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私の鎌倉物語 〜浴衣で歩いた夏の日〜


あと数ヶ月で神奈川を離れることになっていた年の夏。

真夏に着慣れない浴衣を着て歩くことへの少しの心配と、大好きな街、鎌倉を浴衣で歩くというワクワク感。その2つが入り混じっていたことを覚えています。


友人は金魚柄、鮮やかなピンクの浴衣に黒い帯。
私は朝顔のような花柄、濃淡のあるブルーの浴衣に黒と金色の帯。
鎌倉駅近くの浴衣レンタル店で、二人メリハリがつくよう選びました。
手頃なお値段でしたが、年相応の落ち着きのある素敵な浴衣を着せていただきました。

この貴重な時間を当時半年前に始めたフィルムカメラで残したい。デジタルカメラでもパシャパシャ撮りたい。
浴衣を着て2台のカメラ。
大丈夫か、私…。

と悩んだ末、悩んだら持つ!というのがきっとカメラ好きの心情というもの。(数年前のことなので、昨今の猛暑と体力的に今はしんどいかもしれないですが。)

友人が選んで持ってきてくれたのは扇子と紙風船。
私は小さな瓶に入った透明のサイダーを撮影小物に持って行きました。

何も持たない日もあるけれど、小物を考えるのも誰かと撮り合う時の楽しみの1つ。
そう、やっぱり心配より楽しみの気持ちの方が断然勝っていたような気がします。


青竹色した竹林、少し見ごろを過ぎた紫陽花。
夏の陽射しにキラキラ輝く風景がとても綺麗で、カメラの重さなんてこれっぽっちも感じない。

暑くないと言ったら嘘になるけれど、「まだ歩きやすい日で良かったね。」と言いながら、お寺やカフェを巡って気づくと結構な距離を歩いていました。

浴衣散歩に誘ってくれてありがとうね


光と影。
ソーダ水の中のあぶくのようにシュワシュワとはじけながら消えて行きそうな7角形の玉ボケ。
現像からかえってきたフィルム写真たちは、記憶を一層綺麗に残してくれていて、それが今になっても嬉しい。

全てがお気に入りの写真になりましたが、大好きな花、凌霄花と写した1枚は1番夏の色をしているような気がします。

五感で感じるもの全てがいつもと違って見えた夏の日。
暑いし、疲れるし、という戸惑いをよそに、浴衣で歩くという非日常が色褪せない思い出を作ってくれました。

浴衣の代わりに心地よい疲労感を纏い、電車に揺られた帰路を思い出します。





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