まちづくりと自己実現欲求のはなし

 「まちづくり」という言葉が世に広まったのはいつの頃でしょうか。今ではもう当たり前のように人口に膾炙し、数えきれないほどの「まちづくり団体」が全国で活躍しています。多くの人は本業の合間を縫って、そのような活動に勤しんでいるわけですが、なぜ人はこうまでして無給の、ボランティアで活動を行うのでしょうか。
 その動機には3つあると思います。
 一つ目は、好きだから。
 歴史的、文化的な事業やモノが好きでそれを維持したいという想い。おまつり、舞踊、お城など。昔から馴染んできて、それが好きだから自分もやりたいというもの。
 二つ目は、危機感。
 自分たちが生活する地域が衰退していて、なんとか盛り上げないと住む場所もなくなってしまうという危機感。ただ住むだけなら別のまちに移り住めばいいじゃないかと思うけれども、人間は新しいことに挑戦しづらい。あるいは、その地域と生業が密接に関わってて今更、職を変えることはできない。
 三つ目は、そしてこれは、特に若い人が心の奥では思っているけども、口に出せないこと。
 すなわち、野心。
 自分の力を思う存分発揮してみたい、燃え尽きるくらいに何か大きいことをやってみたい、でかいことをやってみたい。
 そんな野心を持った若者が、大都市のベンチャー企業や老舗の大企業、世界を股にかけるインフルエンサーを向こうに回して何か大きいことをやろうと思ったときに残された武器は自分の今までの生きてきた場所。
 地域の魅力、資源、可能性。そんなものを武器に挑戦してみたい。新しいことをやってみたい。大事を成し遂げてみたい。

「強欲は、言い方は悪いが、善だ。強欲は正しい。強欲は働き者だ」
 40年も前の映画に登場したセリフですが、これも真理の一端をついていて、強欲なほどの何かをやりたいという気持ちは極めて巨大な力を生み出します。
  
 挑戦したいという野心と社会が求めている声が一つになった時、そこには個と公の共働が生まれます。
 「まちづくり」とは地域社会をよりよくしたいという想いと、何か大きなことを成し遂げたいという想い。
 この二つを一致させることができる活動だと考えるのです。

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