アールデコの館〜旧朝香宮邸〜
すこし前のお話。
国立新美術館で開催されていたマグリット展(2015年)を鑑賞し、興奮冷めやらぬまま 白金にある旧朝香宮邸へ行くことにした。
ここまでなんて良い流れなんだ…!と、音楽を聴きながらルンルン気分で目的地へ向かう。
白金台駅からは歩いて7分ほど。
ちょっと日も暮れてきた。
これは早く外観写真を撮らなくてはいけない。
少々焦りながらチケットを購入、緑に囲まれた道の先にはアール・デコの館…旧朝香宮邸のお目見えだ。
本などで見てわかっていたはずなのに・・・。
「すっっごいシンプル…飾らない姿がかっこいい。そして、なんたる気品…!」と改めてその姿にときめいてしまう。
設計は権藤要吉…
ん・・・?
調べてみたら旧李王家邸(赤坂プリンスホテル旧館)現:赤坂クラシックハウスの設計も!はっ 確かこちらも狛犬が…。
クリーム色の外観からかすかにオレンジ色のあたたかい明かりが。美しい。ああ、早く入りたいな。
うずうずした気持ちを抑えきれない。
でも、私は大人。
スマートにいきます。
思わずにやけちゃうけど。
***
フランス滞在中、アール・デコ博覧会にてその美しい洗練されたデザインに魅了された朝香宮夫妻の「アール・デコ愛」の詰まった建物。
内部はもう…外観とのギャップにやられてしまう。
あんなに外はシンプルなのにこんなにも豪華で煌びやかな空間だなんて 誰が想像できたでしょうか、です。
内装(接客スペース)担当はフランスの装飾作家アンリ・ラパンさん。
ラパンさんは1925年に開催されたアール・デコ博覧会で色々なパビリオンのインテリアデザインを担当していたらしい。
なんと設計料は2万円。
こうやって見るとピンとこないけど、当時の公務員の初任給は75円。
この計算でいったらおよそ22年分のお給料という…。
ひいい!
香水塔は、本来 照明器具で、電灯の熱で香水を気化させるものらしい。
おしゃれ過ぎる。
この香水塔があるお部屋…この空間は普通だったら思いつかない、なんとも贅沢なスペースになっている。もう余裕しか感じない。
そして、フランスのガラス工芸の巨匠ルネ・ラリックの斬新なデザインのシャンデリアは圧巻。
天井も高く、ガラスに反射した明かりがキラキラと輝いている。
その姿に思わずうっとり。
なにもかも計算しつくされているのだ。
ラリックといえば、箱根ラリック美術館だ。
いつも星の王子様ミュージアム(大好き)に行ってしまうので、今度必ず行ってみようと心に誓う。
どこを見ても細かな美しい装飾。緊張しちゃう…。
随所にアール・デコデザインが散りばめられている。
他にも幾何学模様も多く用いられていて、幾何学模様好きには
たまらない。気品ある幾何学模様だ。
そして、豪華な金や銀と木の組み合わせが、絶妙なバランスすぎて…。
流石というか、なんというか「見たことない」が沢山ありすぎて脳が追いつくのに時間がかかる。
とても刺激的な空間だ。
すこし暗く、裏側感のある奥の部屋には古めかしい金庫があった。秘密な雰囲気があって不思議な空間。
建物内部の豪華さに感動した後は新館へと移動。
作品を夢中で鑑賞していたらだんだんと陽が落ち始め、薄暗くなってきた。
違う角度から外観を撮影したかったので、急いで外へ。
(そして出口がわからなくなる。大事な時に方向音痴発動しがち。)
***
お庭から南側外観を眺める。
窓からは大客室からのオレンジ色の明かりが見える。
明るい状態、暗い状態の2パターンが見れるとなんだか得した気分になり、ぼーっと棒立ちで眺めていると『ここには自分1人しかいないんじゃないか』と錯覚してしまう。
これが洋館スパーク現象なのだろうか。
建物自体はとても豪華で現実離れ感があるけれど、外から見える窓からの明かりの安心感というのは普通の住宅と変わらないなあ…なんて。
そんな事に少し安心し、余韻に浸るためにカフェへと向かうのであった。
■旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)
■東京都港区白金台5-21-9
■鉄筋コンクリート造2階建て(一部3階建て)・地下1階
■昭和8年(1933)竣工
■設計担当技師 権藤要吉(宮内省内匠寮)
■国指定重要文化財
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