「自分の家族と他人の家族」
「ねぇ、なんでよ!私より、自分の家族が大事なの?」
妻は大声で怒鳴った。
彼はそんなつもりはなくて、「君の方が大事だよ」と言った。
それは本心だった。
けれど、自分の家族と、妻、どちらも同じくらいに大事な存在で比べること自体違う。そう、内心思っていることも事実であったが、
それを言うと、火に油を注ぐことになるのは分かっていたから、彼は妻には言えなかった。
こうなってしまったのは、自分が完全に悪いことだということは彼が一番に理解していた。
ここしばらく、彼は仕事も上手くいかずに、自分自身のことが嫌になっていて、自暴自棄になってしまった彼は、
妻には「夜に帰る」とだけ伝え、
その日は、一人で車を走らせ、誰とも連絡を取らずぼーっと海を眺め続け、これからどうしたらいいのか悩んでいた。
「夜には家に帰る」と伝えていた彼は、妻ことなど考えずに、自分のことだけを考えていた。
ふと携帯を見ると、彼の兄弟からの連絡と妻からの連絡で、LINEの通知や着信でいっぱいだった。
妻は心配して居ても立ってもいられず、彼の実家にも行き、彼を探し回っていた。
最終的に、彼は、妻に電話をして謝り、その後、妻にも言えていなかった悩みを話した。
そのことは、謝って許してもらえた彼だったが、
問題は、妻が彼を必死に探し回ってくれていた時に、1番最初に連絡を取ったのが兄弟だったということだ。
彼からすると妻よりも、兄弟が1番大事だから。
という訳ではなく、兄弟も普段から仲がいいこともあって、先に連絡を取ったのが兄弟だったということだけだった。
でも、妻からすると胸が張り裂けそうなくらい心配で必死に探し回っていた中で、最初に連絡をしてくれなかったのが悲しかったのだろう。
「ねぇ、なんでよ!私より、自分の家族が大事なの?」
妻は大声で怒鳴った。
彼はそんなつもりはなくて、「君の方が大事だよ」と言った。
それは本心だった。
けれども妻は、「口ではそうと言っても、行動をみるとそうは思えない。」と泣いた。
それを聞くと彼はそれ以上は何も言えなかった。
それからの彼は、妻のことをより想うようになった。
妻がどうしたら喜んでくれるのか、不安にならずにいられるかを考え行動した。
その時のことを「あんなこともあったね。」と話せるくらいの年月が過ぎた。
そして妻はいう。
「本当にあなた変わったよね。
いつも一番大事にしてくれてありがとう。」
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