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デザイナー3.0の時代

15年以上前、大きな会社に勤めて三年くらい経った時のこと。

「これからの時代は、一人が複数のスキル持って、スキルの掛け算をしないと生きていけない」なんて話が、よく耳に入ってきました。

たとえば僕が仕事にしている「デザイン」というジャンルで言うなら
「デザイナーはエンジニアリングもできなきゃいけない」に始まり

「リサーチもできないと」「プログラミングもできないと」「心理学も」「経営も」などなど、とにかく「デザインだけじゃダメだ!」という言葉を何度も何度も耳にしました。

そりゃあ、何事もできないよりはできた方が良いかもしれない。当時の僕は深く思い悩み、単一のスキルしか持っていない(ように思える)自分に絶望したものです。




さて、あれから15年以上経過し、気がつけば僕もプロダクトデザインだけでなくいろんなことをやるようになれてます。

でも、なんか当時聞いていた「スキルの掛け算」というイメージと、今やっている状態って随分違うんですよね。

今回は、15年前の僕のように「あれもそれも習得しなきゃ…」と焦っている人のために「こんな考え方もあるよ!」という提案をしたいと思います。


僕の目線でデザイナーという職業について書いてみますが、それぞれご自分の職業に置き換えて考えてもらえればと思います。

では、順をおって説明しますね。


1.0=単一スキルのスペシャリスト

まずは、僕たちから見た「デザイナー」という職能の変化。その流れからお話していきます。

モノやサービスを考え、作り、一般のお客さんの目に入る、手に届くためには、おおよそこれくらいのお仕事が必要になりますよね。

企画、開発、製造、流通、広報、販売、などなど。(あくまで例です。実際にはもちろん、もっと多様な領域が存在します)

作ってから、たくさんの人を経由して、はじめて私たち「お客さん」の目に入ってきます。

で、デザイナーという職業はどんな存在かって言うと、そういう各パートをサポートする形で必要とされてきたんじゃないでしょうか。

僕たちプロダクトデザイナーであれば、開発に関わることが多いし、グラフィックデザイナーであれば広報に関わることが多い、というようなイメージ。

この図の縦長のボックス、つまり個別の領域に対応するデザイナーを、仮にデザイナー1.0と名付けましょう。

2.0=スキルの掛け算

さて、様々な技術革新(とくにデジタル化)が進んだおかげで、一人ができる仕事の範囲が増えていったことで

「俺は企画と開発して製造もしちゃうぜ!」とか

「メディアだけど店舗でもあるぜ!」みたいな

領域横断が可能になりました。

さて、そんな状況の中で求められるデザイナー像とは?
ここで出てくるのが、冒頭に書いた「スキルを掛け算する」という話になるんじゃないでしょうか。

かつては境界線があった部分を軽々と越境してしまう人材。

横断的な掛け合わせのスキルを持つデザイナー。
これを仮にデザイナー2.0と呼びます。
(またまた、生意気にカテゴライズしてすみません。)


3.0=全ての領域をなんとかする

ところで
「僕たちTENTはいろいろやっている」と最初に書きましたけど、何をやってるんでしょう。商品を企画して、設計して製造先を探して、在庫をかかえて広報して販売してます。

これを図にすると、こんな感じになるでしょうか。

全てが黄色く塗られました。
スキルの掛け算どころではない。すごい!でもちょっと待ってください。
僕たちは、全てのジャンルの知識と経験を持っている天才集団なんでしょうか?

実はそうではないんです。実際のイメージを図にすると、こんな感じになります。

縦ではなく、横。
職能とかそんなの関係ないんです。

職能ではなくプロジェクト(商品あるいはブランドなど)こそが、担当領域。だから、必要な知識と経験だけで勝負ができる。

これをデザイナー3.0と名付けます。


受け身なのか主体なのか


デザイナー1.0も2.0も、どんなプロジェクトを依頼されてもプロフェショナルとして対応できるぜという状態を理想としています。つまり受託型、受け身の状態

デザイナー3.0は、対応できるプロジェクトは限定的。でも、全ての職能ジャンルに関わることを理想としています。つまりプロジェクトの主体として推進していく状態なんですね。

デザイナーっていうと「依頼されたものをこなすのがプロ」と定義する人もいるかもしれません。そういう目線でいうと、もはやデザイナー3.0というのはデザイナーでもなくて。

職業が細分化される前の、根源的な「お商売」というものの自然な形なのかもしれません。

無理に知識を蓄える必要はなくて、根源的な「お商売」の形で、日々をなんとかすれば、結果的に「スキルを掛け算」に近い状態に辿り着けるのかもしれないです。

そして闇雲に知識や経験を蓄えるよりも「お商売」を実践しながら身につけるのは、何よりもとても楽しいことなんです。

デザイナー3.0、つまり根源的な「お商売」の形。ぜひ試してみてください。


僕たちの根源的な「お商売」の形、TENTのTEMPOを見てもらえると嬉しいです。




(この記事は、数年前に書いたこの記事を元にして作成しました。)


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