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イギリスに咲く日本の花よ

1年のうち360日は曇り、、、
そんな天気じゃ体内でビタミンDなんて作られないだろ、、、
そんな四季の変化が乏しいイギリスの地でも、春の訪れ、しかも「日本の春」の訪れを感じられる場所がある。

それが我が家の庭だ。

我が家の庭には、一本の「八重桜」があるのだ。

高さ3メートルほど、幹の太さは直径20センチ程度。
小ぶりではあるが、花が咲けばその存在感は半端ない。
気付けばフェンスの上を越えてお隣さんまで悠々と枝を伸ばしてるから…そのうちへし折られるな。

しかしだ、イギリスの個人宅に桜とは一体誰が植えたのか?
以前の住人だろうか?それともその前の住人?…分からない。

ちなみに我が家は築67年。
年季が入っているように聞こえるかもしれないが、イギリスで築60年の家はそこらじゅうにある。
全く珍しくない。しかも普通に住める。

たまに水が濁ったり、屋根が雨漏りしたり、ドアの鍵がかからなかったり…そんなこともあるけど全然平気。
義父に言わせれば新築レベルだそうだ。(ウソをつくな義父)

話を戻そう。

5年前に現在の家に越してきてからというもの、私は毎年4月のこの時期になると、庭の桜が咲くのを待ちわびている。
だって私の中で春は、桜が咲いたときにやってくるから。
寒いのが苦手な私は、とにかく暖かい春が恋しいのだ。
特にイギリスの冬は暗く長い。
本当にどんよーーーーーりしている。
4月にはいってもまだ肌寒くて冬のコートを着たりもするけれど、それでも桜が咲くなら間違いなく春はそこにいる。

そんなだから、日に日に色濃く大きくなる桜の蕾をみると非常にワクワクするのである。
その様子はまさに春がやってくるカウントダウンの具現化だ。

プクプクの蕾に焦らし焦らされ。
桜のことなんて一日中気に留めなかったりする日もある。
それでもようやく花が咲いたなら、春の匂いを嗅ぎつつお花見だ。

イギリスの春の匂いは芝の匂い。
どのお家でも天気がいい春の日は芝刈りに勤しむ。
芝を刈ったあとの匂いはみずみずしく何とも言えない青臭さ?…と、とにかくいい匂いなのだ!(あ、きっと森の匂いだ!そうだそうだ!)

で、我が家のお花見は、ビールに枝豆ではなく紅茶にビスケットだけど、、、
普通に考えるとめちゃくちゃぼったくりな値段の屋台の焼きそばは食べられないけど、、、
夫は「what is お花見?」って毎年聞いてくる人だけど、、、

それでも日本にいた頃と同じように春の桜を眺められることを、間違いなく幸せと感じるのである。

家の中からも見える。
場所取りも必要ない。
優雅に独り占め。
私はロイヤルファミリー。(違う)

桜は私にとって春の代名詞であるとともに、日本そのものであるのかもしれないと、今この記事を書いていてふと思う。
幸せな気分になるのも、きっとキレイな桜を見ているから、暖かな春を感じているから、だけじゃない。
私は桜を通してそこに日本を見ているのだ。

今年、我が家の桜は例年になくたくさんの花を咲かせている。どの枝もネコのお腹並みにモフモフのモッコモコだ!
でも残念ながらそんなピンクのモフたちも、あと数日で散り始める。
つまりそれは、我が家から日本の気配が1つ消えてゆくことなのだと、私は今、初めて気付いたのである。