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「デザイナー」から「何か作る人」へ

こんにちは、こんばんは、おはようございます。
九州大学芸術工学部4年の松中光(@hikarumatsunaka)です。

ReDesigner for Student Advent Calendar 2023 という企画で、大学4年間の振り返りも兼ねて記事を書かせていただくことになりました。

就活応援の企画なので、もちろん少しは就活に触れながら書くつもりです。

しかしこの記事では、私が実践してみて、直接ではないけど間接的に役に立った「何か作る人」という考えを中心に話を展開していきます。


色んなもの作ってきた

私は工業設計コースに所属していますが、大学に入ってからは専攻に関係なく、色んなものを作ってきました。

例えば、サービスコンセプトの検討やアプリの画面設計以外にも、Webサイトを作って3DCGを埋め込んだり、大学寮祭のポスターやZINEを作ったり、その企画や広報をしたり、Swiftでプロトタイプを作ったり、Arduinoを使って電子工作してキネティックアート作品を作ったりなど。

対象を絞らずに制作することを意識しながら、大学生活を送ってきました。理由は、「色んなことに手を出した方が楽しい」というシンプルなことです。
そして、これを意識してみて実感したことは、デザイナーという肩書きから抜け出して、もの作りをすることで、自分のできることが増えて、さらに楽しくなるというループに入るというメリットです。

今回は、このデザイナーという肩書きから抜け出してみることに着目して、つらつら書いてみようと思います。

「デザイナー」に囚われること

最近感じていることですが、何かに名前をつけてしまうと、その名前が示す範囲に囚われてしまうことが結構あるんです。

言語学に関しては素人なので、感覚的な話ですが。

例えば、自分のことをデザイナーとして認識していた場合、自分の行動範囲に制限が掛かる気がするんです。自分が想像しているデザイナーの振る舞いをしてしまうというか。

だから、自己紹介するときは、相手が分かりやすいような肩書きにしておいて、自分の中ではもっと曖昧な定義でいいと思うのです。

「何か作る人」くらいで良いんじゃないか?

この曖昧な定義に名前をつけるとしたら「何か作る人」が良いんじゃないかという提案です。

私は、自分のことをデザイナーとして認識しちゃうと、自分の中でデザイナーがやりそうなことだけをしそうになるタイプの人間でした。

だから、自分を「何か作る人」くらいの抽象度で捉える方がいいんじゃないかなって、最近思っているわけです。
(デザイナーとして企業に就職したら、担当する領域はある程度絞られるわけだし。)

学生のうちに、「何か作る人」になることで良いことは、デザイナー以外の振る舞いをつまみ食いできることです。
例えば、何かサービスを世の中に出したいと思ったら、アプリ画面のデザインだけではなく、人を集めるためのコミュニケーションや開発するための言語習得、広告の出し方など周辺のことまで手を回す必要があります。

ちなみに、色んな領域を越境した経験は、就活の時に意外と活きてきます。
「デザイナーに本当に向いているか分からなくなってきた」という悩みは、就活生の多くが一度は考えることな気がします。しかし、越境した経験のおかげで、「自分はどの領域に取り組んでいる時が楽しかったのか?」と考えることができます。

「人を集めるために動いた時の方が楽しかったなー」とか「開発するためにプログラミングしたけど、結構楽しかった」など、デザイン以外のことがハマる可能性は大いにあると思っています。もちろん、「アプリ画面のデザインが面白かったから、これを突き詰めたい」となることもあり得ます。


【🍵休憩】 自分の就活について

大学1年の冬から大学3年の3月くらいまで、福岡のデザイン会社であるgazでインターンをしていました。業務内容はwebの設計から実装や、アプリ画面のデザインをしていました。

デザイン業務を通して、ネイティブアプリとwebアプリケーションの実装方法やビジネスサイドのことまで興味の範囲が広がっていきました。
そこで、趣味でフロントエンドの勉強をしたり、ProcessingやSonic Piを使ってプログラムを動かしてみたり、デザイン業務では扱わない範囲まで手をつけてみました。

色々手をつけている中で、結局のところ自分は「デザイン業務とエンジニア業務が同時にできるような場所に身を置きたい」と思うようになり、それを指針に就活をしていていました。

でも、これがまぁなかなか難しくて。そういう職種の募集って24卒ではあまりなく、そのせいで企業と面談しても「なんか違うな〜」となることが多かったです。


何かを作ってみる

何かを作れっていわれても、結局何を作ればいいのか迷います。
でもこのヒントって、意外と友達との日常会話に隠れていたりします。

例えば、2023年5月に制作した九州大学井尻寮の55周年記念ZINEも雑談がきっかけでしたし、2023年10月に制作した作品<prototype_i>も、山中俊治研究室の展示作品が好きな友人との雑談がきっかけでした。

日常会話の中で、「それあったら面白んじゃない!?」という瞬間を察知することが非常に重要です。

その瞬間が訪れたら、一回立ち止まって考えてみる前に、とりあえず雑に作ってみることをオススメします。
「いや、似たような製品とかサービスあるよ」だったり「お金かかるし、時間も取られそう」など、色々考えてしまいます。そんなことは良いんです。似たようなサービスがあっても、重要なのは自分で思いついて直ぐに実践するその行為であって、世の中のことはあまり関係ないのです。

そして、この「とにかく雑に作れ」ということが結構ミソだったりします。

これは、作ることのハードルを下げてくれるとてもいいの言葉です。
バナーなり、アプリの画面を作る時には、ラフ案やワイヤーフレームといった下書きを作るのは馴染みがあるでしょう。それと同じように、フィジカルなものでも、コピー用紙を丸めて見立てたり、ダンボールとガムテープで形を作ったり、iPhoneのカメラで撮った写真を印刷してコピー用紙に貼ったり、あえて雑に作ってみることで、試行回数を格段にあげることができます。何かものがあった方が、モチベーションもあがりますよね。

それと、雑に作った方が人に見せやすいです。
自分の作ったものを人に見てもらうのって、最初は怖かったりします。その要因の一つとして、「時間をかけて作るほど愛着が湧き、否定された時のダメージが大きくなる」ということがあります。なので、敢えて手をかけずに、パパッと作ったものの方が見せやすかったりします。その方が出戻りも防げますね。

<prototype_i>のプロトタイプの残骸

ここで大事なのが、先に実現可能性を考えないことです。

お金がかかりそうだとか、実装方法が分からないだとか、そういうことは後回しで大丈夫です。実装方法が分からないでも、後から調べて自分で学んでいけば作れるようになります。特に、今の時代ではChatGPTなどのAIチャットボットがあり、結構妥当な実装方法を提案してくれます。

この<prototype_i>という作品に取り組む際にも、Arduinoに関する知識はほとんどなく、軽く触ったことある程度でした。そこから、電子工作系のブログやChatGPTと対話しながら、基礎的な知識の習得からチュートリアル、実装まで持っていくことができました。

叩き台をChatGPTで作って、細かい変更は自分でプログラムを書き換えるという方法で進めました。

【🍵休憩】 制作の裏話

<prototype_i>と<prototype_r>という、本記事の序盤に出した2つの動画で紹介しているキネティックアート作品の制作について少し話します。

友人(@01_s_s_21)との雑談で「生物の動きに関する何かを作りたいね〜」という話をしていました。その数日後に、偶然アートイベントに出展できるチャンスをいただいて、制作が決まりました。(普通は、作品が既にあって、そこから選定して展示するようなイベントだったのですが、運営の方の粋な計らいで、参加させていただきました。)

展示まで30日間しかないにも関わらず、私と友人の二人とも電子工作は経験がなく、ましてやアート作品なんて作ったことがありませんでした。加えて、二人とも別の制作が重なったりで、余裕を持ったスケジュールが組めない状況でした。

そんな中でも、「できる限り二人で作業する時間を増やすこと」や「制作していない人から観ても、良い作品といえるか」「実装でわからないことがあったら、直ぐにChatGPTやネットに転がっているブログを参照すること」「最後の最後まで妥協しないこと」などを意識して、なんとか制作を終わらせて展示することができました。途中で、何度も取り返しのつかない失敗をしかけて、何度諦めそうになったことか。。もうヒヤヒヤでしたわ。

これだけ熱量を持って制作できた理由は、「本当にやりたい制作であったこと」と「今までやったことのないものに手をつけるワクワク感」「絶対的な締切」があったからだと思います。

<prototype_r> / photo by reogram_7stories

作ったら売ってみる

そして、自分で作る上でとても良い経験になるのが「自分でお金を出して作って、それを売る」ということです。

これは一見、ハードルが高いように思えますが、意外と簡単にできます。いわゆるハンドメイドの商品とかでも良いのです。

私の場合、最初に手をつけたのはZINEでした。ZINEはコンテンツ制作にかかる費用や印刷代などはありますが、大学生のバイト代があれば初期費用は賄えます。おすすめです。

自分のお金で何かを作って売ると、作ること以外の「どう売ればいいのか」というビジネス的な視点で考えるチャンスがあります。
当然ですが、お金が枯渇するとデザイン云々の話ではなくなります。自分でお金を出すことで、より能動的に動けるし、意外とカスタマージャーニーマップって役に立たなかったり、意外と感覚で作った方が売れたりなど、そういった発見が出てくるかもしれません。

また、学生が講義や短期のインターンでやりがちなのが「新しいサービスを考えて、提案するだけ」ということです。リサーチやプレゼンなどのスキルは上がりますが、予算を持ってそのサービスを進めていくことで得られる経験はできません。「教授や他の学生からはとても評価していたが、世に出してみたら全然受け入れられない」とか「その場のみんなには不評だったけど、リリースしたらすごい好評だった」などの経験も得られないわけです。

デザインのこと以外にも手をつけなければならない状況を意図的に作ることで、ビジネスサイドやエンジニアサイドの動きまで幅広く経験することができますね。

まとめ

この記事で私が一番言いたかったことは、「自分で領域を狭めずに、ものを作って楽しむことが大事」ということです。そのために、「デザイナー」というものを一回取っぱらってみたら、動きやすくなるんじゃない?という提案でした。

感想とか悩みとか何でもいいので、コメントいただけると嬉しいです!


ではまた👋


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