色あつめ散歩〜オレンジ編〜

『カオスな物体』

中野という街に初めて行ったのは高校生の時。当時の私はジャンプ系漫画が大好きで、グッズ集めに夢中になっていた。漫画好きなら秋葉原・池袋・中野には行かねば…と、主に池袋を中心とした聖地へ片道1時間以上かけて通っていた。今期は良作ばかりだ、よし明日原作を全巻買おう。と、バイト代のほとんどを注ぎ込んでいた頃が懐かしい。

社会人になってからめっきり漫画やアニメの世界から遠のいてしまった。けれど思い返せば、建物巡りでタイルや窓などの写真を撮って収集することは、漫画を全巻集めることや、好きなキャラクターのグッズを買うこと、ガチャガチャでキーホルダー全種類揃えるまでやり続けたり、ゲームでスチルをコンプリートする…。何かに取り憑かれたように収集することの楽しさや喜びを教えてくれた存在だった。

半年前、久しぶりに中野へ行った。スパイスカレーを食べて、長いアーケードを抜けて中野ブロードウェイへ。今行っても天国だった。独特なカルチャーのにおいをぷんぷんに感じ、堪能した後に付近を散策してみることにした。

（帰りに見つけた、オレンジテントのマンション。）

夕方になれば活気が出てくるであろう飲屋街を少し入ったところ。路地を入ると目の前にすこし不気味なオレンジ色の建物があった。『カオス…。』なんて中野っぽい建物なんだろう。中野という街が具現化されたようなこの雰囲気。どんなお店があるのだろう、と階段を登って2階へ行ったところで断念した。お昼間でも暗くてちょっと怖かった。けれど入っているお店の名前を見て、また夜の姿を見てみたいと思った。愛すべき中野。

『ひらがなってかわいい』

人生2回目の柴又に行った時。昭和レトロ空間な喫茶店「セピア」へ行くことが目的だった。駅前の寅さん銅像と写真を撮り、Instagramのストーリーに載せ、お店のある賑やかな通りへと向かう。

（喫茶セピアの店内はポップな色合いで本当にかわいい。）

小さい頃に母と観光バスに乗って日帰りツアーに参加したことがあった。人気の観光スポットを巡り、ぞろぞろとまたバスに乗る。途中、パーキングエリアで小学生女子の8割は通るであろう趣味、光るイルカのキーホルダーを買ってもらったりした。帰り道には車内のモニターから流れる映画を見るのがお決まりで、ツアーに参加した5回中、2回は寅さんの映画が流れていた。何かしらで揉めて言い合いばかりだな、と当時は感情移入しまくりだったけど、あの賑やかな感じを今の年齢になって観たらきっと、人間くささも理解できて面白がれるんだろうな、と思ったり。

（喫茶セピアの床。クラシカルな模様もすてき。）

寅さんミュージアムに行こうかと思ったけど、日が暮れそうだったのでまたの機会に。お目当ての喫茶店や建築が見れてでほくほく気分だったので、数駅歩いて帰ることにした。1時間程だろうか。スナックがいくつか並ぶエリアに着いた。「めーとる」というネーミングセンス、ひらがなのやわらかな印象。装飾テントの形もかわいらしい。室外機に鉢植えを置いているところもたまらない。こういったお店の前に置いてありがちなアロエ系の植物（葉がジューシーな厚みのある感じ）を見ると、おばあちゃんがやっていた焼き鳥屋の入口を思い出す。ジーンとなったところで、電車に乗って居酒屋へと向かった。

『ハクナマタタと鮮やかマンション』

この壁からは想像がつかないかもしれない。この建物がマンションであるということに…。去年の夏、ひいひい汗をかきながら駅から目的地であるマンションへと歩いていた。早くネットで見た外観を実際に見てみたい！！！その一心だった。駅からはまあまあの距離があり、暑さもあって画面に表示されている推定到着時間より長く感じる。

この日は珍しく早起きをして、午前中に映画「ライオンキング」を観に行った。映画の中のシンバの肉球やほわほわな毛並みにノックアウトされ、そのかわいさに終始涙腺緩みっぱなしだった。かわいいという感情が一定値を超えたら涙が出てくる。パレードの時、動くミッキーを間近で見た時に可愛すぎて泣いたことがある。と、シンバの成長に感動した私は余韻に浸りながら情熱カラーなマンションへと向かう。脳内はずっとハクナマタタが流れている。

道路沿いを歩いていると見えてきたオレンジ色の四角い箱。ああ、やっと着いた。近づくにつれ派手さが増していく。異彩を放つ建築家の梵寿綱が手がけた、赤やオレンジ色の花柄模様が散りばめられたなんとも可愛らしいマンションだ。私はこれが見たかったの！！！住人の方に迷惑をかけないように、外観をあらゆる角度から眺めていく。通り沿いには90年代ちっくなカメのイラストが描かれたテントがあった。何のお店かは忘れてしまった。

あー、わかる。私は癖を求めてる。やっぱり私は梵寿綱の建物が好きだなあ〜〜ハクナマタタ〜〜と、好きを再確認した日だった。

〜ほかの色たち〜