の売上が良くないので、何とかして欲しいという要望があった時に、ゲーム関連カテゴリの割引クーポンを発行することが事前にもう決まっているケースもあります。その時に『カテゴリ別の売上を確認したい』というデータ分析依頼がきても正直分析としての価値は低いです。
なぜなら分析の結果にかかわらずゲーム関連のクーポンを発行すると言うことが決まっているので、分析をしてもしなくても、結果がどうなっていようと意思決定が変わらないからです。

このようなケースは実際の仕事の中でもかなり多いと思います。何となくデータを見たいなどのパターンではそもそもデータ分析をする必要性はかなり低いです。
気持ち的にはデータを見て安心したいという人間的な心理は理解できなくはないですが、そういった分析の優先度は積極的に下げるべきです。

また、同じようによくある例として、ECサイトで『男女別、年代別の売上を見たい』などのケースも想定アクションが考えられていないパターンが多いです。
単に情報として把握するだけ(探索的データ分析に近いイメージ)であればまだ割り切って良いかもしれませんが、男女別、年代別の売上を見たところで何かしらの意思決定に繋がるケースは少ないと思います。
男性だけに何かをしたり、特定の年代だけにアプーチする、みたいなアクションを取るケースは少ないので、具体的なアクションや意思決定に繋がらない分析と言えます。

意思決定に繋げるための良い分析のイメージとしては事前の想定アクションとして選択肢を3つほど決めておき、データ分析の結果を見てその3つからどの選択肢にするかを意思決定する、くらいのストーリーを事前に描けている方が良いと思っています。

また、もう一つ大事なポイントとしては意思決定者が誰なのかを事前に把握しておくことです。想定アクションで考えた内容は最終的に意思決定に直結する内容なので、誰が意思決定できるかを事前に握っておくことも重要です。意思決定者がいない、誰かわからない中でデータ分析をすると最終的な意思決定に繋がらないパターンが多いです。なので想定アクションを考えた時に、その判断をできるのが誰なのかを把握しておくことも重要です。

もしデータ分析をする際には、事前に『そのデータを見たらどんな意思決定につながりますか?』『そのデータを見たらどんなアクションにつながりますか?』の問いを投げかけてみることで想定アクションを明確にすることをお勧めします。

4.分析【Analysis】

Data Analytics Seven Steps

課題を設定し、仮説を考え、それに対しての想定アクションまで考えたら実際に分析するのがこのステップ4です。いわゆるデータ分析はここに該当します。

一般的に『データ分析』と言うとSQLを使った分析、Pythonを使った分析、BIを使った分析、など具体的な手法の話になりがちですが、まずはステップ1〜3までの『課題』、『仮説』、『想定』、を事前に考えてから実際のデータ分析を行う必要があります。

このステップは実際にデータ分析をする作業者にとってはとても重要なステップで、データエンジニア、データアナリスト 、データサイエンティストが特に意識して欲しいステップです。
実際に分析で使ったSQLのクエリやPythonのコード、統計学的な手法など
どんな課題に対してどんな手法でデータ分析をしたのかをまとめることも非常に重要です。具体的な手法をまとめることで、ナレッジとしてためることもできるので、その意味でも分析そのものをドキュメントとしてまとめられるとより良いと思っています。

SQLやBIツールなどが使えず、自分で分析ができない人にとってはデータエンジニアやデータアナリストに分析を依頼することになると思います。その場合もステップ1〜3までの内容を事前に分析者に適切に伝えてデータ分析をしてもらうことが重要になります。
『その仮説を検証するなら、〇〇の分析をした方が良いと思います』のような、課題や仮説に対する適切な分析手法を議論することも必要です。その議論をするためにも分析の課題や背景を事前に言語化してコミュニケーションをとることが重要だと思います。

逆にSQLが書けたり、BIツールを使える人は自分で分析をすることもできるのでコミュニケーションやスピードという観点では1人で完結できる分より良いかもしれません。特にSQLが使えるとある程度自由にデータを取得することができますし、データ分析で使うSQLはビジネスパーソンなら誰でも習得することができます。

個人的にはビジネスパーソンがSQLを覚えて、1人で分析が完結できると施策検討や振り返りなどのPDCAを高速に回すことができるのでお勧めです。もちろん、データ分析専門の組織などがある企業ではうまく連携しながらデータ分析をすることは重要ですが、自分でもいつでもSQLを使ってデータ分析ができる状態にしておくことも重要です。もしデータ分析で使うSQLを学びたい方がいれば是非こちらの本がお勧めです(PR)。

5.結果【Fact】

Data Analytics Seven Steps

5つ目のステップは分析した『結果』をまとめることです。ステップ6の『考察』とも関連しますが、結果に関しては『事実』と『意見』を分ける必要があります。

有名なドラッガーの『コップの水理論』でも事実をどう解釈するかか重要になっています。

「コップに『半分入っている』と『半分空である』とは、量的には同じである。だが、意味はまったく違う。とるべき行動も違う。」

P・F・ドラッカー『イノベーションと起業家精神』
  • コップに水が半分『も』入っている

  • コップに水が半分『しか』入っていない

このよう、同じ状況をどう解釈するのかは人によって、企業によって、その時の状況によって変わります。

つまりここで言う『結果』とは『コップに半分水が入っている』という事実だけを取り出すイメージです。
それに対しての解釈は次のステップで考えるため、事実と意見を分けるという意味で、ステップ5は結果(事実)の共有が重要です。

『数字は事実を表すが真実とは限らない』という言葉もありますが数字は良くも悪くも数字でしかありません。それ自体は事実ではありますが、その数字の裏側に隠れている本当の意味や背景を考える必要があります。なぜその数値になったのか?など真実を考察するのが次のステップになるので、ここではあくまで事実としての『結果』をまとめる必要があります。

6.考察【Consideration】

Data Analytics Seven Steps

実際に分析した結果が出たらそれをどのように解釈するのかを考えるのがステップ6です。データ分析とは『データを活用して意思決定するための手段』であり、『仮説を検証するための手段』とも説明しました。つまり仮説を持って実際のデータ分析をした結果を見れば(ステップ1からステップ5までを行えば)その仮説が合っていたのか間違っていたのかはある程度判断がつきます。
ただここで大事なことは、なぜ仮説が合っていたのか?なぜ仮説が間違っていたのか?を改めて考察することです。
結果だけをみて表面的な判断をするのではなく、その奥にある本質的な部分をちゃんと考えることが『考察』のステップでは重要になります。

先ほどの例でお伝えした、コップに半分水が入っている状態を「コップに水が半分『も』入っている」なのか、「コップに水が半分『しか』入っていない」と解釈するのかを考える必要があります。
そのためにはなぜ『コップに水が半分入っているか』を考察する必要があります。これも人によって、時期によって、状況によって考察の内容が変わる可能性はあります。

例えば、元々はコップの水を飲み切った状態で、誰かが親切で水を分けてくれたのであれば、コップに水が半分『も』入っていると解釈できるかもしれません。逆に元々はコップにたっぷりと水が入っていた状態なのに、誰かがこぼして半分にしてしまったのならコップに水が半分『しか』入ってないと解釈できるかもしれません。
後者であれば減ってしまった水を補給することが次の行動として必要かもしれませんが、前者の場合であればそもそも水を欲していない可能性もあるので水を補給することで逆に迷惑と感じる可能性もあります。
このように事実をどう解釈するかによってとるべきアクションも変わります。

大事なことは単に事実だけに目を向けるのではなく、その背景にも目を向けて考察することです。単に事実だけを見ても正しい意思決定には繋げられるとは限りません。

また、『考察』の際にはステップ3で事前に考えていた『想定』と異なる結果が出る可能性もあります。
例えばステップ3の想定アクションで『カテゴリ別の売上が100万円未満のカテゴリに割引クーポンを発行する』と考えていたとして、実際に分析してみたら100万未満のカテゴリが10件中7件あったとします。
想定していたものよりも多くのカテゴリで売上が良くないと言う事実がわかった時にそれをどう解釈するのかは判断が必要です。

このようにステップ3で考えてた想定アクションはあくまで『想定』なので想定と異なる結果になることはよくあります。
その時に事前に考えていた想定アクションと、結果を見て、どう解釈するのかを考えることが重要になります。

7.決定【Decision】

Data Analytics Seven Steps

最後のステップは『決定』です。これまでの分析結果を元に最終的にどんな意思決定をするのかを判断するステップになります。
意思決定するとは具体的な行動に繋げることです。課題に対して仮説を持って分析をして、実際の数値が確認できて、その数値をどう解釈するのかを踏まえた上で最終的な意思決定=ネクストアクションを決めます。

何を意思決定するかについては、ステップ3の想定アクションで考えたいくつかのパターンのうちどれを採用するかを意思決定する、というのが最もシンプルなパターンです。

例えばステップ3で以下のような想定アクションを考えていたとします。

  • カテゴリ別の売上が1番少ないカテゴリに割引クーポンを発行する

この時、カテゴリの売上が一番少ないのが文房具だっとデータ分析結果から分かったとしたら、文房具に割引クーポンを発行するという意思決定ができます。想定アクションを事前に決めておくこと、最終的な意思決定はいくつかの選択肢から適切なものを選ぶだけになり、意思決定コストを削減することもできます。

もちろん分析した結果、想定と違う結果が出て、それらを考察した結果、当初想定していたものと違う意思決定をする場合もあります。その場合はステップ4から6までの分析、結果、考察、で最終的にどんな考察をするかによって最後の意思決定内容が変化します。

繰り返しになりますが、データ分析とは『データを活用して意思決定するための手段』です。大事なことはどんな意思決定をするかです。データ分析の結果からどんな決定をしてどんなアクションにつなげるかが非常に重要です。

『Data Analytics Seven Steps』の具体例

ここからは『Data Analytics Seven Steps』をどのように活用するのか具体例を交えて説明します。具体的な活用事例があった方がよりイメージが湧くと思うので、是非1つの例として参考としてみてください。

<ケース:総合ECサイトのマーケティング担当者>
※以下は全て架空のものです。また分析はかなり簡易的にしてあります。

1.課題【Issue】

2023年からECサイトの売上が減っている。何とかしてECサイトの売上を上げたい。そこで売上をKPIに分解すると、2023年から1人あたりの購入金額が減っていることが課題だと分かった。

2.仮説【Hypothesis】

ユーザーの商品購入には何か傾向があるのではないか。例えば商品Aを購入している人は商品Bも一緒に購入しているのではないか。

3.想定【Assumption】

仮説通り、商品Aを購入している人は商品Bも一緒に購入しているのであれば、商品Aを購入しているユーザーで商品Bを購入してないユーザーに商品Bをメールでおすすめして1人あたりの購入金額を増やす。

4.分析【Analysis】

DWHに商品の購買データが入っているので以下SQLを使って分析する。

①商品別の購入者数分析用SQL

WITH order_product AS (
    SELECT
        o.order_id,
        o.user_id,
        p.product_id,
        p.name,
        p.large_category,
        p.medium_category,
        p.small_category,
        u.gender
    FROM
        orders AS o
    LEFT JOIN products AS p ON o.order_product_id = p.product_id
    LEFT JOIN users AS u ON o.user_id = u.user_id
)

SELECT
    name,
    COUNT(DISTINCT user_id) AS uu
FROM
    order_product
GROUP BY
    name
ORDER BY
    uu DESC

②化粧水を購入しているユーザーが何を購入しているか

WITH order_product_user AS (
    SELECT
        o.order_id,
        o.user_id,
        p.product_id,
        p.name,
        p.large_category,
        p.medium_category,
        p.small_category,
        u.gender
    FROM
        orders AS o
    LEFT JOIN products AS p ON o.order_product_id = p.product_id
    LEFT JOIN users AS u ON o.user_id = u.user_id
),

target_users AS (
    SELECT DISTINCT
        user_id
    FROM
        order_product_user
    WHERE
        name = '化粧水'
    AND
        user_id IS NOT NULL
)
SELECT
    name,
    large_category,
    medium_category,
    small_category,
    COUNT(DISTINCT user_id) AS uu
FROM
    order_product_user
WHERE
    user_id IN (SELECT DISTINCT user_id FROM target_users)
GROUP BY
    name,
    large_category,
    medium_category,
    small_category
ORDER BY
    uu DESC

5.結果【Fact】

①商品別の購入者数
化粧品購入者:510
ボディーソープ購入者:505
入浴剤購入者:501
ハンドクリーム:493
コンディショナー:490
シャンプー:488
美味しい水:486

②化粧品購入者(510人)が他に何を買っているか
ボディーソープ購入者(日用品):482
入浴剤購入者(日用品):478
ハンドクリーム(日用品):472
コンディショナー(日用品):469
美味しい水(食品):467

6.考察【Consideration】

化粧水を購入している人はボディーソープも一緒に購入している人が多い。個別の商品で見ると別々のカテゴリではあるが、大きなカテゴリで見ると『日用品』という同じカテゴリである。つまり、日用品をまとめて購入する行動パターンが多い。日用品のまとめ買いを促進することで1人あたりの購入金額もあげることができそう。

7.決定【Decision】

まずは化粧水を購入していて、ボディーソープを購入していないユーザーに対して特別割引クーポンを発行してメールで合わせ買いを促進する。さらに効果がよければ他の商品でも日用品の合わせ買いを試す。

意思決定を意識したデータ分析を行う

データ分析で大事なことは『意思決定につなげること』です。どんな意思決定に繋がるかを事前に設計するために、データ分析を7つのステップとして活用できるとより意思決定につながるためのデータ分析ができると思っています。

もちろん『Data Analytics Seven Steps』がうまく使えないケースもあるかもしれません。意思決定者と分析担当者が違うとか、部門が分かれていて分析結果から意思決定できないとか、個別の企業としての事情に分析そのものがうまくできないケースもあるかもしれません。

ただ、データ分析を始める前に一度『Data Analytics Seven Steps』のような流れを意識することでデータを有効に活用することができると思います。また、1つ1つのデータ分析をナレッジとして貯めておくことも企業としても非常に重要なことだと思っています。過去実施したデータ分析は、後から振り返ることで、そこから新しい仮説が立てられたり、ナレッジとして貯めることで他の人にも共有ができるため、データ分析を意思決定に繋げるための組織作りとしても意味のあることだと思います。

ぜひ『Data Analytics Seven Steps』を活用しながら意思決定に繋げるためのデータ分析ができるような個人や企業が増えると、データの力が世の中に活用されると思っています。

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