見出し画像

【最終回】大総合商社で金太郎飴にならない方法⑤ 〜発信のススメ〜

この投稿で、私の最初の連載が終わりを迎えます。これまでのものに比べて一番ライトであり、またnoteにおられる方からすると一番「当たり前」の内容になるのですが、最後までご一読いただけますと幸いです。

今回のテーマは「発信」。発信することの効果は、主に「対外」と「対内」に分類されます。前者の「対外」については、第三回の「Acknowledgeされ、その人の選択肢に入れ」という部分の入り口になります。

即ち、

発信することで、初めて認知される
認知されて、その人の選択肢に入る
輪が広がり、新しい仕事や成長に繋がる

という順序ですね。この「発信しない限り、誰にも気付いてもらえないこと」は皆様にとって自明だと思いますし、その後の話は第三回に記載がありますので、そちらに譲ります。
(実際に、このnoteを始めてまだ6投稿ですが、思いもよらぬ複数の方から反響をいただきました。ありがたい限りです。)

なので、今回は「対内的な効果」について主に綴っていきたいと思います。

効果① 思考・理解の深化 〜なんちゃって壁打ち〜

自分の中だけで考えていたり、自分の中で結論を出したりする限りにおいて、その「正誤」は全く問われませんし、ツッコミに対して準備をする必要もありません。

一方、何かしらの考えや意見、研究結果を他人に発信していくということを意識すると、途端に「ん?この前提条件って正しいのか?」「ん?こういうツッコミがあるかもしれないな」など、また時には、「ん?この英文法ってそもそも正しいのか?」といった自問自答が自動的に発生し、「何となく」で考えていたことを、より突き詰めることが出来ます。

(自分が体育会卓球部だったことはあまり関係なく)私は「壁打ち」のValueを非常に高く評価している人間です。自分の思考を深掘りしていくには、一人で考えるよりも、他人に伝えて、それに対して5W2H的に質問を返してもらうプロセスは何倍も効果的だと確信しています。

しかし、常に隣に「壁用の人」がいてくれる訳ではありません。そんな時、この「これを発信したらどうなるかな」を「壁」として、「擬似壁打ち」が出来るのです(そもそも壁は人間ではないので、どっちが擬似なのかはよく分かりませんが)。

これは一人二役的な壁打ちなので、第三者とやる程までには思考は深掘りされませんが、「いつでもどこでも出来る」という手軽さに鑑みると、非常に費用対効果の高い深掘りだと思います。内容の正確性が上がり、思考のレベルも上がる、これだけでもかなり魅力的な効果ではないでしょうか。

効果② 自分に対する「重石」になる

他人に発信するようになると、自分のやること為すことに対するプレッシャーが自然と増してきます。例えば私で言えば、

「あんな発信してるくせに、一緒に仕事してみると大したことないじゃん」

とか

「発信の時に言ってたことと、やってることが違うじゃん」

と言われないか、結構ビクビクするタイプです(笑)
そうすると、発信した内容をちゃんと遵守できているか、だけじゃなく、日々の行動が「他者からの目」を意識することで、律される部分があります。

例えば、私が「仕事に直接的に関係のない、社外の人と会うことの重要性とその効果」みたいな発信をしたとします。

その後、何かのプロジェクトが走り始め、それに忙殺され、ふと気付くと自身の仕事に関係のある人ばかりと会って日々が進んでいるとします。そうすると、「あ、自分であんなことを言ったのに、出来てないじゃん。来週それ用の時間取ろう」と考え、「自分で敷いた自分のレールに戻る」ことができます。

自分を強く律することが出来る人には意味のない効果かもしれませんが、「自分で自分を、自分のやりたいことをやるように縛る」というのは、結構有難い効果ではないでしょうか。

効果③ 視野が広がる

私は、所属部を中心とした先輩・後輩相手に「ホソマガ」と題して(ダサっ)、月に2回ほどのペースで発信をしています。当初の目的は、商社マンは兎に角「タコツボ」に陥りやすいので彼らの視野を広げてあげたい、というものでしたが、結果的には非常に自分の視野が広がっています。

私がここ最近発信した内容をリストアップすると、こんな感じです。

・アオアシから見た、チームメンバーとの付き合い方(前回note.)
・ダルビッシュ有の「発信」の影響力とその凄さ
・面前での面談の重要性と、社内人脈の重要性
・上場していることの意味とは?
・人事ローテーションの功罪
・取締役会、役員報酬のあり方
・GEと総合商社
・大企業内で膨張していく社内ルール

発信相手が社内なので、ある程度経営とか買収といったワードに引きづられている部分もありますが、読み手の「今日の仕事」と関係の無い視点からの情報発信を心掛けています。

このホソマガ(ダサっ)を始めてからは、「自分はどこからどういう学びを得ているんだろう」、「何か皆に面白いと思って貰える気付きはないか」と考えながら日々を生きるようになり、漫然と過ごす時間がさらになくなったことで、世の中が24色から36色のカラーになったような喜びを得ました。本を読んでいても、漫画を読んでいても、音楽を聴いていても、頭のどこかで「解釈」を試みてる脳の音が聞こえてきます。

そしてnote.を書くようになって、読み手の数が増えたことで更にこの意識が高まり、今は48色の世界にいる気分です。note.さん、ありがとうございます。

最終章の終わりに

まとめると、発信することで

・自分の認知度は上がるし、
・思考は深くなるし、
・自分をより追い込めるし、
・視野が広がる

わけです。いいことばかりじゃないですか?

これが何故「大企業の人向け」の内容になるかと言うと、大企業の人の大半は「発信しなくても生きていけるし、発信して叩かれるリスクがあるから、やらない」という状態にある人が多いな、と確信するからです。

大企業ブランドのお陰で、会社名を言えば知っていて貰えるし、そこから仕事が作れます。一方、大企業には何故か「目立ったことをする人を叩く」傾向があります。もちろん、そうではない会社もおられますが、少なくともこれがMajorityでしょう。なので、「発信することの費用対効果が低いように見える」のです。

でもだからこそ、そんな中で発信をしていくと、非常に競合が少ない中での勝負になるので、(大企業の人たちが気付いていない)上述のメリットを思いっきり享受できます。

これを読まれた大総合商社の方、大企業の方、小さい発信からでもいいので始めて見ては?なお、匿名はダメですよ、絶対実名。

本シリーズの終わりに 〜全方位に尖って「丸」に〜

全五回を読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

本記事から読んでいただいた方、ありがとうございます。もし宜しければ、他の投稿も思いを込めて書いておりますので、読んでいただけたら最高に嬉しいです。

一つだけ誤解が無い様に申し上げると、私は全く総合商社・大企業を卑下していないです。ただ、大企業に所属することによる副作用は思いの外大きく、最大の副作用は「気付かない内に、金太郎飴の一つになっていること」だと、心から信じています。

自社のみならず、「昔は三十六角形くらい尖ってたのに、今はairbnbのマークくじゃん」という人、よくいます。組織全体にそういう人は少しくらいは必要でしょうが、そういう人ばかりでは成長も発展もありません。

そうではなく、全方位に尖りすぎて正二百五十六角形、正千二十四角形になり、「遠くから見たら丸に見える」くらいまで自分は行きたいと思いますし、そういう人を少しでも増やしていけたら、という思いでこの連載を始めました。

非常に拙い文章ですが、まさに今回の記事が私の「重石」になってくれますので、恥ずかしい気持ちを抑えつつ、また記事を書いていこうと思います。

最後までご一読いただきまして、誠にありがとうございました。

細田 薫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?