生(小)
生(小)
最近の私は粋な大人に一歩近づいた気がする。
「とりあえず生で!」
この誰もが一度は憧れるセリフを使いこなしているからだ。
ずっとビールの良さがわからなかった。
というよりお酒の良さがわからなかった。
自称大人のいう
「お酒を飲まなきゃ話せないことだってある」とか、
飲みニュケーションとかいう言葉は気持ち悪いと思っていた。
私はハライチの岩井のように心の中で
「酔っ払ってる時にしかできん熱い話って何なん!?」
と心の中で毒づいていた。実はね。
けど、好きな人たちと飲むお酒がだんだんいいなと
思い始めて、だんだんがどんどん進んで
いつの間にかお酒がすきになっていた。
いつもより陽気なみんなを見ると嬉しかったし、
だいすきな人たちがニコニコしているのを見ると幸せな気持ちになった。
いつもはクールなあの子が言う「だいすき」の言葉は何よりも
ドキドキした。
けど、まだお酒の味が美味しいとは思えていなかった。
何となく雰囲気がすき、それだけだった。
だから、おじさんとかがお酒の味を好きで一人でしっぽり飲んでいるのに
実は密かに憧れを抱いていた。
塩を肴に酒を舐める
みたいなのがえらく大人な飲み方に思えた、まずは早くビールを美味しいと思えるように
なりたかった。
人間の成長はいつも突然である。
ビールを初めて美味しいと思った日のことを今でも鮮明に覚えている。
先輩と中華料理屋さんに行った、外はジメジメしていてとても暑かった。
先輩が「ここの麻婆豆腐は美味しい」と言っていて、私は麻婆豆腐にそわそわしていた。
この先輩はビールをとても美味しそうに飲む人で、何となく注文の時に
私もビールを飲んでみようかなと思った、理由はよくわからないけど。
頼んだのはいいけど美味しく飲める自信があまりなくて
慌てて「生小で!」と言った。なんかちょっとカッコ悪いかなとか気になった。
けど、そんなこと全く気にならないくらいこのビールがたまらなく美味しくて、
何だこれはという気持ちになって、今まで美味しくないとか言ってごめんねと謝りたくなるくらいには美味しかった。
ビールは喉越しと言っていたおじさんの気持ちがわかるような気がしたし、
いっぱいめは絶対にビールだと鼻の穴を膨らましながら言うおじさんの気持ちも
何だかわかる気がした。
この日、私は少し粋な大人に近づいたのだ。
今は家で缶ビール片手に本読んだりしちゃってて、おじさん化に
たまに不安になったりするけど、ビールを好きになるきっかけをくれた
生(小)がいちばん好きです。いちばん美味しいです。
生(中)が主役みたいな顔してるけど
いちばんすきだぞ、生(小)!!
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