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【新風三佳】・第13章(葬儀)

第13章・葬儀

【故人を尊む心あらば
   望む意志を尊重し
     安らかな眠りの地へと誘うべし】

   
『私が死んだら騒ぎ立てず
     静かに送り出して欲しい』

祖母が私との会話の中で言った言葉である

その祖母が言った言葉の意味をまさか
葬儀の場で知る事となるとは葬儀に向かう
私には想像すら出来なかった。

夫Yさんと再婚し暫くしてすぐに
喪服一式を準備してくれていた事に
今更だが感謝しかない。

訃報は予期せぬ時に突然訪れる
だからこそ夫Yさんの言葉を
今なら理解できる

当時、夫Yさんが

『もしもの時の為に一応、 
俺と三佳ちゃんの喪服を作っておこう』と

言っていたのだ!!

今、そのもしもの時で夫Yさんが準備してくれていた喪服を着て車を走らせている。

暫くして葬儀会場に到着し叔父や他の親族や
祖母が親しくしていた関係者などが
一斉に集まっていた。

そこには当然だが母親(実母)も居た!

父親(実父)や母親(義理)や兄(実兄)はいない。
何故なら連絡を取れたとしても母親(実母)が
出席する事もあり控えたのかも知れない。

出席されている方達に軽く挨拶をした後に
祖母が眠る棺へと向かった。

棺から祖母の姿を見て身体が強張った。

『お婆ちゃん!!  こんなに痩せて!』と

溢してしまったのである。

それほどまでに祖母の身体は
痩せ細っていたのである。

入院してからは祖母の意思を尊重し病院に
顔を出せなかった事もあり祖母の身体の変化を目視で確認する事が出来ずにいたのだ。

『まさかこんなに痩せていたなんて⋯』

電話での祖母の声質が元気だったからか
昔とそれほど姿は変わっていないだろうと
思っていたのである。

だがその考えは軽率な考え方だったと
この時、祖母の姿を見て改めて痛感し強い
後悔の念を抱いた事を今でも忘れられない。

そんな中、
葬儀が始まり読経が読まれ読経が終わる。

その後に⋯

『お母さぁ~ん!
     どうして逝っちゃうのぉ~!!』と

突然、母親が棺に抱きつき
泣き始めたのである。

『えっ!!』と母親の突然の行動に驚き

その光景を見ながらハッ!!と
気付いたのである。

この光景を祖母は生前に見ていてあの言葉を
私に残したのではないかと!!

『このことか⋯』と

呟いてしまうほど驚きの
光景だったのである。

叔父と私や他の出席者達も椅子に座り涙を
拭いながら慎重な面持ちで祖母の冥福を祈り悲しみに耐えていた。

母親はまさに感情の赴くままに
         行動したのである。

娘ならば仕方ないかも知れない。

でもその光景を祖母が喜んでいるとは 
私には到底思えなかったのである。

何故そう感じでしまうのかは
自分でも分からなかった。
祖母が残した言葉と目の当たりにしている
今の光景が望む意思とは
真逆だったからかも知れない。

そんな母親(実母)の行動も落ち着きを
取り戻し暫くして皆が1つのフロアーで
休息する事となる

そしてこの時、母親(実母)は
私に近づきこう言ったのである。

『三佳は悲しくないの?
   なんでそんなに冷静なの?』と

暴言を吐いてきたのである。
夫Yさんが席を外し居ない事を見計らい!!

私はこの時、母親に祖母の想いを伝えるかの如くこう返した事を今でも忘れない

『悲しいよ!
 お母さんが思っている以上にね!!
 だけどね!
 静かに送り出してあげようよ
 きっとお婆ちゃんはそう願ってる』と

応えると黙って聞き
     そのまま離れて行ったのである。

その後、着々と葬儀は進み祖母との最後の
お別れも終わり皆が帰宅の準備をしていた!

ふと叔父の事が気に掛かり目線を
         向けた事を思い出す。

喪主となり丁重に出席者の方達の対応をする
叔父の姿は何処か苦しみに耐え疲労を隠し
毅然とした態度で行っていた。

母親の目に移る行動とは真逆だがそこには
目には映らぬ計り知れない程の悲しみと
痛みを抱え喪主となり立っている叔父の
悲壮感漂う姿があったのだ!!

『叔父さんはきっと1人になったら
    思いっきり泣くんだろうな!
      きっと私以上に辛いだろうな!』

そう思いながら夫Yさんの
運転する車で自宅へ
帰ってきた事を思い出す。

【目に映るは全てでない
  目に映らぬ想いこそ労るべし
    尊き者 失う悲しみ心が叫ぶ
            焦がれし想い】

日々は変わらず過ぎて行く⋯

そんな中、叔父から祖母の遺品整理の為に
私達に声がかかったのである。

そして後日、

その遺品整理に赴いた祖母の自宅でまた
母親の醜態を見る事となる。

   欲に囚われた醜い母親(実母)の姿を⋯


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