私たちは互いに関係しあって生きている。
「私たちは互いに関係しあって生きている」
わたし と あなた
わたし と あなたたち
わたし と 環境
あなた と また他のあなた
保育の現場でこどもたちと過ごすとき、
その事実をより一層強く感じずにはいられない。
先週末訪れた軽井沢風越学園の「かぜあそびの日」。
この一場面もそれをとても感じる時間だったので、ここに書き残しておきたい。
***
はぁーっと息を吐くと、白い息がでる。
歩くたびに、ぎしっぎしっと霜柱が音をあげる。
顔を上げると、裸んぼうになった木々と灰色がかった空が広がる。
前日から気温がぐっとさがった軽井沢の自然は、
すっかり「ふゆ」の姿で私たちを待っていた。
「かわ、いきたい。」
保育者のしんさんが絵本「てぶくろ」を読んでくれた時間、こどもたちが座っていた長い木の台を『橋』に見立て、とおるとわたしと「じゃんけんゲーム」と名付けたあそびを10回以上繰り返していたけんたが、唐突に言った。
「かいさんがいまかわにいるとおもうよ。」
とおるがその声に答える。
「おれはハンモックしたい、ひかちゃんいこうよ。」
と一言添えて。
「…ぼくも、このひとといきたい。」
小さな声でけんたもわたしを誘ってくれる。
(さて、どうしようか・・・。)
「わたし川行ったことないから、川に行きたいな。どうやって行くのか知ってる人いる?」
わたしもわたしで自分の気持ちを素直に話してみた。
するとさっきまでハンモックしたいと言っていたとおるが「しってるよ!こっちだよ!!」と先頭に立ち、案内してくれるという。
そこで私たちは3人は、川へ行くことにした。
高い木に囲まれ、道無き道を行く森の中に一歩入ると、そこはまるで別世界だ。
「もりに、はいりまーす!」とけんたが言う。
「もりに、はいりまーす!!」ととおるも言う。
ふたりともしんさんの「てぶくろのお話にも出てきたけれど、森にはクマがいるからね、森に入ったら『森に入ります』って言うんだよ。そうするとクマも人間が来たんだな、木の実は向こうで探そうって思うから。」という言葉を覚えていたみたい。
一足遅れてわたしも「森に、入りまーす!」と言い、彼らのあとについて行く。
「ざくざくしたおとでもきづくんじゃない?」と、けんたが振り返る。
「そうかもしれないね。」と、わたし。
ざくざく、ざくざく。
話をしないと、ざくざくと落ち葉を踏みしめる足音だけが響く。
「ぼく、かわいくの、はじめてなんだ。」
落ち葉の音で消されそうなほど小さな声で、けんたが言った。
(そっか、だから「ぼくもこのひとといきたい。」と言った時、少し不安げだったのか。)
「わたしもはじめてなんだ、一緒だね。」
そう答えると、「ちょっとこわいね。」と、けんたが手を繋いでくれた。
お互い手袋をした手。
ごわごわしていて、ぎゅっと握ったって相手の手のぬくもりを感じることはできないけれど、でもそれでもなんだかちょっと心強い。
「ひかちゃんー、はやくー!!」
ずっと先の方から、姿が見えなくなったとおるの声が聞こえる。
いつの間にか道幅も狭くなり、水の流れる音も聞こえてきた。
「ちょっとまってー!」大きな声でとおるに言い、「いそごう、みちがわからなっちゃう。」とわたしの手を強く引いて、前に進んでいくけんたの足取りは、さっきよりも軽やかだ。
とおるは少し先で待っていてくれた。
「ほら、かいさんたちのこえがきこえるよ!」
先に川に行っていたかいさんたちに合流する。
とおるとけんた、ふたりの顔はホッとしたような、でもちょっと自信げなそんな表情をしていた。
***
「かわ、いきたい。」
不安な気持ちもあるけれど、それよりも好奇心を掻き立てられる大自然。
「もりに、はいりまーす!」
森の怖さと仲良くなる秘訣を教えてくれた、てぶくろのストーリーとしんさんの一言。
「ちょっとこわいね。」
はじめてを共有できたことで、教えてくれた気持ち。握ってくれた手。
「ほら、かいさんたちのこえがきこえるよ!」
仲間がいることの安心感。
今回ここで綴ったのは、とおる、けんた、わたしが川にあそびに行くという5分にも満たない何気ない出来事だ。
でもこうやって心に深く残っているのはこの日、“自分以外の存在”との関わりで、今というかけがえのない一瞬一瞬の連続が、点となり、線となって、時と感情が豊かに繋がっていくことを感じたからだと思う。
人はひとりでは生きていけない、とよく言うが本当にその通りだ。
良くも悪くも「私たちは互いに関係しあって生きている」のだ。
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