列国金文の例_商周青銅器銘文選_

2019/01/21 金文の研究を「タイポグラフィ研究」と称しているけれど

私は「タイポグラフィ研究」と称して金文書体の研究をしている。
私が研究している、中国の戦国時代の金文(列国金文/注1)の形は明らかにそれ以前の金文(西周金文)と違っており、
文字の形によって言葉そのもの以外の印象(厳正な、とか神秘的な、とか)を伝えようと意図した形をしている。
これはまさに文字のデザインである。
しかも、漢字の歴史の中では時代が最も古い。
文字デザインの始まりと言ってよいと思って、とても注目して研究している。

文字のデザイン=タイポグラフィだという前提で、「タイポグラフィ研究」と称しているのだけれども、
最近、そこのところが「=」ではなさそうだと思っている。

現在、「タイポグラフィ」を称する書籍や雑誌特集で、レタリングや手書き文字などが扱われるのは普通(注2)だけれども、
百科事典やデザイン事典などを参照すると、本来の意味である「活字の/活字を使ったデザイン」(注3)という意味が載っていて、「手書き文字は含まない」とされる場合も多い。
なので、手書き文字である金文や篆書は「文字のデザイン」とは言えても、「タイポグラフィ」とは言えないのかな、と思う。現時点では。

今後、「タイポグラフィ」の辞書上の定義が変わっていく場合もあるだろう。
「タイポグラフィ」に限らず、言葉の定義って時代によって変わるものだけれども、
学術研究上、そういう言葉の扱いってどうなるんだろうか。
「学術用語」は定義が変わらないものなのだろうか…


注1:見出し画像参照。画像は全て、馬承源『商周青銅器銘文選』文物出版社 ,1990 からの引用です。

注2:例えばこんな特集こんな書籍など

注3:『マイペディア 電子辞書版』日立システムアンドサービス, 平凡社, 2005/
『現代デザイン事典 2015年版』平凡社, 2015/マイケル・アルホフ,栄久庵祥二 訳『現代デザイン事典――変容をつづけるデザインの諸相』鹿島出版会, 2012 など


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